第三章・アンドロイドたちの夜(6)
目が覚めると少女の姿はなかった。眠った時間はほんの数時間だったが今回は悪夢から逃れたようだ。ぐっすり寝たようでだいぶ体は回復した。
横になったまま天井に垂れる大きな鍾乳洞を眺めながら、少女の言った言葉を頭のなかで繰り返し考えてみた。
「1999年に世界は滅び、新しい世界が生まれた。そして完璧な社会を作るために間違った政策が打ち出された。そこで造られた人間たちが構成する硝子のようにもろい社会構造。そこに宇宙人が侵略し世界を乗っ取った。・・・そして俺はパソコンで造られた新人類の出来損ない」
そんな荒唐無稽な話をすぐには信じられなかった。どう考えてもハリウッド映画だ。自分の頭のなかに残る記憶はまったく違う。・・・しかし・・・。断片的にしか出てこない自分の存在と夢の中のもう一人の自分・・・。これが誰かに作られた記憶だとすると無意識に社会に誘導され俺もまたその“墓場”に捨てられたのか・・。また何故俺は“敵”に捕まった。レジスタンスのリーダー・・。
頭のなかで整理するつもりだったが余計に混乱してまとまりがつかなくなった。
頭を抱えているとそこへ今度は大きな人影が近づいてきた。
「お気づきになられましたか・・。隊長・・」
その青年は確かにそう言った。歳はまだ十代、知らぬ顔だ。
「あぁ、・・。ところで少女はどこに行った」
「少女・・」
その青年は不思議な顔をした。
「高校生ぐらいの女の子だよ。いままでここにいたんだ」
その青年は困った顔をした。
「高校生・・?ここには隊長と僕しか居ません。いままで私は隊長の護衛で外で見張りをしておりましたが内に入った者はおりません。そして我々の仲間には女の子はおりません」
そうすると彼女はいったい誰だったんだ・・。板倉はその青年にいままでの事をしゃべった。
「隊長は世界征服を企む組織に捕まっていたのです。私たちは脱出計画を練り念密な計算の上時間は掛かりましたが、潜入していた仲間とチームで昨日救出に成功し此処へお連れいたしました」
「世界征服・・。潜入していた仲間というのは遠藤広子という女性か?」
「潜入後の名前は分かりませんが、美しく素敵な女性です。他の仲間と同様今もその基地で戦っています」
板倉の脳裏を遠藤広子の愛らしい面影がかすめた。
「借りを返す番だ。今度は俺が助けに行こう。今すぐに準備をしてくれ」
「お客様、当社の技術を利用されたいと・・。それでは提携というかたちで取り組みさせていただきます。まっ、新しいプログラムは既に更新済みでございますから・・。ところでお客様は政府の方でいらしゃいますか。当社は利益を重んじております。見返りが高ければ高いほどどんな人間でもお造りさせていただきます・・。ご協力ありがとうございます」・・・第三章おわり
誰しもが一度は興味を持つ未知の世界、恐怖を感じながらその好奇心を駆り立てる。ただ空想のお話で止まらず自分自身に置き換えたらどうだろう。「次は我が身!」想像力を膨らませ、話の展開に没頭し、登場人物と一緒に物語のなかに同化していく。次回もこの部屋でお待ちしております。




