第七章・信仰と罪(4)
遠藤広子はゆっくり目を覚ました。どれだけ気を失っていただろう。そこは消毒液の臭いが鼻を付く病室だった。
周りを見渡すと白い世界だった。しかし、夢で見たような安らぎを感じる場所ではなかった。
「よかった。気が付いた」
その横には少女ではなく白いマントを羽織った先っきの女性が看病していた。
「あなたは・・。此処は何処・・」
遠藤広子は力の無い声で言った。
「私はNo.6。此処の教団の信仰者よ。私の名前おかしいと思うでしょ。此処ではみんな番号で呼ばれているの。ところでやっぱり私が思ったとおりあなたは“人間”(ひと)だったわね。で、誰で何処から来たの」
そのNo.6という名の女性は遠藤広子の横に座り優しく答えた。
「“人間”(ひと)・・?No.6・・?。教団・・?。わたしは・・・。分からない。思い出せないの!」
遠藤広子は包帯が巻かれた頭を抱えた。
「大丈夫。落ち着いて。安心して、一時的な記憶喪失だから」
No.6は優しくなだめた。
「女の子は何処。あの消えていった少女・・」
遠藤広子はNo.6の腕を掴んだ。
「女の子・・?あなた以外誰もいなかったそうよ」
No.6は遠藤広子の手を握り締めた。
「幽霊・・」
遠藤広子は呟いた。
「幽霊・・、昔あった言葉ね。微弱な電気エネルギーよ。それを感じて幻覚を見た訳ね」
「微弱な電気エネルギー・・?」
No.6は話を続けた。
「今や科学は発達して・・、いや発達しすぎた訳ね。だから“幽霊”って言葉は古臭いの。科学で解明出来ない物はもう無いの。そして・・なんにも面白くない時代になっちゃたのよ」
No.6の話が悲しく聞こえた。
「私達は新人類の不良品よ。その私達が正しい教えを広める為に集まって組織を作ったの。それが『鉄十字教団』よ。あなたが今いる此処がその本部の医療室。あなたが此処に来たのも何らかの証しだと思うわ」
No.6はゆっくりと説明した。
「正しい教え・・」
遠藤広子は首を傾げた。
「新人類の社会に変わってから大切なもの、“愛”が無くなったの。私達はそれを取り戻す為、努力しているの」
「私、何がなんだか・・」
遠藤広子は顔をかがめた。
「ごめんなさい。急に訳の分からない話を始めちゃって。ゆっくりでいいから、自分の事を思い出して」
No.6は遠藤広子を寝かせ、医療室を出て行った。医療室の外では代表がNo.6を待っていた。
「シスター、あなたの才能を使って彼女はどうだった」
代表は鋭い目でNo.6を見つめた。
「敵ではなさそうです。どうやら本当の様です」
No.6は代表に報告した。
「それならいいのよ」
代表の表情が落ち着いた。
「しかし分かりません。私達以外の“人間”(ひと)がいるなんて」
No.6は不思議そうに言った。
「もう少し調べる必要があるようね」
代表はニンマリ微笑んだ。・・・つづく




