第四章・第三戦争始まる(1)
喧騒とした慌しい日常よりほんの少しだけ現実を忘れ、自由に想像を膨らませ空想の部屋へお越し下さい。お付き合いいただけるひとときの間、あなた様はどのような夢を見ていただけますでしょうか。
それは、徐々にしかも正確に私たちを蝕んでいった。
それは、気づいたときにはもう遅い。もう取り返しのつかない事態まで来ている。
支配はすでに始まっている・・・。
「いま、ここ日本にある宇宙開発センターより、いよいよ総合デジタル衛星の打ち上げが間近に迫っております。先端技術を駆使し日本で製造された世界に誇る最新衛星といっても過言ではないでしょう。しかし今まで幾度かに渡って反対派による抗議や妨害工作によりまして打ち上げが見送られ延期されておりました。今回はそれらの難題に屈せずほぼ強行に打ち上げが決定したと見ていいでしょう。この打ち上げは反対派の過激行動を避けマスコミにもつい先ほどまで伏せられており秘密裏に進められておりました。この打ち上げが成功すれば、テレビ放送は基よりパソコン、携帯電話、通信ゲームに至るまでありとあらゆる情報が美しく確実に、どんな場所でも何時でも我々の手にすぐに届くのです。この放送は衛星を通じて全世界中に緊急生中継しております!」
・・・数年前。
国際総合デジタル化が国際会議で決定され、通信衛星が打ち上げ目前となった今、その目的に疑問を持った男がいた。何故、その必要があるのか?急速に各国の国家予算の大部分を通信開発に費やす目的は何なのか?法律で定められる定義とは?一般には肩書きどおりの表面的な説明だけで、その裏には知られてはいけない“何か”が隠されいるように思えた。
「それで博士の考えは・・」
「真の目的は宇宙人との交信だと思う」
「宇宙人・・・!?」
「突拍子もない飛躍しすぎた発想だと思うかね?とんでもない我々の現在の科学技術のほとんどは彼らのお蔭なんだよ」
「宇宙人の科学技術・・・??」
「よく雑誌やTVなどでタブロイド的に扱われているが、ほとんどはインチキでもごく一部真実が混じっている。しかし世間はそんなものは娯楽の見世物としてしか思ってはいない。それが奴らのプロパガンダなんだよ」
「奴らとは・・・?」
「よく、ほらそういった娯楽映画にも陰で暗躍する組織が出てくるだろう。影の・・・」
「政府・・・!」
「ご名答!奴らはすでに宇宙人と協力し科学技術を向上させた。というより盗んだんだな、これが。それははるか昔に宇宙船が墜落したことが発端だった」
「宇宙船!UFOですか!」
「もちろん!そしてその回収された宇宙船の未知なる科学技術をその国の政府は盗んだ。しかし墜落したのは1機だけではなかった。他の国にもおっ落ちてた訳だ」
「別の国・・・」
「そう、何ヶ国、何ヶ所と数月を掛け意外とたくさん落ちてたわけ。そんなことはつゆ知らずその国としては秘密にしておきたいから、隠ぺい工作を使い知らぬ存ぜぬを突き通した」
「しかし話が世に出回り世間の関心を引き、敵対国家であろうが手を結ばざるを得なくなった・・」
「えらい!そこでよりいっそう高度な科学発展を目指し世界が協力してデジタル時代という名目で裏では新たなる未知の技術を手に入れんがため、宇宙との通信に踏み切ったわけだ」
「通信手段も宇宙といった長距離だとアナログよりデジタルのほうが鮮明に電波に乗り相手に届けやすい」
「頭いいねぇ。君、どこの記者」
「いやだなぁ、最初に挨拶しましたでしょ。フリージャーナリストの山崎渉です」・・・つづく