New Age Beginning【番外編】 -The Before- 第一幕・11指令発動(1)
New Age Beginning・・・。その戦いが始まる前の話。社会の歯車に翻弄され侵食され、そして崩壊していった過程の物語・・。
20世紀が終焉に差し掛かり世界経済が破綻しかけた頃、議会である評議が可決された。それはなんとも異常で不可解な条約であった。その名は“11指令”。決定した法案は全世界を巻き込み歪んだ世界統一を成し遂げた。それは11年後を目標に各国の国家予算を分散して平和予算審議という名目で世界規模の事業を遂行する事、宇宙開拓推進への漸進資金と成す事である。各国政府は他国の現状報告と不正を防止する為「フォーメイションファイブ」と呼ばれる五人を選出して査察隊を組み諸外国に派遣した。日本からもまず一人の男が選ばれた。
「君を此処へ呼んだのも他でもない。表柄、査察隊として重要人物の護衛にエジプトに行っていただきたい。そして・・、君も知っているかとは思うが国際犯罪組織“/”(スラッシュ)の動向を探りその意図を粉砕して、破壊工作を封じ込めてほしい。君も知っての通り全ての国が利害関係無く手を結び共同事業を取り組んでいる。此処に来て奴らに妨害されたくは無いのだよ」
地下に建設された要塞といっても過言ではないスーパーコンピューターが立ち並ぶ施設に通され、その一室で上等そうな革の椅子に腰掛け、これまた上等そうなスーツを着た男が言った。
「この機関はなんだ?幾らの税金を無駄にしている」
椅子に座る男の目の前に立っている男はそう思った。
「それに外務省に居てICPOに就いていた君の事だ。何ヶ国語も喋れるだろう。打って付けの適任者だよ」
椅子に座る男の話はまだ続いている。
「国家予算はどれだけ此処に費やされているんだ」
立っている男は前に組む腕を焦らしながら椅子に座る男の目を逸らさずじっと見ていた。
「そこでエジプトで行われる各国サミットのシンポジュームで、ロシア出身の医学博士ロゼット・ペイソン氏を警護していただく。博士はDNAの第一人者で重要人物だ。奴らが暗殺でも謀ってみろ、世界にとって貴重で優秀な頭脳が失われる。なんとしてでも博士を守ってくれ」
椅子に座る男はカフスボタンのシャツを整えながら言った。
「君も知っての通り今の世界、政治的な西も東も無くなり思想、宗派も無くなった。裏も表も無く全世界政府が全会一致で手を結んだのだよ。それが奴らの脅威にでも曝されても見ろ、また元の黙阿弥だ。手段を選ばずそれを防いでくれ」
「ところでこの男は何故、俺が何でも知っていると思い込んでいるんだ」
立っている男は椅子に座る男の目を逸らした。
「あと2時間で出発だ。早く準備をしたまえ」
椅子に座る男は腕時計を見て言った。
「あの、意味が分かりません」
立っている男がようやく口を開いた。
「説明不足だったかな・・。分からなかった部分を聞きたまえ」
椅子に座る男は前のめりになった。
「喋っている全てが分かりません。何故あなたは私をこの部屋に呼び、そんな仕事を与えるのですか!」
立っている男は冷静に感情的になった。
「君が届けてくれた書類に書いているからだよ」
座っている男は封筒の中身の書類を立っている男に見せた。そこには辞令文が入っていた。
「また、飛ばされた!」
立っている男は肩の力が抜けた。・・・つづく
読者の皆様へ・・。このストーリーは見切り発射のため更新が不規則となります。ご了承願います。