第二章・種の絶滅(4)
「これ何かしら・・。こっちにも」
良子が不自然なものを見つけた。
その受付カウンターの両側の壁には暗がりでも一見にして分かる何かをコンクリートで塗りふさいだ跡があった。
「この奥にも何かあるんだ」
「向こうにも2つ・・。全部で4つある」
望恵は三人の後ろで震えていた。
「壊してみようぜ」
悟が背中に背負ったリュックからハンマーを取り出した。
「100%祟られるわよ」
良子がそう言っている間に悟はハンマーを振りかざしふさがれた1つの壁を崩していった。やはり中は空洞なのかすぐに白い粉煙をあげぼろぼろと崩れていった。大広間にとてつもない音が響きわたる。
「おいやめろよ!」
「すごいほこりよ!」
「もうひといきだ」
悟の額からは大粒の汗がたれ落ちている。いままで鳴っていた騒音がさっーと退いていく。ぽっかりと開いた穴からは暗黒の闇が広がっていた。三人はその闇に釘付けになった。
「この向こうに何があるんだ」
孝広が懐中電灯を照らしたが光が届かない。
「結構奥が広そうね」
良子が目を見開いた。
「何かいそうだな」
悟は力を出し尽くし肩で息をしていた。
「ちょっと・・・」
後ろに立っていた望恵が小さな声をあげた。また消毒剤の匂いが広がる。三人は気づいていない。
「ちょっとってば・・」
望恵は何か得体の知れない気配を感じていた。消毒剤の匂いが腐敗した腐った匂いに変わる。三人はまだ気づかず穴の向こうに広がる闇を見ている。
「何かいる!」
「えっ・・・」
「何か動いたような気がしたんだよ」
「ねー!ちょっとー!」
望恵の声がようやく届き三人は振り返った。
望恵は恐怖に身をゆだね全身を振るわせていた。そのひとつは望恵の間近にいた。大広間のいたるところから集団で集まってくる。それらはふらふらとおぼつかない足どりでしかし確実に四人に近づいてきた。振り向いた三人は腐敗した匂いと恐怖に駆られ声も出ず動けなくなっていた。その瞬間・・・。望恵の首が飛んだ・・・。
三人の顔が青ざめた。しがみつき体を震え上がらせる。目の前で望恵が死んだ。望恵の硬直した首のない体だけが目の前で立っている。
腰を抜かす三人にそれは徐々に周りを囲み間隔を狭めていった。
「きゃーー!」
「うるっさいわね。耳元で大きな声たてないで!」・・・つづく