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おまけ 令嬢その1

 行きたい。――でも、どこに?


【……あら?】


 ふと頭に思い浮かんだ疑問に、わたくしはその時初めて、自分が行きたい場所や待っている人の事はおろか、自分の名前すら忘れている事に気付きました。


【あら……あらあら? ……ええと……わたくしは確か……とても行きたい場所があったはず……で】


 とはいえ、完全に、何もかも忘れてしまっている訳ではないようです。

 ぼんやりと薄もやがかかったようなわたくしの脳裏には、あやふやですがどこか懐かしい、断片的な人間達の光景が点在していました。


【……そしてそこには……確か……待っている方がいらして……待っている方?】


 理屈ではなく、なんとなくですが『判ります』。

 あれはかつて人間だったわたくしの記憶で、わたくしがかつて存在した光景で……わたくしが関わった方々。


【……あの人のもとに……行きたい】


 そして、その光景を認識した途端、わたくしの胸を疼かせるような、切ない感情が湧き上がってきました。

 ……あの人。

 あの……人?


【あの人……それともあの方? 一体どなたの事なのかしら? ……お父様かお母様? ……それともお兄様やお姉様……かわいい弟妹……仲良しのお友達? ……それとも……もしかして、婚約者や恋人という可能性も……あ、あるのかしら……?】


 ――婚約者や、恋人。


【……っ】


 自分の傍らに寄り添う殿方を想像した途端、更に羞恥と喜びが溢れてきます。


【……あ】


 そして同時に、わたくしの傍らに感じていた愛おしい温もりを、指先が思い出します。


【……わたくしの指は……かつて……誰かに触れていた?】


 ……もしかしたら、本当に?


【……わたくしには……想い人が……いた?】


 だとしたら……その殿方は、どんな方なのかしら?

 素敵な方かしら? 

 優しい方かしら?

 親兄弟が喜んでくれるような、立派な方かしら?

 

【そうだったのなら嬉しいけれど……そうでなくても、知りたいわ。……わたくしに、想いを捧げた方がいらっしゃったのならば……わたくしは、その方の事を思い出したい】


 そしてできるならば、その方のもとへと行きたい。……逢いたい。

 ……それは、『この身』になってからわたくしが初めて感じた、強い感情でした。


【…………だめね。……思い出せないわ……】


 昼も夜もなく、気が向いた場所をフラフラと彷徨うわたくしの中で、飢えや苦痛、恐怖はおろか、怒りや悲しみ、喜びや楽しみといった感情までが消え()()()しまってから、どれほどの月日がたったのでしょう。


【……それでも……思い出せなくても……わたくしはあの方の存在を、この身に感じる】


 そんな月日が嘘のように、今のわたくしの中には、確固たる想いと望み、そしてその願いが叶わない苦しみが蘇っていました。


【……逢いたい。……あの方のもとに行きたい。……どうすれば……どうすればこの望みは叶うのでしょう……】


 このまま何も判らなければ、わたくしは叶わぬ願いを抱えたまま、ずっと苦しみ続けるのでしょうか。

 ……いいえそれも、薄れた心のまま茫洋と過ごしていた、今までの日々と比べれば幸せかもしれません。 


【……おやおや、これはお珍しい事だ、森の御令嬢。いつもおっとりと微笑んでいなさる貴女様が、懊悩しておられるとは】

【……あら?】


 そんな事を考えていたわたくしの背に、楽しげな声がかけられました


【……まぁ、これは森の御老。お休みでしたの? お騒がせしてしまい、申し訳ございません】

【いやいや、ちょいと木の上でぼんやりしておりましてな。立ち聞きのような真似をしてしまったご無礼は、お詫びいたしますぞ御令嬢】


 そう言ってフワリと木の上から降りて来たのは、こざっぱりとした長衣を身につけた、小柄で穏和そうな御老人でした。

 森の御老、とわたくしがお呼びしているその方は、わたくしのような、それでいてわたくしよりもずっと強い気配をお持ちの方です。おそらくは、とても長くこの世に在られる御方なのでしょう。


【なれど御令嬢、この爺、お悩みのお力には、なれるやもしれませぬぞ】

【……力に、でございますか森の御老? ……御老はもしや、わたくしの過去について、何かご存じなのですか?】

【いやいや、御令嬢がこの森においでになるまで、この爺は御令嬢の事は存じ上げませなんだ。残念ながら爺が知っておるのは、今の貴女様のみ】


 ならばどういうことでしょう? と、小首を傾げてみせると、御老は穏和な顔の皺を深めて微笑み、言葉を続けます。


【――正眼の巫女。この女人を、御令嬢はご存じか?】

【正眼の……巫女?】

 

 考えてみましたが、私が『この身』になってから得た知識の中にも、その名はありません。


【寡聞にして存じませんわ、御老】

【ふむ、さようか】

【一体どのような御方なのでしょう? 巫女という事は、どこかの神にお仕えする乙女でしょうか?】

【いやいや、そういう訳ではないようです。正眼の巫女と言うのは、この爺の耳に時折聞こえてくる、人間達の噂話が生み出した、あだ名のようなものでしてな】

【……あだ名?】

【さよう。……噂によると、人の身でありながら、面白い力を持つ娘がいるのですよ、御令嬢】


 ……面白い力? 


【なんでもその娘は、迷っている人間を見抜き、その人間が行きたい場所、逢いたい者の元へと、正しく案内する力を持っているらしいのです】


 ……っ!


【……まぁ、それは……本当の力なのでしょうか?】

【ほっほっほ。確かに人間の魔法には、偽物(インチキ)も多い。彼女が本物かどうか知りたければ、御令嬢自身が確かめてみる他ないでしょうな】

【……確かめる、ですか? ……っ。もしや、それは御老……】


 気付いたわたくしに、森の御老は楽しそうに頷き、手にした杖を掲げて示します。


【この方向をずっと行った先。森がやや開けた、人間達が休憩するには丁度良い河岸で、正眼の巫女とその道連れ達の三人が食事を摂っていると、河で遊んでいた水魔達が教えてくれました】

【あら、あのイタズラ者達に見つかるなんて、巫女様達は大丈夫だったでしょうか?】


 人間を水中に引きずり込んで遊ぶのが大好きな魔物達を思い出したわたくしに、御老は更に楽しそうに笑われました。


【ちょっかいをかけようとした者達は、まとめて巫女様の道連れに、水の中に叩き返されたそうですな。何故かタワシで】

【タワシで?】


 わたくしが人の世から離れていたうちに、タワシは武器へと進化したのでしょうか?

 いいえ、大切なのはそこではありませんね。


【不思議な武術もあったもんですな~】

【そのようですわね。……それでは御老、わたくしはこれで、失礼させていただきますわ】

【はいはい。気を付けていかれよ御令嬢。……願わくば、貴女のその憂いが拭い去られます事を】

【お気遣いに、感謝申し上げます】


 優しくおっしゃる御老に同意しつつも一礼し、わたくしは正眼の巫女と呼ばれる娘の元へと向かったのです。


【……迷っている人間を見抜き、その人間が行きたい場所、逢いたい者の元へと正しく案内する力……】


 ……正眼の巫女。

 彼女が本物ならば……なんとかして、わたくしの望みも叶えていただけないだろうか。



「――ひぃいやぁああ!! 勇者さんっ!! 直美お姉さんっ!! ちょっと私はそれ無理っ!! 近づけんといてぇええええ!!」

「なんだ、フワは兎も捌けないのか?」

「不破さん、鳥の羽だったら毟れる? はい一匹」

「ひぃいいーっ!! 動物虐待反対ーっ!! 首斬られて血抜きされてる鳥とかグログロやーっ!! スプラッタやーっ!! 勘弁してぇーっ!!」

【……】


 ――それらしい一行が見つかるでしょうか? というわたくしの僅かな心配は、河岸に響き渡る女の子の甲高い悲鳴によって無用のものとなりました。


【……やれやれ、フワは料理の下ごしらえも、火起こしもできないのか? その年でそれでは、他人事ながら、嫁のもらい手があるのか心配になってくるぞ】

「大きなお世話やぁっ!!」


 少し森が開けた場所にある河岸では、三人の男女が石で造った薪を囲み、料理をしていました。……あら、背の高い殿方が捌いている兎、丸々太っていておいしそう。


「っちゅーか私の世界では、そんなんキャンプでかて、やったことないのが普通やねんっ。 肉は最初から肉として店で売っとるし、火はマッチかライターで点けるんやっ」


 一方、その肉から怖々と距離を取っているのは、少々目元がきつめながら、華美な雰囲気の若く美しい娘でした。……うっ、胸も大きい。

 フワと呼ばれていた、あのいかにも殿方の興味を惹きそうな彼女が、正眼の巫女でしょうか?

 ……巫女というよりもっと俗っぽい、歌姫や踊り子などの方が似合っていそうな外見ですけれど。

 ……ひ、僻みではありませんわ。客観的に見てです。


「だが、娘さんはできるぞ?」

「そ・れ・なっ!! 直美お姉さんはなんで、木屑からの火起こしや獣捌きまでできるん?!! どこで身につけたんそのサバイバル能力?!!」

「ワンゲルサークルで」


 ……いいえ、もう一人若い娘はいました。

娘さん、もしくはナオミお姉さんと呼ばれていたのは、フワとは対照的な、穏和な顔立ちの大人しそうな娘でした。……胸はほどほど?

 いえ、胸はさておき、こちらの方が、巫女らしい落ち着いた雰囲気はある気はしますね。

 ……わんげるさーくる? というものは判りませんけれど。修行場か何かでしょうか。


「ワンゲルってそんな事もやるん?!!」

「あはは、しないしない。ワンゲルサークルだってキャンプする時は普通、肉野菜は店で購入して、火もライターと固形燃料で起こすよ」

「せ、せやろ?」


 ただね、とナオミと呼ばれた娘は、手早く丸々太った合鴨の羽根を毟りつつ、のんびりと言葉を続けます。


「私の大学のワンゲルサークルって、創部以来そこそこ歴史があるせいかOGも沢山いて、その中には……そうね、意識高い系アウトドア派も何人かいたの」

「い、意識高い系?」

「要するに、『文明の利器に頼りっきりでは、真のアウトドアとは言えない!!』と主張する人達だね。それで、そういう人達がワンゲルのキャンプに参加した時、私達後輩も色んな意味でワイルドな、『真のアウトドア』実習をさせられたというわけ。あの時は本当に大変だったなぁ」

「……サークルもなんで断らんかったん?」

「……そのOG達って、サークルイベントに参加する時は、いつも少なくない額の寄付をサークルにしてくれる人達でねー……」

「ああ……世の中銭か」

「オカネダイジ」


 何かを察し合ったのか、娘二人は視線をかわし、小さくため息をつきました。


「でも意外な所で役に立ったし、実習をやった甲斐はあったかも。はい一匹終わり」

「うぉうっ! 見事な鳥肌肉っ!」 

「そちらの世界の事情は良く判らないが、娘さんの手際の良さは感心する。……娘さんならば、どこの村に嫁入りしても、すぐに馴染みそうだ」

「あはは、ありがとうございます? 勇者さん」

「……勇者さぁん、それって純粋に褒めとんの~? ……嫁入りとかぁ~、下心含んでへん~?」

「心配するなフワ。少なくともお前に対しては、一切全く絶対にそのようなものは含んでいない」

「それはそれでなんかむかつくなぁコラ?!!」

「まぁまぁ不破さん、未成年をきちんと対象外にする勇者さんは、紳士だと思うよ」

「お姉さんはそいつの事を、善意に取りすぎやと思うっ!!」

「そう?」


 殿方も加わって、中々楽しそうな三人の会話風景です。

 ……しかし、今のままではどちらの娘が巫女なのかわかりませんね。わたくしは隠れた木の陰から、彼らの様子を伺い続けます。


「そうそうっ、お姉さんはちょっとお人好しすぎやねんっ。――そんなんやから、この世界でも迷ってる人達に捕まって、あっちこっち案内させられるんやで?」


 ――っ!


「それは……そうかもね。ごめんね不破さん、寄り道しちゃって」

「い、いや、それはええねんっ。……私かて、お人好しのお姉さんに助けられたわけやし。……けどな、そういうお姉さんのお人好しにつけこむ悪党かて、おるかもしれんやろ? やっぱちょっと心配や」

「うーん……でも、迷ってない人が迷っていると嘘をついても、私には判るから。そこは騙されないと思うよ」

「へぇ……それもお姉さんの力?」

「力というか、力の副産物というか……要するに、本当に迷っている人に助けを求められると、頭痛がするからね」


 ……そんな力が? ……いえ、そんな力を持っているという事は。


【……彼女が、正眼の巫女】

「……」

「……ん?」


 やっぱり……本物なのでしょうか?

 だ……だとしたら、是非是非御力をお借りしたいっ。


「……何かがいるな、その木の陰」

「ほんまや!! 私にもなんか聞こえたっ!!」

「え、そうだった?」


 お、お礼は……森で見つけた稀少な鉱石で良いでしょうか?

 いえ、ま、まずそれよりも挨拶ですわよね。


「山賊……ではないようだが、様子を見よう。二人とも、ついて来てくれ」

「判りました」

「勇者さんから離れた途端後ろから襲撃とか、勘弁して欲しいしなぁ」


 こちらに害意が無いことを説明し、わたくしの事情を説明した上で報酬を提示し、巫女様にお願い申し上げる。

 基本は誠心誠意。これしかないでしょう。

 拝見したところ、巫女様は見た目通りの穏和な性格のようですし、正直にお願いするのが一番良い気がします。


「ところで勇者さん」

「なんだ娘さん?」

「今どうして、山賊ではないと思ったんですか?」

「ああ」


 最初が肝心ですね。笑顔、笑顔を浮かべなければ。

 ……どうしましょう、しばらく人に顔を向ける事がなかったので、表情の作り方も忘れています。

 こう、こうだったかしら? それとも……。


「――気配が、既に人のものではなかったからな」

「え……」

「げ……」


 あ……。


【そ、その……あの、ごきげんよう……】

「……」

「……」

「……」


 ……木の影を覗き込んできた三人は、微笑むわたくしに硬直してしまいました。


「ひぃいいオバケぇええええええええええ?!!」

「わわっ? は、半透明っ?! そ、それにっ!!」

「……」


 あれっ!! しかも怖がられてしまいましたっ!! だめですか?!

 更に背の高い殿方は、何故腰に下げたタワシを手にしているのでしょうか?!

 こ、こうなったらひたすら笑顔、笑顔ですっ。もっとがんばらなくてはっ。

せーのっ、ニッコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコニコ――


「しかも笑ったぁああああっ!! あいつ今ニッタァアアアアアアっ!! て嗤ったっ!! 獲物を見つけたって顔で凶悪に嗤ったでお姉さんっ!! 人喰い殺しそうな口裂けスマイルやーっ!!」

「え、えーと……」


 えええっ?! 誤解ですっ!! 今のはニッタァアアアではなくニッコニコニコですっ!!

何よりわたくしは人間など食べませんよ?! この姿になってから、食欲すら薄れてしまってますからっ!!


「直美お姉さんあれ絶対オバケやっ!! 幽霊やっ!! SFXやぁあああっ!!」

「不破さん落ち着いて。彼女がSFXなら、幽霊じゃないと思うよ?」

「怖いからもうそれでええわ!! 幽霊だと怖いからあれはSFXやっ!! あのオバケは画像処理でどうとでもなる特殊効果なんやーっ!!」

「良く判らんが、誤魔化しても現状は変わらんと思うぞフワ。……」

【……っ】


 ふいに、背の高い殿方の目が、私へと向きました。

 ……す、鋭い。怖い。


「……女、既に人の生からは、『外れた』者と見うける」

【っ……】

「何故我らを、そのように怖ろしげな姿で威嚇する?」

【いか……っ?!】

「返答によっては容赦しない。正直に答えてもらおう」


 ご、誤解です。お、怖ろしげな姿なんてっ、そんなつもりは……。


【……】


 ……つもりは……ありませんけれど。

 ……そういえばわたくし、鏡に自分の姿を最後に映してから、どれくらいの時が過ぎたでしょうか?


【……あの、その前に一つ、お伺いいたしたいのですが】

「なんだ?」

【その……わたくしは今、それほど怖ろしい姿をしているのでしょうか?】

「……」


 ちょっとそこの貴方、『何言ってんだコイツ』みたいな顔をしなくても、よろしいではありませんか。

 なまじ整ったお顔の殿方がそのような表情をなさいますと、向けられた側の痛手(ダメージ)は倍増いたしますのよっ。


「そこに河がある、その気になれば、映る事は可能だろう。見てみれば良い」

【は、はい。それでは失礼しまして……】

「ひぃいい!!!」

「ふ、不破さん落ち着こう?」


 すれ違おうとした途端、フワと呼ばれた娘が更に悲鳴を上げ、宥める娘を引っ張るようにして私から跳び下がりました。

 ……そ、そこまで怯えなくてもよろしいのでは?

 

【……】


 それは確かに、活々とした人間の乙女と比べれば、違和感はあるかもしれませんけど。

でもとりあえず、確かめてみましょう。――……水鏡に、わたくしはどう映るのかしら……?


【…………】

「…………」

「…………」

「…………」


 ――っ?!


「……ま、真正面からまともに見たで、あの姿を」

「じ、自分の姿だし、大丈夫……じゃない、かな?」


 ――ぃっ?! ――っ?!! ―――~~~~~っっっ?!!!!


「だが……なんだか震えているようだが――」

【きゃああああああっ?!!!】

「うわっ!!」

「うひゃっ!!」


 な――なにこれ?!!! ななにこれ誰これ?!!! ――まさかこれがわたくしですの?!!!


 気が付けば、わたくしは絶叫していました。

 ――だって水面には――見紛う事のないバケモノが映っていたのですっ!!!


 薄汚れた水で濡れた飼葉のようなボザボザ髪に、血の気の失せた灰色の肌。落ち窪んだ両眼が血走り、血の気が引いた唇は顔についた傷のせいで、大きく裂けているようです。

 ――そして何より、かつてはもっと美しい色彩だったのだろうわたくしが身につけているドレスは――灰汁色に色褪せ、赤黒い血でべっとりと穢れていて!!


【あっ……ああああ……ぁっ!!】


 その血は――わたくしの胸に深々とささったナイフから、今――も――……っ!!!


【っ……っっ……………っ……――】

「――あっ!! 幽霊さんっ!!」

「えぇ?!! あのオバケ、自分の顔見て気ぃ失ったでぇ?!!」

「うーん……壮絶な外見だったが……悪霊には見えんな。弱すぎる」


 どこか呑気な男女の会話を聞きながら、わたくしは気絶して水面に落ちました。


「おーい、衝撃で死んだか幽霊? いや、最初から死んでるか」

「あらら……河に流されていくで、あのオバケ……えーと、海まで流れ着くと、確か幽霊って成仏するんやったか?」

「それは多分、灯籠流しとか精霊流しとかの事だと思うよ不破さん。……でも、このまま放っておくのも、可哀想な気がするかな……頭痛もするし」

「……ん? 娘さん、それはつまり……」


 あー……遊び道具(わたくし)を見つけた、水魔が寄ってきます。やめてー……髪を引っ張らないで下さいませー……――。


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