第五章・我等が為に鐘はなる。ー第四部/シークレット・ウォーズー(1)
その年は最初の日からとんでもない事に巻き込まれてしまったものだ。
その日のうちから俺たちの、いや我々の戦いが始まった。誰にも言えない、誰も分かってくれない秘密の戦争だ。
まず我々は同志を募った。看守側である“監視員”の目を掻い潜り、少しずつだが仲間を増やしていった。危なげな専門分野の同士も増え、あらゆる妨害、破壊工作もした。そうこうしているうちに仲間も大勢に増えリーダーとしての自覚も沸いてきた。そして・・その合間を見て、彼女とも分かち合い愛し合った・・。
我々が知り合った洞窟はあの男の計らいで政府役員に手を伸ばし守られた。この洞窟は鍾乳洞が広がり長く続いて迷路のようになっている。政府側も取り壊しに躊躇しているのだろう。そんな政府側も甘くは無かった。同志からも逮捕者が何人も出た。尋問され施設に送りこまれ帰ってこなかった。俺はモンタージュ写真が街じゅうに張り出され指名手配されている。
しかしいまだもって“指導者”の行方は知れなかった。極度の自己中心的な一人の人間がもたらした社会を巻き込んだ犠牲・・。昔の俺もそうだった。自分勝手なことばかり考えていた。一歩間違えると俺もそうなっていたかもしれない。もう今年も終わる。過酷な戦いは毎日のように続き、今まで退屈に思えた日々が懐かしく思える。今年は何年だ。もうじき彼女と出会ったイヴの日が近づいてくる。そんな矢先、“指導者”が車でパレードをするという情報が入った。そういえば悔しいが我々の妨害をもろともせず高速道路の建設が進んでいる。そして天にも昇る大きなアンテナが出来上がった。その式典だろう。しかしそれは千載一遇のチャンスだ。その日を逃してはならないとターゲットに決め作戦行動に移った。・・・つづく