11話 魔王城
ガサガサと草木をかき分けながら進む。
ザシュ
アリスに借りた剣で、邪魔になる草木は刈り取り、道を作る。
「えーっと、少し左ですね。」
ザシュ、ザシュ、
「あとは真っ直ぐみたいです。」
ザシュ、ザシュ、ザシュ
「なんかさ」
「どうしました、西郷さん」
「水田って、明るくなったよな。強くなったって言うか。」
実際、今も山根と離れて行動している。
昔、まだ学校に通っていた時から2人はずっと行動を共にしていたはずだ。
朝登校する時も一緒なら、帰宅時も一緒。山根が学校を休めば水田も休む。
噂では転校の話が山根にあったとき、水田も転校すると騒いでいた事があったらしい。
そんな、山根大好きな、依存か?の、水田が今ここに来て別行動を取っている。
あの魔女アリスの、水田だけ同行発言にはみんな反対をした。
危険だからだ。
だけど、当の水田本人が、
「私、行きます。行かなくちゃいけないんです。私が。」
と、言い切った。
もちろん、魔女アリスが
「大丈夫だよ、敵対するようなモンスターや人はいないから。」
なんて、フォローをするものだから、じゃあ仕方ないですね。となった訳だ。
「そうですねー、強くならなきゃって思って。」
「それだけで強くなれるんだから、凄いよ本当。」
「まあ、そんなんじゃないんですけどね。あ、もうすぐつきますよ。」
水田の案内通り進んで約10時間。
予想よりかなり早く目的地についた。
俺達の眼前には、立派だったであろう巨大な城があった。
城は所々で崩れ、また焼け焦げたた後もある。
だが、素晴らしく綺麗だ。
かつて誇ったその威厳はまだ朽ちてはいない。
崩れかけの城門をくぐり、中庭に入る。
そのまま中庭を抜け、城内へと進んだ。
ふわりと鼻腔をくすぐる風
「なんかいい匂いするなあ、、」
食べ物の匂い。
「そうですね、、」
ゴクリと出た唾を飲み込む。
「誰か居るみたいだな。」
「敵ではないのでしょうけど、、」
廊下を進み、恐らくは王座がある広間へとでる。
そこには真四角な木製のテーブル、椅子が4つ。
そのテーブルの上には、お茶碗に白米、そしてお味噌汁、あと熱そうなお茶。
「完全に日本食じゃねーか。」
ゴクリと、幾度目かわからない喉を鳴らした。
「やあ、いらっしゃい西郷くん。久しぶりだね、水田さん。」
にこやかに笑う少女がこちらに歩いてくる。
その手には焼かれた秋刀魚。大根おろし付きだ。
「君たち、しばらく日本食を食べてないだろ?」
大人びたしゃべり方をする少女は、割烹着を着てまるで昭和のおかあさん、いや、定食屋のおかみさんの様ないでたちだ。
「あの、どなたですか?」
水田言葉が理解し難いのか、少女はぎょっと目を剥く。
そして一呼吸おくと、
「あ、あー!」
ぽん、と手を叩きわかった!とばかりに笑い、、
「私だよ、田中だ。君たちの担任だよ。」
にこりと笑う。
「「は?」」
水田と声がハモった。
「いやいやいや、先生は男でしょ?君は女、しかも子供じゃないか!」
「そ、そうですよ!」
水田がそうだとばかりに叫ぶ
すると自称、田中先生は困った顔をして、
「あー、これはね、私のスキルの副作用、みたいなものなんだよ。だからまあ、気にしないでくれたまえよ。」
「それにね、君たちお腹空いてるだろ?まずはご飯を食べてからにしようじゃないか。もう少ししたら、杉下くんも帰ってくる。」
「杉下?杉下雄二ですか?」
「そうだよ、彼はこの城の守護者だからね。」
「え、えー?」
また謎が増えた、、
先生は少女だし、杉下は守護者だと言う。
まず、何故2人はこの城にいたのか?いつからいたのか?
それに第一、、
「俺達が来るのを知ってたんですか?」
「ああ、そうだよ。いらっしゃい二人共。」
しばらくすると杉下が帰ってきた。
「お、久しぶりだな西郷に水田さん。ほんとに来たんだな。」
久しぶりにみた杉下はかつてこの世界に来た時よりもずいぶんと大人になっていた。
「まあ、メシ食いながら話そうぜ。」
そう言うと杉下は椅子に座り、いただきますと食べ始めた。
「じゃ、じゃあ俺達も食べるか。」
「は、はい。」
いただきます。と、箸をつける。
「あ、あれ?これ、、うまいな。」
久しぶりの、、本物の日本食だった
「ほんとうに、、本物にしか思えない味です!」
「あはは、そうだろ?そりゃ、日本直輸入品だからな。本物に間違いないさ。」
杉下はズズズ、と味噌汁を飲み、
「まあ、それは些細な事さ。詳しくは先生に聞くといい。」
「そうだね、私のことを信じてもらう為にも、用意した正真正銘の日本食だからね。よく味わって食べたまえ。」
「はあ。」
確かにうまい。いや、懐かしい。
料理人スキルのある山根が作る日本食は、確かに日本食と呼べるものではあるが、その食材はこの世界の物を使っている。
ゆえに、この白米や味噌汁の具、秋刀魚の様にかつて食べていた食材ではない。
「私のスキルはね、鑑定だったのさ。もう一つ、探求と言うスキルも覚えた。」
先生が、話し始めた
「もともとこの世界に来た際に得ていたスキルは鑑定。そして、スキルを鑑定した際に、探求スキルを得たのさ。」
懐かしそうに、話す。
「探求と言うスキルはね、鑑定でスキルを調べたがゆえに産まれた。で、その探求すら私は鑑定したのさ。だが、探求と言うスキルは知的好奇心の塊でね。探求と言ったスキルは、私自身となって知識の収集、また、未知への収集を始めたのだよ。」
「先生、意味わかんねーよそれじゃ。」
杉下が言った。
「まあ、先生のスキルはわかりやすく言うと、スキルと言うシステムを解明し、さらに言えばこの世界そのものを解明しようとしたのさ。」
「ま、そうだね。この姿になった経緯の説明は難しいが、ある程度までスキルと言う物を解明したんだよ。」
「でだ、先生に聞いてるぜ。単刀直入に言わせてもらう。西郷、お前本当に勇者のスキルを持ってるのか?」
「は?」
何故、その事を知っている?
「私が言ったのです。君が勇者のスキルを引き継いだと」
「引き継いだ?」
「ええ、勇者のスキルは前の持主が死亡、または廃棄された場合、ふさわしい者に付与されます」
「なんでそんな事、先生は知ってるんだ?」
「そうですね、話しましょうか。信じられないかもしれませんが。私はこの世界、いや、わかりやすく言います。ゲームで言う所の、二周目、三周目なんですよ。今のこの私は。」
にこりと、微笑む。
まるで、待っていたと、会いたかったという笑顔。
「二周目、三周目、、言葉通りの意味なら、先生はこの先の全てを知っているのか?」
「一応…です。確か、西郷くんと水田さんは、王冠を取りに来たんでしょう?そして魔王アリサの覚醒を助けるために。」
「その通りだ…当たってる」
「知り得た事は君に伝えておきますから、臨機応変に対処して下さい」
「臨機応変ね…」
勇者のスキルのこと。
そして、魔王覚醒のこと。
先生は全てを知っているのだろうか?
「先生はね、この次の世界できっと・・・最後までいけると思っているんです。」
次の世界?
「スキルとかの・・解明ですか?」
「ええ、いや、いいえ、そうですね、全てをです。なにもかもひっくるめて、みんなハッピーエンドで終わらせたいんですよ。」
田中少女 先生 スキル 鑑定 探求 終わりのない知を求めている 趣味 料理
杉下雄二 少女先生の守護者 スキル 「???」