第四章・第三戦争始まる(8)
明けましておめでとうございます。
今年は皆様にとってよい年でありますように願っております。
「うっ・・」
山崎は眠りから目を覚ました。それは寝起きの悪い朝のように頭痛が激しかった。始めは自分がどのような状況でどんな状態であるのかは分からなかったが、徐々に思考能力も動き出し真っ白い部屋で椅子に座っていることが分かった。
「ううっ・・!」
しかし身動きが出来ないよう腕と足に拘束ベルトで縛られていた。
「お目覚めかね・・」
真正面の防弾硝子の向こうに一人の男が立っていた。
「もう一人はまだお眠むのようだ」
山崎が横を見ると小佐井が同じように縛られ座っていた。
「蛍子!」
「さぁ、話してもらおうか。どこまで知っているのかを」
スピカーから流れる感情のない無機質な男の声が響き渡る。
「離してくれ!何も知らないし、あんたが何を言っているのかも分からない。私たちはただの招待客だ!」
山崎はバタバタと暴れた。
「まだしらを切る気ですか?どうしてもお答えできないならこちらも好きにさせていただきます」
「きゃーー!!」
小佐井が悲鳴を上げた。
「蛍子ー!」
「あなたが答えない限り彼女に電流が流れ続けます。徐々に電圧を上げていきますので丸焦げにならないうちにお答えください」
男の無感覚な声が響く。
「きゃーー!!」
小佐井の苦痛に満ちた顔が歪み、叫び声が轟く。
「やめろーー!」
「お答えいただけますか?」
「俺は何でもする。彼女だけは助けてくれ」
「答えになっていませんね」
男は電圧を上げた。
「きゃーー!!」
小佐井の苦痛に歪んだ顔が山崎を煩わす。
「分かった。何でも話す。すべてを言おう・・。だが、彼女だけは見逃してくれ。俺はどうなってもいい。俺の命と引き換えに蛍子だけは助けてくれ!」
山崎は硝子越しの男に怒鳴るように言った。その時・・・。
「フフッ・・」
小佐井が微かに笑った。
「フフフッ・・・、ハハハ・・・」
山崎は小佐井のほうへと顔を向けた。
「だから人間はいつまで経っても愚かなのよ」
「・・・蛍子」
小佐井は目を見開き山崎を見た。と、同時に小佐井の拘束ベルトが外れた。
「何年も付き会ってて分からなかったの?私もあなったって人が何年経っても理解できなかったわ」
「蛍子・・・。どうしたんだ・・・」
「蛍子・・・。小佐井蛍子か・・・。そんな名前だったかしら・・。名前なんていくらでも変えられるのよ。とにかく実験は成功よ。あとはこの男を処分して!」
「蛍子!どういうことなんだ!!」
「こういうことよ・・」
その女は何かのスイッチを押した。その瞬間、山崎の意識は遠退いていった。
・・・数年後。
「国際デジタル時代の幕開けです。これからあなたがどこにいても、どんなときもあなたが求める情報がすべて手に取るように分かります!いつでも最新のニュースが分かるのです。人類の科学の有志がここにあるのです。自動車が空を飛ぶ時代は来ませんでしたが、それより有意義な時代がやってきました。理想郷へようこそ」
「はやく此処から逃げましょう!」
周り全体に耳を貫くサイレンがうなりをあげていた。
「私たちは招待客の一人だ・・」
山崎はうわごとのように言った。
「招待客なんて一人もいなかったんです。奴らが作り出した幻影だったんですよ。奴らの罠です」
「蛍子・・!蛍子はどこだ!」
「もうこの基地はおわりです。さぁ行きましょう」
男は山崎を抱え走り出した。
「基地・・・。ここは・・・」
「あとで詳しく説明します。それよりはやく我々の船まで脱出しないと・・」
「船・・・」
「潜水艦です。もうこの基地は崩壊します」
「君は・・誰だ・・・」
「突撃隊の有沢ですよ。隊長」
「隊長・・・?」・・・第四章おわり
誰しもが一度は興味を持つ未知の世界、恐怖を感じながらその好奇心を駆り立てる。ただ空想のお話で止まらず自分自身に置き換えたらどうだろう。「次は我が身!」想像力を膨らませ、話の展開に没頭し、登場人物と一緒に物語のなかに同化していく。次回もこの部屋でお待ちしております。