第四章・第三戦争始まる(5)
「気持ちいぃ~。南国ねぇ」
「あぁ・・・」
山崎渉と小佐井蛍子は九州に着いた。しかし、山崎は浮かない顔をしている。新幹線のなかで見た「物理工学、望月博士死亡」の電光掲示板でのニュース。週刊誌に載っていた「社会理論家、豊島教授行方不明」の記事。この二つは偶然なのか?山崎は確信に迫っているように思えた。
「なにぼんやりしているのよ。あっ、もしかしていま先っきの娘のこと考えてるの!」
「先っきの娘?」
「新幹線のワゴン販売の幼顔のウエィトレス。微笑ながらタダで週刊誌を渡したじゃない。あれって何かの合図!」
「はっ、えぇ・・」
「私以外にも新幹線の乗務員にも手を出してたの!乗り物好きの女が趣味なのね!」
「なっ、何言ってんの!?・・・」
騒がしく痴話げんかが始まった。
「えっ、お客さんあの島に行くの?関係者の送迎船は明日も明後日も毎日運航しているけどそれには乗れないし、一般人が行けるのは毎週日曜日だけだよ。それも抽選というのがあって当たった人だけらしいよ。・・そりゃ何も無しじゃ無理だよ。あそこに行くにはパスポートがいるんだ」
タクシーの運転手が言っていた。
「ちょっと、これからどうすんのよ!日曜日はまだまだ先だし、それに私たちは招待されていないじゃない。あなたには計画性がないのよ!!」
小佐井は顔を膨らませあてつけた。山崎は黙ったまま週刊誌を見ている。
「だいたい裏づけが必要だわ!ちゃんと調査しておきなさいよ!!」
小佐井の愚痴は続いている。そのとき突然、山崎がニヤリと笑った。
「パスポートあったりして・・」
ゆっくりと見せた。
「どうしたのそれっ!」
急に愚痴が止まった。
「俺にも分からないよ・・。この週刊誌のなかに入っていたんだ」
「ははぁん、あの娘ね・・。やっぱ何か関係があったんだ・・」
「誤解しないでくれ。本当に知らないんだ。そんなことより日曜日まで日がある。それまで観光しようじゃないか」
「何言ってんの!取材するのよ!関係者の自宅調査から始まりよ!ところで泊まるところが無いからといってなんでラブホテルなのよ!」
痴話げんかは続いている。
同じ頃、暗く狭い場所で数名の者たちが密談を交わしていた。
「計画の準備は順調に進んでいるか?」
「はい、いまのところは」
「いよいよ次の日曜が除幕式だ。気を引き締めていけ。失敗は許せられない。油断は禁物だ」
「分かっています」
「失敗すれば・・、我々世界中の人間に未来はない。奴らの思う壺だ」
「そうはさせません」
「衛星の打ち上げを断固としても阻止するんだ!」・・・つづく