第五章・我等が為に鐘はなる。ー第三部/ならずもの部隊ー(2)
そこは俺たちがいつも削り崩している山の一画の洞窟だった。そこには数名の男たちに混じり女も何名かいた。どいつも目つきの悪い物騒な顔ぶれだ。その中にあの男の顔が在った。俺は早速話を切り出した。俺はあせっていた。はやく切り上げて彼女の元に帰らなければならない。それとは逆に男はゆっくりと順を追って説明してきた。俺のあせる気持ちを逆なでするかのように。話によると此処に集まっているメンバーは警察から身の覚えの無い罪を着せられ刑務所に投獄された者たちだそうだ。そう言われて見れば男も女も面の悪い連中ばかりだ。どうせ街の不良どもが引っ張られたのだろう。そこでの生活は地獄だったそうだ。・・・そんな話は俺にとってどうでもいい。俺は昨日の出来事を叩きつけた。実験は次の時代への足掛けだという。目的は人間を構成しているDNAの解明。実験台にされる人間はリストにされ何らかの理由で施設に送り込まれる。送り込まれればもう最後だ。一番の候補者は罪を犯した囚人たち。此処にいる同志たちは次々に消える囚人を見てきた。警察は収容人員が足らなくなってきたため権力を利用して補充人員を集めた。それが彼らだ。そこで協力して脱走した。概要はそういったところだ。・・・同志。男は確かにそう言った。同志とはどういう意味だ。・・・つづく