第六章・帝国の滅亡(3)
ちょうどその頃、パラポラアンテナを屋根に載せた救急車が急患用入り口に到着した。
車の後部ドアから銃を持った戦闘スーツの男たちが数名出てきた。
「僕は此処で無線の傍受にあたります」
パソコンの前に座った青年は出て行ったリーダー格の戦闘スーツの男に行った。
「それにデジタル系なんで銃の扱いには慣れてませんから」
「扱いに慣れた奴はここには残らんぞ。なにがあっても自分で何とかしろよ!よし突撃だ」
先頭のリーダー格の男は合図をしてゆっくり扉を開けた。
「先生、患者ですよ・・」
扉の向こうは静かな廊下があるだけだった。
「行こう!」
戦闘スーツの男たちは身を屈め銃を構え中へ突入した。廊下には所々マネキン人形のように硬直して動かない病院関係者がいた。
「他のチームはどうゆう状況だ」
リーダー格の男がイヤホン無線マイクに言った。
「他の班もすでに突入してます」
リーダー格の男がしているイヤホンより車で待機している青年の声が聞こえてきた。
「よし!気を抜かず作戦行動を取るよう伝えてくれ」
そう言った途端、近くから銃声が聞こえ後方にいた一人の仲間が倒れた。
「ど・・どうしたんです!」
青年は怯えた声でマイクに喋った。
「銃撃だ!撃て、撃て!」
車のスピーカーから男のどなる声が聞こえ同時に銃の発砲音が聞こえてきた。パソコンの前の青年は目を見開きスピーカーを見た。
発砲音が治まると無音になった。青年は冷や汗を流しマイクに向かった。声を出そうとした先にスピーカーからリーダー格の男の声が聞こえてきた。
「敵が隠れていた。一人負傷。どこにいるのか我々には分からないので十分注意するよう他のチームにも伝えてくれ!」
負傷した戦闘服の男は他の仲間に担がれている。
「よかったぁ、無事だったんですね」
青年はほっとした。
「これで停止した者以外“帝国”の兵士がいるということだ。こっちは何とか切り抜けたが作戦を完了するまで油断をするな!お前も気を付けろよ!」
「僕は大丈夫ですよ」
青年はそう言ったが膝が震えていた。
連絡が終わり男たちはようやく目的地に到着した。そこは板倉のいたリハビリセンターの中庭だった。
リーダー格の男は背負ったリュックより小型のロケット型の装置を取り出しオブジェを象った大きな噴水に取り付けた。
「他のチームも準備はいいか!」
「OKです」
青年より連絡が来た。
リーダー格の男はその装置のスイッチを押し起動させた。
「妨害開始!」
戦闘服の男たちはサングラスを掛けた。
「了解」
青年がキーボードを叩くと、車の屋根に設置されたパラポラアンテナが回りだした。アンテナから発信された電波が小型ロケット装置に受信された。装置は発光し始め眩しいくらいに周りが光に包まれた。その猛烈な光が消えた時、目にしていたリハビリセンターの背景が硝子が砕けるように壊れていった。そこに現れたのは真っ白なスクリーンに覆われた大きな部屋だった。あの噴水は映像の信号発信の役割をしていたようだ。
「正体を現したな」
リーダー格の男がサングラスを外しながら言った。
「他のチームはどうだ」
リーダー格の男はイヤホンに問いかけた。
「他のチームも完了です」
車に待機する青年の声が返ってきた。
「よし!この基地を丸裸にしてやる!」・・・つづく