第五章・我等が為に鐘はなる。ー第四部/シークレット・ウォーズー(2)
だが・・作戦は失敗に終わった。念密な計画を立て、何回もシュミレーションしたのにもかかわらず同志から何人も犠牲者がでた。捕らえた“指導者”は影武者、完璧な偽者だった。奴らは完全なる“指導者”のクローンを作り上げていた。動作仕草、筆跡に関わらず血液型、ましてや指紋までもが一致している。我々はすっかり騙された。奴らのDNA改造計画はここまできていたのだ。しかも政府は我々の計画を先読みし、罠を仕掛けた。そのクローンの影武者は爆弾人間だったのだ。その影武者は我々がアジトに連れ込んだところを見計らい自爆した。後から分かったことだが、そのクローンは遺伝子組み換えによって体内で自然発火し爆発したのだ。隙を突かれた我々の負けだった。計画は振りだしに戻ってしまった。リーダーとして犠牲になった同志たちに悲しみの涙がこぼれた。イヴの夜は俺の思いとはお構いなしに去年と同じ雪が降り出していた。彼女は俺に気遣いずっと傍にいてくれた。
それから悲しみに暮れてはいられない残酷な日々が続いた。そんな年が終わるころ偶然“指導者”に関する有力な情報が手に入った。“指導者”は病に冒され巨大な病院にいるという。捕らえた上層士官の口から出た言葉だ。その病院は通称“白い城壁”と呼ばれる要塞だ。俺は犠牲になった同志の恨みを晴らすべく次の目標を“白い城壁”に置いた。今年のうちにけりを付けよう。明日の大晦日は荒れそうだ。・・・第四部おわり