第六章・帝国の滅亡(4)
院長は無機質な笑みを遠藤広子に投げていた。
「私の計画をご存知だったのですか。院長・・・」
遠藤広子も負けてはいない。
「つい今さっき知ったところよ・・。信頼していたのに・・私を裏切り欺くなんて、がっかりだわ・・」
院長は笑みを浮かべたままおどける様な口調で言った。
「裏切るだなんて・・。誤解してはいませんわ。はなっからあなたは私の敵でしたもの・・」
遠藤広子も院長の口調にあわせた。
「何故私の邪魔をするの・・」
院長は次は困った口調で言った。
「そんな年頃かしら・・」
遠藤広子は乙女になった。
「しかしゴールを目前にしたけれどここまでね。私に見つかっちゃったもの。目標は達成できないわ」
そう言うと院長の背後から数名の狙撃隊が銃を構え現れた。赤いビームライトが遠藤広子を狙っている。
「そうかしら私を倒したところであなたのこのお城は崩壊寸前よ・・お姫様・・」
遠藤広子の頬に汗が流れた。
「リフォームするわ・・」
院長が腕を上げ振り下ろした。狙撃隊の銃が遠藤広子を目掛け一斉に火を噴いた。
遠藤広子は倒れこみ息を絶った。
「残念ね。だけど敵ながらお見事だったわ・・」
院長は遠藤広子の死体を見下ろし豊満の笑みを浮かべた。
「私は部屋に戻っております。他にもねずみが走り回っているわ。早く駆除して頂戴」
院長は狙撃隊に指示を出し、歩いていった。
そのころ戦闘服の男たちは小型の爆弾を仕掛けていた。
「急げ!セットしたら早急に此処から脱出だ」
リーダー格の男は爆破装置を見回りながら男たちに指示を出していた。
「この爆弾は無線で連鎖爆発する。念のため時限装置のカウントは30分後に合わせておけ」
小型爆弾のアンテナを引っ張りながら声を張り上げた。
「リーダー・・」
一人の戦闘服の男がリーダー格の男に声を掛けてきた。
「そんなに大声を上げなくても。どこで“帝国”の兵士が聞いているかも分からないんですよ・・」
戦闘服の男は小声で言った。
「わざと聞かせてやっているんだよ。俺は敵でも出来るだけ犠牲は出したくないんだ。奴らもそれが分かっていれば逃げ出すだろう」
戦闘服の男はにんまりした。
「やさしいのですね。しかし“帝国”の兵士はともかく硬直状態にある関係者はどうするんです」
リーダー格の男は視線を落とした。
「彼らは無理だ。彼らは・・動かされていただけなんだ。ロボットだったんだよ。此処にいた時点でもう既に死んでいたんだよ」
戦闘服の男も視線を落とし黙り込んだ。
その時・・・、蛍光灯が点滅するようにスクリーンが動き始めた。戦闘服の男たちはどよめきたった。
「みんな落ち着け!その場から動くな!」
リーダー格の男が全員をまとめた。
点滅を繰り返し止った瞬間、周りはジャングルの景色になった。
「食うか食われるか?弱肉強食の世界だな・・」・・・つづく