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魔王の為なら働ける!  作者: ちょせ
3/16

3話 vs武神 柊 麻由美

アスカの血を見た瞬間、俺の中で何かがキレた。

頭の中になにか、もやがかかったように感じる


「柊ィ!!」


自分でも驚くほどの怒り

俺はそんなにアスカが好きだったのかと改めて思う



「ああ?何を許さないんだ?あーぁ、あのクソ魔族か?ははは」


柊は俺を投げ捨てると、アスカの方へと歩いていく。


「先にクソ魔族殺してやる方が楽しそうだなぁ西郷ぉー。アイツ殺したらアタシがお前飼ってやろうか?手足はもいじゃうけどなぁハハハハハハっ」


狂気。

そんな言葉がふさわしい柊の雰囲気


「もうやめろ柊!」


見かねた上山が叫んだ



「上山ぁ、テメーも逆らうのかよ」

柊は上山の方を見ると


ズシン。

柊の震脚

まるで波紋が広がるように、床の大理石が割れて上山を吹き飛ばす。

上山は転げてうめき声をあげた


くそがっ!

俺は立ち上がり



スキルを使った




バキ、ガキン、ガガガッ




音と共に床に埋め込まれた大理石が浮き上がる


「柊、お前はゆるさん」


俺がそう言うと浮かんだ大理石が一斉に柊に打ち込まれる


がごガガガガガガッ


ばらばらになった大理石が、まるでマシンガンのように降り注ぐ

俺の「石を飛ばす」スキルは成長していた。

視界に入る、石、鉱物を飛ばすことができるほどに


「トドメだ」


庭にあった巨大な岩が、大理石の下敷きになった柊に飛んでゆく


「ふざけるなあッ西郷ぉ!」


バガンと積み重なった大理石が吹き飛び、血まみれの柊が立ち上がる。

そのまま飛んでくる巨大な岩に一撃


ざぁ


と岩が砂に変わる


流石に武神だ一筋縄ではいかないか



「西郷ぉ、こんなんで私が倒せるとでもー」


「ああ、思っちゃいねーよ」


そこですかさず、もう一つのスキルを使う。


バクッ


柊の足元に巨大な落とし穴が開く


そのまま柊は落ちていく、穴のそこが見えないほどの深さの落とし穴だ


だが、それでも柊は撃退できない


ドガッ!バカン、バカン


音がしている、見ると柊が落とし穴の壁を蹴って上がってくるじゃないか。


「は、どんだけ化物なんだよ」


だがこれも、想定内だ

そして・・・


「だけど終わりだ。」


最後にもう一度、スキルを使う


俺の石を飛ばすスキルは、成長している

思いも寄らぬ方向へ成長を遂げている

だから


「ギャアアアアアアアアアアアアアアッ」


柊の悲鳴があがる。


俺は地中の石、鉱物をまとめ形状変化

三角錐にして柊に打ち込む

同時にワイヤーのようにひも状にして、柊の体を貫き柊を落とし穴の真ん中で宙吊りにした


これが俺のスキルの進化系

土を、岩を、鉱物を操り、その形状を思うがままにする。


「アアアアアアアアアアアアアアアアアッ」


なんとも言えない悲鳴が落とし穴に木霊する。

シン・・・と静かになった。


「やった・・・・か」


柊には超回復があるが、体中に鉱物の三角錐、ワイヤーが入りまくっている状態ではうまく回復ができないハズだ。


見ると、柊の体は穴だらけになり、そして水道の蛇口をひねったように血が流れ落ちていた。

柊は気を失ってだらんとしている。



「すごいな西郷あの武神柊を倒すなんて」


「これくらいで負けてられるかよ」


俺たちは顔を見合わせ、

ガシッと俺と山下は腕を組んだ。

力が抜ける、緊張と共に




アスカの傷は浅かった。

見ているそばから回復しているようだった。

俺は応急処置を受けている。


そして俺は落とし穴の地中から柊を引っ張りあげてその首にかけられたネックレスをはずす。

クリスタルだ。きらきらと透明で白く輝く


柊の体からワイヤーや三角錐を取り除いてやると、ぐじゅぐじゅと穴がふさがってゆく。

超回復か。普通に戦えば恐らく勝てないなぁ。他の奴らも似たようなスキルがあるはずだ

良い勉強になったな



「ん?」


俺の石を投げるスキルで柊の体内に何か鉱物があるのを感じ取る。


「何かあるぞ」


スキルを使う。

柊の中にある鉱物それを打ち出す。

柊の腹部のあたりから、ブシュと音をたてて肉をつきやぶり、

四角い、真っ黒な石が出てきた。


それは禍々しい気配を放っている


キラキラと怪しく黒く輝いているそれを見て上山は、


「チッ!」


上山が舌打ちをする


「これが何かわかるのか?」

「ああ、分かる。というより分かった」


そうかスキルか。見ただけでその価値がわかる。


「これはな、本人の意思を捻じ曲げて暴走させる。そんな物だ」


「柊は誰かに操られていたということか?」


アスカが俺の治療をしてくれている、治療を受けながら上山と話す。


「ああ、間違いないだろう。半年ほど前の柊はこんな性格じゃなかったしな」


「まあ、さすがにしばらくあってなかった俺でもさっきの柊が異常だったのは良く分かる」


あんなにキレやすく、俺を簡単に殺そうとした柊。

以前の柊とは違いすぎるからな。


「あの、さっきの石なんですが・・・・」

起き上がったアスカが石をみてつぶやく


「何か知ってるのか?」

アスカのセリフに上山が食いつく


「はい、あれは魔族、それも権力者レベルの魔族が所持している、いわゆる魔石です」


「なるほど、聞いたことがある。だがそれは魔族でないと扱えない物だったはずだ」


「そうです、人間が使うにはあれは毒が強すぎます。魔族が使えば、単に体の中の魔力を増大させることができますが・・・」


「人間が使うと、さっき俺が言ったようなことができる石だっていうことだな。」

「はい。魔力に神経を侵され、正常な判断ができなくなるんです・・」


「なるほどな。とりあえず、柊は縛っておこう。超回復があるからしばらくしたら復活するはずだからな。石を取り出したとはいえ、さっきみたいなことになったら厄介だ。」


「ああ、そうだな。」

俺は同意する


それからしばらくして柊が目を覚ました。


「よう柊、クリスタルはもらったぞ」


俺がそういうと柊は


「ん?あれぇ、西郷君じゃん!久しぶりだねー」

あっけらかんと笑う。

そして俺の横に上山を見つけると今度は、


「お、上山くーん元気ー?」


なんかスゲェ軽いノリになったな

昔のままの柊がそこにいた



ひとまず大丈夫だろうということになり柊の拘束を解く

部屋は俺のスキルで片付けておいた


ぼろぼろになったソファに座りなおし使用人さんが持ってきたお茶を飲みながら話す。

柊はどうやら半年くらい前から記憶がないようだった


「柊、何があったか覚えているか?」

「うーん・・・自分にとっては、つい昨日のことなんだけどね。領主会議でさ、王都にいったんだよね。」


「ああ、半年前だな」

上山が言った


俺とアスカはお茶をいただきながら話を聞く


「そんでそのとき魔族の襲撃にあっちゃって、スゲェ強い魔族だったんだ。でもなんとか撃退できたんだけど、私そのとき下半身ふっとばされちゃったんだよね」


そして衝撃的な一言が出る


「たぶん天堂にやられちゃったんだとおもう。後ろからだった。」


「天堂に?」


「うん、間違いはないとおもうよ。あのスキルは何度か見ているから。」


あの武神モードの柊を一撃で?やはり勇者はヤバイか。


「さすがに気絶しちゃってさ、そこで記憶はおしまい。気づいたら西郷君と上山君がいたって感じ。」


「なるほどなぁ・・・」


「あ、西郷君、横のキレーな人だれ?w」


なんかすげえニタニタ笑ってる。

俺は正直に


「俺の婚約者だよ。正確には婚約者候補だけどな。」


ひゃっはーと叫ぶ柊。

「うっひょー。やべぇ、西郷君かっけーっす。」


「そういや柊、お前西郷のこと好きだったのか?」

上山が言う。そういやさっき、俺ぶんなぐりながら柊がそんなこと言ってたな。


「え」

柊はぶわっと汗を噴出し、だらだらと汗がしたたり落ちる。

顔は真っ赤だ


「そ、それ誰に聞いたの?」


「「柊」」

俺と上山がハモる。


「ギャーーーーーーーーーーー。信じらんねーーーーーー記憶ない間に何やってんだ私!!」


いや何って


「えーっと、西郷と俺と、アスカを殺しかけてた。」


「え、マジ?」


「「マジ」」

俺と上山がハモった・・・・・・


一通り色んな土下座を見ました。柊の。


「やー、あんな土下座あったんだな・・・・」


「ほん、とーにごめんなさい。」

「いやもういいって、起きてよ柊。」

「特に西郷様、そして奥様!!お許しください!!しかも告っちゃったりしてごめんなさい!」

土下座したまま柊は言った


「あ、あの、大丈夫ですから。まだ奥様じゃないですし。」


あう。まだですしね。

「そうそう、大丈夫だって。俺もお前をぼろぼろにしちゃったしな。」

ま、水に流そうじゃないか

むくり、と柊が起き上がると。ニコリと笑い


「ありがとう!西郷。でもぼろぼろにされちゃった私はお嫁にいけないからさー。」


「ん?」


「第二婦人でも愛人でもいいから、もらってやってくんないかなぁ?」


なんかもう、武神:柊のイメージがガラガラと崩れ去っていった。



その夜は、久々に、上山と柊、俺とアスカで一晩中くだらない思い出話とかで盛り上がった

一度、捨てた同級生、友達だった。

でもこれもアスカ、君がきてくれなかったら、こんな楽しい時間はもう来なかったはずだよ。

そう思う



翌朝、朝食を食べながら会議をする。

4人だけの会議。


「とりあえず、マーストの町は占領できたとして、次はどこにいく?」

「ああ、確か西にいくと街があったはずだ、何度か行った、西王都。」


山下の問いに俺が答える。

それに柊が


「んー西王都は後回しにしたほうが良いよ。あそこ確か、灰原のやつが守ってたから。」


もぐもぐと柊がサラダを食べながら話し続ける。


「おススメは東の港とその北にある魔族領デス!」


「それはなんでさ」

俺は聞く。でももぐもぐしながら話さない!やめなさい柊!


「東の港の守護者は、山根姉さん。姉さんなら事情を話せば力になってくれるはずだよ。そしてその北の魔族領は、あんまり良い土地じゃないって理由で魔王軍からも見捨てられていた町だよ。だからそこに戦力はないし」


なるほどなぁ

ひとまず東の都、山根姉さんとはラッキーだったかもな


戦力がない魔族領か。確かにそれだけでこの南の領土の三分の一は占領できるか


「まぁとりあえず、西郷君は傷を癒しなよ。けっこー大怪我だよそれ。」

もぐもぐしながら柊が言った

フォークで指さすな!

それにこの怪我お前がやったんだけどな!


「ああ、だけど時間がないんだ。なんか回復する良い手段を知らないか?」


「そうだねー私がキスしたら治るよ!」

ズバン!と上山が柊を、トレイで殴った。


「ぎゃーーーーー!暴力反対ーー!」

「あのなぁ、西郷は婚約者がいるんだ。そんなことできるわけねー、ていうかキスで治るんなら俺も治せ!」

「いやだねー!上山なんてそこらへんのナメクジとでもキスしてりゃいいんだよ!」

「なんだとこの野郎・・・!」

「野郎とは何だ野郎とは!これでも女の子なんだぞ!ちょっと強いだけの!」

「ちょっと強いだけの女の子なんて床割ったりできねーんだよ!このメスゴリラがっ!」

「調子のんなよ上山ぁ!」

ガスっ

一瞬で移動した武神のボディブローが炸裂する


ふわりっ・・・・


上山が飛んだ


どさり


落ちた



「がっは、、、このバカ力め・・・」

上山が腹部を抑えてもだえる。

「ハン!無重力体験は出来たかよ!お礼言えよな!」





「ふふふふふふ」

アスカが笑った。


「お、アスカちゃん笑ったね!やっぱアスカちゃん可愛いよ!綺麗だし!」


「柊さんありがとうございます。みなさん仲良くてうらやましいです。」


よろよろと立ち上がった上山は

「こ、これからは俺たちも仲間です。俺も柊も・・・西郷の力に、アスカさんの力になりたいと思っています」


良いこと言ったな、上山。だけど後ろに武神が立ってるから・・・危ないよ・・・


「アスカちゃん、上山調子乗ってるみたいだから、ちょっとしつけてくるね。あ、西郷君私も協力するからね。」

なんか上山がずるずると引きずられていく。


「世界征服!がんばろうね!」


そういい残して、柊はドアから出て行った、


上山を引きずって・・・・



「あれ?世界征服?」


なんだそれ?言ったっけ?


「ふふふ。部下ゲットです」


そしてアスカの目がキラリと輝いたのを見逃さなかった。







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