第七章・信仰と罪(3)
大きなモニターが正面に備え付けられたコンピューター制御室。この部屋は地下鉄が運営していた頃、運行管理室として使われていた名残が残っている。しかし今では白マントの女達がキーボードを操り、なにやら巧みに操作している。そこにじっとデータグラフが映し出されるひとつのモニターを見る代表の顔があった。
「では、新しいサンプルを投入しなさい」
キーボードを操る女達に指示を出した。
一人の女が起動スイッチを押した途端、一定だった電子音が早く鳴り始め、グラフも激しく打ちだした。
「うまくいくでしょうか?」
一人の女が代表の後ろに立ち囁いた。
「分からないわ・・。敵の防御システムは予測不能ですから・・。しかし成功を祈るのよ。私達は負けられないの!あの人達の自由を取り戻す為には!」
代表が目をやった正面の大型モニターには街を行き交う人々が映し出されていた。どうやら街に仕掛けている監視カメラの映像を受信しているらしい。
「一見、普通に見える日常生活。喜びや悲しみ、怒りなどの感情も見られる。しかしそれが作られた物だと彼らは知らない。全く気付いてはいない・・」
代表から一筋の涙が溺れた。
「私達の手で彼らを救い出しましょう。この腐敗した世界から」
後ろに立っている女が力強く言った。
「それには早く作戦を成功させなくてはなりません。次のプログラムを予測しておいて!」
代表は涙を拭い命令し部屋を出て行った。
「分かりました。代表」
後ろの女は部屋を出て行く代表に丁寧にお辞儀をして部署に付いた。
その頃、駅の構内へ傷ついた遠藤広子が銃を肩に持った二人の女に担ぎ上げられ運ばれてきた。その後ろでは一人の女が銃を構え遠藤広子に向けている。集会で一人残った女性が先頭に立つ女と対応している。
「どうしたのですか?その者は」
「不審者です。監視地区にて倒れておりました」
先頭の女は機敏に答えた。
「傷付いているではありませんか。直ぐに医務室へお連れして手当てをしてあげてください」
女性は辛そうな表情で言った。
「しかし、敵のスパイかもしれません。一度調べてからでないと」
先頭の女が即座に答えた。
「違うとは思いますが。では、先にDNAの検査をしてください。そして“人間”(ひと)と分かり次第、治療してあげてください」
「分かりました」
二人ともご丁寧にお辞儀をして、先頭の女は後ろの女に指示をして遠藤広子を連行した。
「あの女性は何処から来たのかしら」
女性は見送りながら首を傾げた。
「シスター、あなたの出番よ」
女性が振り向くとそこには代表が立っていた。・・・つづく