第四章・第三戦争始まる(2)
「電波物理工学の望月博士~。あんな人の意見を参考にしたのか?」
最初にこの記事を売りにいったのは、ゴシップ、スキャンダルなどで有名な雑誌出版社。正統派の出版社に持っていっても端から相手にされず、そっぽを向かれるのが落ちだ。博士の言葉にもあったように数多くのインチキ記事があったとしてもその内ひとつは真実がある。その言葉を信じたものの第一声がこれだ。
「あの人はなぁ~。胡散臭い人で有名なんだよ。学会からも煙たがられている。たぶん君はこういう記事を書くのが初めてだろうから知らないかもしれんが、あの人の言った記事は手垢が付くくらい出回っているんだよ。他、持っていきな。他も無理だとは思うけどね」
「そんなぁ。しかしこれが事実としたらえらいことですよ!」
「あのねぇ、冷静に考えれば分かることだろ。そのありがたいご意見でも肝心なところが抜けてないかい。うちも偉そうなことは言えないけれど、そういうのに陶酔する人っているのよ。まぁ、うちはそれを売りにしているけどね」
頭ごなしに追い出され、ふらふらと歩きながら冷静に考えてみた。そういわれると所々説得力に欠ける。「もう一度会いに行くか・・」とも考えたが同じ話の上塗りだ。この博士の話を補足するよう別の人の意見も参照しよう。
「宇宙人との交信?言語道断だね。あの人が言いそうなことだ」
「では、教授はどのようにお考えで・・」
「私かね。私は管理社会の形成だと思う」
「管理社会・・・!?」
「生まれたときから体の一部にバーコードを付けられ、登録されファイルされる。それはすべてコンピューターが管理して衛星からは監視される。そう、打ち上げ予定のデジタル衛星こそがまさしくそれだよ」
「それは誰が何のために・・・?」
「よく聞いてくれた。ハリウッドの近未来をとりげたSF映画で出てくるだろう。影の・・・」
「政府ですか・・・」
「正解!奴らがだね・・・」
「で、今度は社会理論の豊島教授に聞いてみたって・・。君も人を見る目のない人だねぇ」
もう一度デスクに持っていった。
「やはり博士と同じ種類の人ですか・・」
「あっ、見る目あるじゃないの」
「話の中で影の政府が出てきたところから分かりました」
「まぁこういう話は結局は昔からある根も葉もないゴシップネタなんだよ。そういうのに興味のある人種が多いから俺たちは食っていけているんだけどね。なんなら君の努力に免じてこの記事買ってあげようか。もうちょっと面白くして」・・・つづく