第四章・第三戦争始まる(6)
・・・日曜日。
雲ひとつない晴れ上がった空。心地よい南国の風。澄み切った潮の香りがする空気。最高のロケーション。バカンスにはぴったりの日和だがこの二人のカップルにとっては運命の日がやってきた。
「これが島への高速艇ね」
小佐井はまじまじと眺めた。
「さすが除幕式の日とあって大勢の人だね」
山崎は感心していた。
「そんなことより早く行きましょ。乗り込むのよ」
小佐井と山崎は島への送迎船である高速艇が出航する港にいた。
「あなたの<彼女>が渡してくれた怪しげなパスポートが通じるかしら」
小佐井は口を尖らせて言った。
「まだ疑っているのか・・・」
山崎は小さくなった。
「当たり前じゃない。こんな顔写真つきの証明書!都合がよすぎると思わない?罠と見て掛かればいいのよ!」
小佐井は頼もしく言った。そんな小佐井をみて山崎も頼もしく思った。
そんな二人の不安をよそに難なく通れた。
招待されている大勢の人ごみに紛れ、その足で船の底へと下りていった。
「どこまで下りていくんだよ!」
「調べるのよ!何か出てくるかも知れないじゃない」
かれこれ一時間隅から隅まで調べたが何も出てこなかった。
へとへとで床に座り込んでいると汽笛が鳴った。ようやく島が見えてきたのだ。二人はロッジまで階段を駆け上っていった。
カモメが気持ちよさそうに間近で飛んでいた。潮風が肌に付着する。二人が見たその島はそれは優雅な楽園と思えるほどの絶景なるものだった。
高速艇がその島の港に着くと数台のバスが待ち構えていた。
大勢の人の群れがそのバスに呑まれて行く。小佐井と山崎もそのなかの一人だ。バスは除幕式会場へと走り出した。
「打ち上げ楽しみだねぇ」
「楽しみじゃないわよ!私たちは見ないの!失踪した従業員がいたでしょ。その真相を探るのよ」
小佐井と山崎は日曜日が来るまでの間、会社関係者を調べていた。どの家庭もごく普通の家族だった。しかし聞き込んだなかで一組の若い夫婦が突然居なくなったという。話では急に引っ越したということだが、寮暮らしで給料もよく待遇もよかったはずだが、何故いかなる事情があったのかは分からないようだ。
「何か此処であったのよ。証拠をつかまなくちゃ」
「蓋を開けてみたら何もなかったというのもあるんだよ」
「話の腰を折る人ね!見てなさい!私が陰謀を暴いてやる!!」
「陰謀・・って!?」
「あなたが言っていたことじゃない!裏に隠された真実を暴き出すのよ!!」
小佐井は燃えていた。山崎は引いていた。・・・つづく