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虎党悪役令嬢になる  作者: 南蛇井


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2/6

2

断罪の日。


王城大広間には貴族たちが集められ、中央には悪役令嬢レディナ。

本来ならばここで罪状が読み上げられ、婚約破棄が宣言されるはずだった。


王子ラングレッサが立ち上がる。


「レディナ・フォン・グランツ。貴様の傲慢なる振る舞い――」


その瞬間。


レディナが叫んだ。


「静粛に!!!」


場が凍る。


彼女はどこからともなく取り出した札を高々と掲げた。


そこには大きく書かれている。


第一巡選択希望


「我がグランツ家は――ヒロインを、第一巡選択希望いたしますわ!!」


ざわ……ざわ……


「せ、選択希望とは何だ!?」「断罪ではないのか!?」


王子が混乱する中、レディナは続ける。


「本日は断罪ではなく、“運命のドラフト会議”ですの。

優秀な人材を、各派閥が指名し獲得する日ですわ!」


ヒロインが震える。


「え、えぇ!? わ、私って指名される側なんですか!?」


「当然ですわ。魔力量A、回復適性S、王子好感度急上昇中。即戦力ですもの」


リースが小声でつぶやく。


「分析が具体的すぎる……」


王子も負けじと札を掲げる。


「王家は――レディナを第一巡選択希望する!」


どよめき。


「な、何ですって!?」


「理由は単純だ。

胆力SSS。カリスマ性A+。混乱耐性MAX。

我が隣に最もふさわしい人材だ」


「こ、告白ですの!?」


「ち、違う! 人事評価だ!」


そこへ宰相家、騎士団、魔導院も続々と札を掲げ始める。


「騎士団はリースを指名する!」

「魔導院はヒロインを!」

「王家は再度レディナを単独指名!」


場は完全に混線。


レディナが高らかに宣言する。


「競合発生ですわね。では抽選ですわ」


どこからともなく現れる水晶玉。


「なぜ準備がいい!?」


レディナは真顔で答える。


「昨晩、夢で見ましたの。“ドラフトは事前準備が九割”と」


結果。


ヒロインは魔導院へ。

リースは騎士団へ。

そして――


水晶玉が光る。


王家 交渉権獲得


王子がガッツポーズ。


「よし!」


レディナはぽかんとする。


「……わたくし、王家に入団ですの?」


「入団ではない。婚約続行だ」


「それ実質残留ですわね!?」


貴族たちは困惑しながらも拍手。


なぜか場内には黄色と黒の紙吹雪が舞い散る。


その夜。


レディナは黄色と黒の縦じまドレスを着て、穏やかに微笑んだ。


「今日の指名は……悪くありませんでしたわ」


王子が隣で聞く。


「その“阪神タイガース”とやらは、やはり球団なのか?」


「ええ。勝ったり負けたりしますの。でも……」


レディナは空を見上げる。


「どれだけ負けても、来年こそはって言える存在ですの」


王子は少し考えてから言った。


「ならば王家もそうあろう。

何度でもやり直せる国にする」


レディナはふっと笑う。


「……来季優勝、ですわね」


「優勝の定義が分からんが、努力しよう」


こうして断罪イベントは“王国史上初のドラフト会議”として記録された。


なお、阪神タイガースは最後まで見つからなかった。


だが王城ではなぜか毎年秋になると、

皆がそわそわし始めるのだった。

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