第二章・種の絶滅(6)
良子が地図を見て探している間、望恵は携帯電話で旅館に電話したが圏外になっていた。聡子は静かに窓から地蔵を相手ににらめっこしている。
「分かったわ。その先を曲がって細い路地を入るのよ」
「大丈夫?方向音痴なんだから。なんだか乗り物酔いしてきたわ」
望恵がまたいやみっぽく言った。
「こんどこそ大丈夫よ」
良子がアクセルを踏んだ。聡子の顔はにらめっこのままで車は動き出した。すこし走り曲がったところで細い山道に入った。その目の前に小さなトンネルが口を開いていた。青いこけが入り口の周りを多い尽くし長い間車の通行が無さそうな古ぼけたトンネルだった。良子は別に何も思わず突入した。なかは真っ暗で車一台分の道幅しかない。また舗装された道路ではないので揺れが激しい。表面は山肌がむき出しである。
「すごいわね・・」
良子は車のライトを上向きにした。
トンネルは意外と長かった。なかなか出口が見えない。
「こんなところでとまらないでよ!」
「変なこと言わないで!私だって早く出たいんだから」
良子は望恵に念押しされヒステリックな口調になった。聡子は目を大きく開きびくびくしている。三人が不安になっているとようやく出口が見えてきた。
「見えてきたわ。ようやくね」
三人は不安な時間から抜け出し心からほっとした。しかし・・それもつかの間。トンネルを出ても外は真っ暗だった。良子はとっさにブレーキを踏んだ。
「いままで明るかったよね・・・」
良子はハンドルを握ったまま体が固まっている。
「まだお昼過ぎのはずよ・・・」
望恵は腕時計の時間を確かめた。
「また道に迷ったの・・・」
聡子はか細い声で問いかけた。
そこは夜だった。寂しい山のなかの夜の世界だった。三人の頭のなかは混乱していた。・・・つづく