第七章・信仰と罪(11)
コンピューター制御室ではレジスタンスのプログラム技師の青年が一人あらゆるキーボードを叩いて悪戦苦闘していた。
「よしっ!これで大丈夫!」
青年はようやく息をついた。
「やっぱり僕って天才だなぁ。最短記録だぜ!簡単なもんだよ。ちょちょいのちょいだぜ!えー隊長ミサイル解除できました」
青年は自分に感心して無線で特攻隊長に連絡した。
「無線が開きっぱなしだ。聞こえていたぞ。自慢ぶってないでお前もこっちに来い!撤収するぞ。あと危険と思われるプログラムはすべて削除しておけ」
特攻隊長の声が無線に入ってきた。
「はい、はい」
No.6は代表を抱きかかえ泣き崩れている。
遠藤広子はその悲しげな姿を見つめながら頭の中では代表が最期に言った言葉が引っかかっていた。
<お姉さん・・、誰の事なのかしら・・>
「No.6、我々はもう行くわ。あなた達も敵に此処が見つかる前に早く逃げなさい」
遠藤広子がNo.6に静かに声をかけた。
「もうすこし、もう少しだけ代表を見送ってから私達の運命を決めたいと思います」
No.6は愚図りながら一生懸命答えた。他の信者達はレクイエムを奏でている。
「No.6、もしよかったら一緒に来ない?」
遠藤広子が聞きにくそうに言った。
「あなたに特別な能力が無くても私の心は分かる筈です。また運命の巡り合わせがあれば出会う時が来るでしょう。私は皆達と一緒に安全な『新境地』を探しに行きます」
No.6は遠藤広子に向かって丁重に断った。
「分かったわ・・。それから先っき神は居ないと言ったけれど本当は・・居るわ。私は夢の中で会ったから」
遠藤広子は立ち上がった。
「ありがとう・・。これからの克てとして生きていくわ。この奥に緊急避難通路があるからそこから早く逃げて」
No.6は涙に濡れた顔を見上げた。
「看病してくれて本当にありがとう。あなたの事は忘れないわ」
遠藤広子は立ち去るのが辛かった。
「最後に教えて、あなたは誰なの・・」
No.6は遠藤広子を見つめていた。
「私の名前は山崎鮎子。人間よ。心のなかはあなた達と同じ“愛”がある。不良品なんて関係ないわ」
そう言い残して遠藤広子は立ち去っていった。礼拝堂では代表がNo.6の胸の中で眠り続けレクイエムが響いていた。
「ちょっと寄り道しちゃったね。さぁ、出発よ。早く我が家に帰りましょう」
遠藤広子はレジスタンスメンバーに号令を出し司令官の自覚を取り戻した。・・・第七章おわり
誰しもが一度は興味を持つ未知の世界、恐怖を感じながらその好奇心を駆り立てる。ただ空想のお話で止まらず自分自身に置き換えたらどうだろう。「次は我が身!」想像力を膨らませ、話の展開に没頭し、登場人物と一緒に物語のなかに同化していく・・。次回もこの部屋でお待ちしております。