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断罪の日。
王城大広間には貴族たちが集められ、中央には悪役令嬢レディナ。
本来ならばここで罪状が読み上げられ、婚約破棄が宣言されるはずだった。
王子ラングレッサが立ち上がる。
「レディナ・フォン・グランツ。貴様の傲慢なる振る舞い――」
その瞬間。
レディナが叫んだ。
「静粛に!!!」
場が凍る。
彼女はどこからともなく取り出した札を高々と掲げた。
そこには大きく書かれている。
第一巡選択希望
「我がグランツ家は――ヒロインを、第一巡選択希望いたしますわ!!」
ざわ……ざわ……
「せ、選択希望とは何だ!?」「断罪ではないのか!?」
王子が混乱する中、レディナは続ける。
「本日は断罪ではなく、“運命のドラフト会議”ですの。
優秀な人材を、各派閥が指名し獲得する日ですわ!」
ヒロインが震える。
「え、えぇ!? わ、私って指名される側なんですか!?」
「当然ですわ。魔力量A、回復適性S、王子好感度急上昇中。即戦力ですもの」
リースが小声でつぶやく。
「分析が具体的すぎる……」
王子も負けじと札を掲げる。
「王家は――レディナを第一巡選択希望する!」
どよめき。
「な、何ですって!?」
「理由は単純だ。
胆力SSS。カリスマ性A+。混乱耐性MAX。
我が隣に最もふさわしい人材だ」
「こ、告白ですの!?」
「ち、違う! 人事評価だ!」
そこへ宰相家、騎士団、魔導院も続々と札を掲げ始める。
「騎士団はリースを指名する!」
「魔導院はヒロインを!」
「王家は再度レディナを単独指名!」
場は完全に混線。
レディナが高らかに宣言する。
「競合発生ですわね。では抽選ですわ」
どこからともなく現れる水晶玉。
「なぜ準備がいい!?」
レディナは真顔で答える。
「昨晩、夢で見ましたの。“ドラフトは事前準備が九割”と」
結果。
ヒロインは魔導院へ。
リースは騎士団へ。
そして――
水晶玉が光る。
王家 交渉権獲得
王子がガッツポーズ。
「よし!」
レディナはぽかんとする。
「……わたくし、王家に入団ですの?」
「入団ではない。婚約続行だ」
「それ実質残留ですわね!?」
貴族たちは困惑しながらも拍手。
なぜか場内には黄色と黒の紙吹雪が舞い散る。
その夜。
レディナは黄色と黒の縦じまドレスを着て、穏やかに微笑んだ。
「今日の指名は……悪くありませんでしたわ」
王子が隣で聞く。
「その“阪神タイガース”とやらは、やはり球団なのか?」
「ええ。勝ったり負けたりしますの。でも……」
レディナは空を見上げる。
「どれだけ負けても、来年こそはって言える存在ですの」
王子は少し考えてから言った。
「ならば王家もそうあろう。
何度でもやり直せる国にする」
レディナはふっと笑う。
「……来季優勝、ですわね」
「優勝の定義が分からんが、努力しよう」
こうして断罪イベントは“王国史上初のドラフト会議”として記録された。
なお、阪神タイガースは最後まで見つからなかった。
だが王城ではなぜか毎年秋になると、
皆がそわそわし始めるのだった。




