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虎党悪役令嬢になる  作者: 南蛇井


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4

王国歴××年 秋。


王城会見場に報道陣なぜかいるが集結していた。


壇上に立つのは――王子ラングレッサ。


表情は固い。だが目は決意に満ちている。


「本日をもって、私は――FA宣言をする」


どよめき。


「王子が!?」「王家所属なのに!?」


ヒロインが思わず立ち上がる。


「FAって……自由移籍ですよね!?」


リースが震える声で補足する。


「契約満了に伴い、他国と交渉可能になる制度……」


レディナの扇子が、ぴたりと止まった。


王子は続ける。


「私はこれまで王家一筋だった。だが――」


一瞬、レディナを見る。


「もっと評価されたい。もっと成長したい。

“将来性”だけではなく、今の実力で認められたいのだ」


会場、静まり返る。


翌日。


各国が一斉に動いた。


・北方帝国、10年契約・王位保証付き

・南方海洋連邦、自由裁量権フルオプション

・魔導国家アストリア、知略特化育成プラン提示


王城に山のようなオファーが届く。


「条件がインフレしてますわね……」


レディナは冷静を装うが、内心は嵐。


夜。


王城の庭園。


黄色と黒の縦じまドレスのレディナの前に、王子が現れる。


「……まだ決めていない」


「そうでしょうね」


「なぜ分かる?」


「あなたは打算だけで動ける人ではありませんもの」


沈黙。


王子がぽつりと聞く。


「もし私が他国へ行ったら……どうする?」


レディナは空を見上げる。


「応援しますわ」


「……止めないのか?」


「止めてほしいのですか?」


王子、言葉に詰まる。


数日後。


運命の選択会見。


王子は壇上に立つ。


「熟考の末――」


王城中が息を呑む。


「私は、王家と再契約する」


大騒ぎ。


「残留!?」「FA茶番だったのか!?」


王子はきっぱり言う。


「他国の条件は素晴らしかった。

だが――私を“将来性込みで指名した”者は、ここにいる」


視線はレディナへ。


レディナは扇子で口元を隠しながら、わずかに微笑む。


契約内容発表。


・対等共同統治条項追加

・政策決定にレディナ参加義務

・感情的暴走時の強制ベンチ入り制度


「最後の条項は何だ!?」


「リスク管理ですわ」


会見後。


王子がぼやく。


「FAとは、己の価値を問う儀式だったのだな」


レディナは静かに答える。


「ええ。そして――戻ってくる場所を知る儀式でもありますの」


王子が笑う。


「その“阪神タイガース”とやらも、FAはあるのか?」


「ええ。去る者も、戻る者もおりますわ」


「ならば私は生涯残留を宣言しよう」


「長期契約は慎重に」


その年の王国年表にはこう記された。


“王子FA宣言事件――王政史上最大の交渉劇”


なお、阪神タイガースは依然として見つからない。


だが王城では今や


「来季構想」「補強」「育成」


といった言葉が日常語となっていた。

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