落ちこぼれの少女①
「……」
「…あの、ごめんなさい」
入学して2日が経った今、とんでもない地獄のような空気が流れている。
入学早々、私は魔力ゼロということが知れ渡り、落ちこぼれと言われている。そこまではいい。
今日は、可愛い女の子に声をかけられて、友達ができると浮かれていた私は、空き教室に誘導されてなぜか閉じ込められた。
そして、その部屋には白い肌に絹のような銀色の髪、薄い唇と通った鼻筋。さらには、見惚れてしまうほどの綺麗な金の瞳を持つ男の子がいる。
「大変恐縮なのですが、あの扉を魔法で壊していただいてもよろしいですか?」
「…バカだなお前」
「…?」
ずっと沈黙を貫いていた彼から、突然の暴言で一瞬戸惑う。他にも誰かいるのではないかと、辺りを見渡すもやはり彼しかいない。
しかも、形のいい眉が眉間に皺を寄せて睨んでいる。
「今ここで魔法を使えば、跳ね返ってくる術式がこの教室に組み込まれてるだろ」
「え、すごい…!どうしてわかるの?」
「お前はなんのために魔力を持ってるんだよ。感知に使え」
「あなた私がなんて呼ばれているか知らないの?」
「は?初対面だろ。しかも俺は誰にも興味ねえよ」
そこまで言われて、これはチャンスだと胸が高鳴る。
壁に背を預けながら座る彼の前へ、私は向かい合うように座った。
「私、セレーネ・アルディア。私と友達になって」
「お前話聞いてたか?誰にも興味ねえって言ったばかりだろ」
「だって私、友達いないから…あなたの名前は?」
「知るか。お前に名乗る名はない」
「そっか…じゃあ、とりあえず相棒って呼ぶね。気が向いたら教えて」
「…〜っ!それはやめろ。カイルだ、カイル・アシュフォード」
「カイル…いい名前だね」
クールで、制服のネクタイは緩んでブレザーのボタンは全開…シャツのボタンも2つ開いていて、着崩されている。そんでもって、色気が漂っているのに他人を寄せつけないオーラは、一見怖いイメージがあるけど私と話してくれる彼は優しい。大好きだ。
カイルは、片手で自身の前髪をくしゃりとかきあげて、なぜか呆れている。
「そもそも、なんでお前みたいなのが友達できねえんだよ。名家のご令嬢だろ?」
「私、魔法使えないから…」
どうして魔力ゼロということがバレて、友達ができないのか。
◇◇◇◇◇◇
ーー遡って2日前の入学式
私は、魔法が使えないけどたくさんの友達を作って、教えてもらって、いつかは自分の魔法で誰かを救いたい。
そんな想いで、実技・筆記ともに自分のできる全ての力を降り注いだ。
知っての通り、実技0点だったんだけど筆記が満点で、憧れのセレモニアル学園に合格した。ちなみに、筆記は名門校ということもあり難関で、満点を取る人は滅多にいないと聞く。
けど、今年は私を含め2人満点がいたと噂が流れている。
魔法の知識は、受かるために問題集をやり込んだから頭にたくさん詰まっているのだ。
セレモニアル学園に心を躍らせ、入学式の会場へ進んだ私に、絶望的な試練が待ち受けていて。
「実力の偏りがないようにクラスを分けるため、今から1人ずつ水晶に魔力を当ててもらう」
そんな公開処刑の仕方ある…?
すでに、筆記のみでこの学園に入った人がいると噂されているのに。
あの、完全に詰みなのでは…?
透明の水晶は別名【魔力測定器】と言われていて、魔力属性と魔力量を測れるという優れもの。
「す、すごいわ!水色の光が綺麗に輝いてる」
「さすが名家の生まれのご令嬢ね」
1人ずつ魔力を当てると、周りから歓声が湧き上がる。
色はその人の魔力属性を表していて、さっきの人ならば水色だから氷属性、赤なら炎、黄色なら雷、緑は風とか…色々あるのだ。
それらの属性は『基本属性』と呼び、魔力量によってコツを掴めば何個でも習得できてしまう。
普通の人ならば、最高で3つらしい。
「次!」
「は、はい!」
気づけば私の番になっていて、恐る恐る水晶の前に立つ。
入学試験の時は魔力ゼロって言われたけど、あれから練習したし増えていると信じたい。
だって、周りは私も名家の生まれだからどんな属性で、どれだけの魔力量なのか、期待の眼差しが突き刺さっているから。
すう、っと一息吸ってから水晶に手をかざして、手に魔力がくるように集中させた。
「……」
「魔力ゼロ」
先ほどの歓声は、嘘だったかのように静まっていて、期待の眼差しから失望に変わったのがわかる。
その証拠に…
「え、魔力なくても入学できたのって本当だったんだ」
「名家のご令嬢が魔法使えないなんて、親不孝もいいとこだよね」
「ぷっ、魔力ゼロってどうやったらそうなるのか知りてえよ」
と、一瞬にして見下すような言葉が向けられて、入学当日から孤立しているのだ。
さらに私は、“落ちこぼれ”と気づけば呼ばれている。本当に最悪すぎる。




