第二章・種の絶滅(3)
「ね!これみてよ!!」
三人から少し離れた望恵が大きな声を出して皆を呼んだ。
「19・・年、6月・・。私たちが生まれるずっと以前じゃない!」
そこには色あせ破れたカレンダーがぶら下がっていた。その下にはダイヤル式の赤い公衆電話がほこりで真っ白になっていた。
「うわっ、年代物だな。」
「こんな電話初めて見たわ」
「しかし教会にカレンダーと公衆電話っておかしくないか」
「やっぱりここ病院よ」
望恵がかざした光に「院内総合受付」の文字が照らされた。それと同時にいままでのかび臭い匂いが急に消毒剤の匂いに変わった。
「何この匂い!」と良子
「どうした」と孝広
「病院の匂い・・」と望恵
「病院の匂い?」と悟
その病院の匂いはすぐに退いていき元のかび臭い匂いに戻った。
「あっあれ・・」と良子
「なんだ」と孝広
「いま一瞬病院の消毒の匂いがしたのよ」と望恵
「ま・・まさか・・・」と悟
四人の背筋に悪寒が走り夏だというのに寒くなる。
「俺はわからなかったぜ」と孝広
「俺もだ」と悟
「私たちにはしたのよ」と良子に望恵
四人は恐怖に怯え動けなくなった。
「やっぱり帰りましょうよ」
望恵が体をくねらせ、ねだった。・・・つづく