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術中ハック!!  作者: 忍山 柩
起動(ブート)
7/19

5

戦闘描写むずかしかったです。誤字があるかもしれないので報告していただけたら幸いです

術式介入(ハックオン)成功」

黒衣の男がそう呟くと、式神の動きが完全に止まる。

振り上げられた腕は宙で固まり、時間が切り取られたように動かない。


私は、口を開けたままその背中を見つめていた。


ーー誰? いや、それより....助かった。


しかし安堵したのも束の間、式神の体が激しく震え始め、頭部を抱えながら後退する。

「ガアアアアアアアアアアアアアッ!」

耳を裂くような雄たけびを上げると、さきほどよりも醜悪にその姿を変貌する。

式神は口の奥から舌の様な器官が次々と生え、周りの瓦礫やゴミをその舌で取り込んでいく。


「危ないッ!!」

私は目の前の男に叫ぶ。


しかし、そんな式神の変化と私の警告を尻目に目の前の男は一切取り乱すような姿はなく、

淡々と呟く。


術式抽出(インポート)完了」

彼は右腕を掲げ、さらに続ける。


術式起動(ブートオン)

瞬間、彼の纏っていた外套が宙に浮き、まるで液体のように流動していく。

布は剥がれ、絡みつくように右腕へと収束し、硬質な金属音を響かせながら、

異形の兵装へと姿を変えた。


掲げた右腕に現れたのは、機械的な触手。

鋼鉄が何層にも連なりできたそれは、まるで式神の生やした「舌」を模倣したかのようだった。


「真似ヲスルナァッ!!」

式神が彼の変形を捉え激高し、無数の舌をこちらに伸ばし攻撃してくる。


彼は動じず、右腕の触手を自在に操る。

機械の触手と舌が空中でぶつかり合う。

「ギンッ!!」と金属音が何度も響き、式神の舌が次々に叩き落される。


衝撃で中庭の窓ガラスにヒビが入る。

「うわっ!」私は思わず身をかがめる。地面に手をつくと振動が全身に伝わる。

廃墟の中で鳴り響く金属音は一種の不協和音にすら聞こえる。


「なるほど...大体使い方は理解した」

そういうと彼は式神に向かって走り出す。

今まで攻撃に対し、防御に徹していたのとは一変し、自ら触手を式神に向かい叩きつけ始める。


式神も負けじと舌を出し防御するが反応が追い付かず、

右足、左足、右腕、左腕と順番に叩きつけられ破壊されていく。

人間(ゴミ)....人間(ゴミ).....人間(ゴミ)ィッ!!!!」

断末魔のように叫びながら、最期の抵抗かと言わんばかりに無数の舌を口から吐き出し攻撃を仕掛ける。


「そんな攻撃じゃ、当たらねぇよ」

彼は無数の舌を次々と回避し、その舌の上に乗り式神まで一直線に走り抜ける。

式神の眼前に肉薄すると、跳躍し右腕を大きく振りかぶり触手を式神の頭部目掛けて叩きつける。


人間でいうと脳天に辺る場所に当たり、式神の頭部が大きく潰れる。

「グォッギィィイイ」

言葉にならない音を立てながら、今まで動いていた舌がすべて力なく停止していく。


私は息を整えながら、倒れた式神を確認し、戦闘が終わったことを理解する。

「終わったの...?」

あまりにもあっさりと終わった目の前の戦闘は、私の知る現実とかけ離れていた。


私の動揺を無視するかのように、

黒衣の男は右腕の触手を変質させ、それを外套へと戻していく。

少しずつ体に纏わり付いていくそれはどこか不気味で生物のようにも見えた。

そして完全に外套に戻った兵装を羽織り、眉をひそめこちらへと向かってくる。


男はすごい怖い顔で近づいてくる。


ーー殺される?!目撃者は全て消すとかいう奴?!

どうしよう!?ここから入れる保険とかってありますか?!


そんな思考をしている間に目の前まで彼は迫っていた。

まだ意味不明な怪物に殺されるより人間に殺されたほうがマシだ

そう覚悟を決め目を閉じる。


「大丈夫か?」

彼から発せられた第一声は予想していたものとは真逆の私の身を案じる言葉だった


「は...ぇ...?」

予想外のセリフに思わず声が裏返る。

「は...はい!大丈夫です!元気ぴんぴんですッ!!」

そういって腕で力こぶを作るポーズをする。

何をやっているんだろう私は...動揺のあまり謎のテンションになっている。


私の奇行をみて不思議そうな顔をした彼は外套を翻し、

「なら、いいんだ。」

とだけ言葉を残し去ろうとする。

しかし、そこで私は彼の後ろ姿をみて既視感に気づく。


「あなた、どこかで...?...あっ!!」

アカリが昼休みに見せてくれたSNSにあげられた写真、黒衣の装束の謎のハッカー“RAVEN”

その人であることに気づく、

「“RAVEN”...?」

おもわずそう呟いてしまう。


そうすると彼は立ち止まり、肩越しにこちらを見ながら言う。

「....俺は“RAVEN”じゃない」

そういう彼の声は少し苛立ちや怒りを感じた。


緊迫した空気が一瞬流れる。

しかし、その静寂を破ったのは彼のつけているイヤホンからだった。

「おい、ドーマッ!サツが来てるぞ!油うってねぇで終わったらさっさと撤収しろやッ!!」

あまりの大きな声でドーマと呼ばれた彼はイヤホンを付けているほうと逆方向に首を傾ける。


「ヤタ、こっちはイヤホンなんだからデカい声をだすな、イヤホンをしてる意味がないだろ」

彼は頭を抱えながら言うがイヤホンからまた大きな声が入る。


「うるせぇ!てめぇが無理やり飛び降りるからこっちはドローン一機ダメにされてんだぞッ!!」

イヤホンからは、彼を罵倒する言葉が次々に飛んでくる。

そのとき遠くからサイレンが迫る音が聞こえてくる、通話越しの相手もそこで冷静になる。

「まァ、いいからさっさと撤収しろ!ガラがそっちに向かってるからすぐに合流しやがれ!続きは帰ってからだッ!!」


「分かった、回収地点までの案内を頼む。」

そういい彼は再び歩き出す。


「あっ...あの!!」

立ち去ろうとする彼を思わず呼び止めてしまう。


彼は一瞬足を止める。

「ありがとうございました!!」

私は深々とお辞儀をし、精いっぱいの感謝を彼に伝える。

彼はそれを少し見て、またすぐ歩き出していってしまうのであった。

彼の背中が廃病院の暗い闇の中に溶けるように消えていくのを見送る。


廃墟に残されたのは、破壊された式神の残骸と遠くから聞こえるサイレンの音。


「....ドーマ」


誰にいうのでもなく、その名前を口の中でつぶやく。


彼は一体何者なんだろうか。



今日の夕飯は生ハムサラダと生姜焼きでした

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