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『それだけなんだけど』

作者: 粥ころ

魚組。肉組の名前だけ出てくる。

ばたばたと忙しい。

目の前では僕のもとで一生懸命お金と地位のために働く部下。上にたつにつれ段々と醜さが増していく。そんなところも含めて人間らしい。実に綺麗だ。ふふ、と一人気持ち悪い笑みを浮かべているとプルルルルとけたたましく耳障りに事務用の電話の音がなった。一人がびくり、と肩を震わせながらその電話をとる。「はい、はい…」等と相づちを打っているところをぼうっと見ていると僕の方を向き、「ご友人からです。」と受話器を持ってきた。誰だろうか。友人と呼べるものも少なくなってきた。僕がこの地位についてからだろうか。皆口を揃えて「考えについていけない」。君達の意見は充分に尊重しているはずなんだけどなぁ。一人苦笑を浮かべていると、申し訳なさそうにそいつは「あの…なんでも、魚肉?と言えば伝わる、だそうで…」と告げた。

魚肉。懐かしい響きだ。

しかしなんでまた…そこまで頭を悩ませてふと今日の日付を思い出す。あぁ、そうだった。

『ろろろ?私。』

受話器越しの懐かしい声にぶわ、と胸に何かが広がった。これはなんだろうか。満足感?優越感?充実感?名前をつけるにはどれも近いようで遠い。しかし自分の想像していた声の主とは違った。意外にもそいつは自分のほうから縁を切った、

「…やぁ、カロちゃん。」

『きっもちわるい喋り方だなー相変わらず。』

昔と変わらない態度で接する。こいつと話してる時だけは幼い頃に戻れた。

「失礼だなぁ。これが僕さ。…で、用はなんだい?まぁ予想はつくけどね。」

『わかっちゃうー?さっすがろろろさぁーん。』

おちゃらけた態度でけたけた笑う。相手もそれに答えるように笑みを溢しているようだ。

『お誕生日おめでと。ばーか。藻歩と笹太も会いたがってたよ。あんた今どこいんのよ。』

お祝いの言葉を述べられたと思うとすぐに別のメンバーの名前がでてくる。電話のときくらい忘れたらいいのに。ふふ、と笑いながら「内緒」とだけ返すと『ケチだなぁーー』と返ってきた。

『まぁいいや。元気?ちゃんと栄養とってる?』

「僕は君みたいに不健康でも不健全でもないからね。しっかりやってるさ。」

『うっわーほんと失礼だなお前。まぁそれならいいや。じゃねー』

「っとと、もう切るのかい?楽しい話の一つや二つもってきてくれたのかと思ってたんだけど」

『ふっは、ねぇよ期待しすぎ』

こんな調子で他愛もない会話が続く。自分も仕事だし流石にそろそろ切るか、といったところで突然『ろろろってさぁ、私が来てって言ったら来てくれる?』と聞かれた。答えにくい質問だ。こいつは別に"好きな人間"なんだがそういう感情は持ち合わせていない。自分の都合でしか動かない僕には頭を悩ませる質問だった。

「…まぁできるけとはするさ」

曖昧に濁すと『そう』と短く返される。なんだ、そっちから聞いてきたくせに素っ気ない。まぁこいつなりの返事なんだろうけど。

『んじゃいい夜を…っていったってもう22日も終わるけど。まぁ元気でな。』

「うん、そちらこそ」

ガチャリ、と乱暴に音がしてツーッツーッと無機質な音が流れる。こちらもピッと通話ボタンをおし先程から隣にいた女性に「これ戻しておいてと」と伝え受話器を渡した。

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