第七章・信仰と罪(7)
遠藤広子はまた心地よい安らぎを感じる白い夢の中にいた。
目の前にはまた野球帽を被った男の子が泣きじゃくっていた。
「どうしたの坊や・・」
遠藤広子は男の子の目線になり、ゆっくり男の子の頭を撫ぜてやった。
「うっ、うっ、・・・」
男の子は流れる涙を堪え様としている。
「君は、誰なの・・。何処から来たの・・」
遠藤広子は男の子を見つめ涙を拭ってやった。
「何処に行っていたの・・。ずっと探していたんだよ・・」
男の子は涙を堪える声で前と同じよう遠藤広子の頭の中に直接喋りかけてきた。
「私も何処に行っていたか分からないの。どうして私に会いたがっているの・・」
遠藤広子は男の子をじっと見つめた。
「僕だよ。お母さん」
その時、男の子の顔が板倉の顔に変化した。
「あなた!・・」
はっ、と目を覚ました。遠藤広子の目は見開いたままでベッドでじっとしている。
「全てを思い出したわ!」
「No.6・・。No.6・・」
No.6が寝ているベッドから起こす小さな声がする。
「No.6・・、No.6・・」
「・・もう食べれないよぉ~」
No.6はいびきを掻きながら寝言を言っている。
「No.6!起きてったら!」
「どうしたの・・、こんな時間に・・」
No.6は寝ぼけながらようやく目を覚ました。
「何の夢見てたの!早くはっきり目を覚まして!」
No.6は片目だけ開けた。そこには戦闘服を身に着けた遠藤広子がいた。
「おからだ元気になった・・」
No.6の頭の中はまだ寝ているようだ。
「早く起きてよ!あなた達がやろうとしていることは大変な事なのよ!」
遠藤広子はNo.6の顔に近づいて言った。
「どういうことなの・・」
No.6がようやくベッドから起きた。
「あなた達は間違った教えを広めようとしているのよ!」
パラポラアンテナを空に翳した滑稽な救急車の屋根に座り、小高い尾根から黒鉛を上げ燃え盛る“帝国”の基地を双眼鏡で除くレジスタンスの特攻隊長がいた。
「司令官・・・」
「隊長!」
救急車の後部ドアからコンピューター技師の青年が顔を覗かせた。
「司令官の現在位置が分かりました!」
「分かったか!よしっ!」
特攻隊長は屋根から飛び降り中に入っていった。
「何処だ!」
「生きていらっしゃいますよ!」
青年は嬉しそうに言った。
「当たり前だ!」
特攻隊長は青年にけし掛けた。
「司令官の体内に埋め込んだDPSがようやく生体反応を始めまして、どうやら都心の地下ですね。昔の地図と照らし合わせますと地下鉄道のかなり大きな駅にいるようです」
モニターには位置を知らせる赤い点が点滅している。
「今の場所から相当距離があるが、短時間でどうしてそんな場所まで移動したんだ・・」
特攻隊長は不思議がった。
「それは分かりませんがこの信号は正確です。たとえ地中でも海の底でも確実に捉えます!」
青年は力強く言った。
「たいそうな自信だね」
特攻隊長は青年の耳元に口を近づけ囁いた。
「なにしろ僕が作りましたから!」
青年は自慢げに言った。
「よしっ!出発だ!!司令官を助けに行くぞ!分かっているかと思うが罠かもしれん!気を抜くな!」
特攻隊長はマイクに向かって大きな声を出し全部隊に指令を出した。・・・つづく