第二章・種の絶滅(2)
一見植物の蔦が建物全体を包み隠し覆っているため分かりづらいが、間近で見るとその姿は想像以上に不気味を呈していた。玄関扉には無造作に張り合わされた板が招かざる訪問者を硬く閉ざし、壁は所々崩れ落ち鉄骨の骨組みが曝け出し、窓の硝子はすべて割れておりそこから誰か覗いてるような恐怖さえ感じる。彼らはまだ見えないおぞましき魑魅魍魎と対面することも知らずに玄関の前まで来た。
「さぁ、どうやって入ろうか」
孝広が蔦を掻き分けバリケードになっている板を眺めた。
「こうやって入るんだよ」
悟が乱暴にその板を壊していった。長年の年月が経っているため腐食した板はすぐに崩れ落ちバリケードの役には立たなかった。うるさいぐらいの音が森じゅうに響いた。
「そんな事しちゃ祟られそうだわ」
望恵が怖々と怯えている。
「迷信深いわね。これで封印は解かれたわけね」
良子は興味心身だ。
顔を出した玄関の扉には赤いペンキで“立入禁止”と走り書きされていた。その文字は今の状況にぴったり当てはまり四人を盛り上げた。
「さて誰から先に入る」
「私は嫌よ」
「記念すべき一歩だぜ」
「だったら早くは入りなさいよ」
数分そんな押し問答が続き四人一緒にそろってノブを開くことにした。中から冷たい空気が四人に吹き付ける。体じゅうのじめっとした汗が急にぞっくとさせる。四人はゆっくりとその闇の中に呑まれていった。かび臭い匂いが鼻を吐く。なかに入るとほこりとくもの巣が覆う大広間になっていた。暗闇に月の光が差し込むだけで薄暗くどうなっているか全体を把握できない。四人は恐る恐る懐中電灯の光を思い思いの方向へと向けた。そこは多くの人が集まるような場所だった。しかし腰をかける長いすは散乱し倒されていた。彼らは恐怖に駆られながら一歩一歩奥へと入っていった。
「ここはいったいどうゆう所だったの」
「噂によると精神病院だったらしいぜ」
「俺は秘密の研究施設と聞いたぜ」
「どっちにしてもただの噂ね・・・。ここは教会よ」
良子の照らした懐中電灯の光の向こうにはステンド硝子で彩られ、ほこりにまみれた聖母マリアがいた。その上には傾いた十字架が悲しげに彼らを見下ろしていた。・・・つづく