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プロローグへの戻りかたがちょっと気持ち悪いかもしれないですがご容赦ください。プロローグの100メートルは探知範囲デカすぎるという意見があったので25メートルまで減らしました。
ーー心臓がはちきれそうだ、全身に汗がにじむ。
廃墟の奥に行くほど清掃がまだできていないのか、瓦礫やごみが目立ち足元が不安定になってくる。
肩越しに振り返ると、あの式神が迫ってきているのが分かる。
そのとき、背後からとてつもない轟音が聞こえる。
「ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
あまりの音に振り返り、私は立ちつくしてしまう。
あの清掃用の式神が、雄たけびを上げているのである。
ごみ箱になっているはずの蓋の部分をまるで口のように大きく開き、
その中から舌のような部位が露出していた。
さらに、キャタピラがあるはずの部位からは足のようなものが生え、腕も大きな巨腕へと変質していた。
「嘘ッ!?何アレっ!?」
本来の体積からはありえない変形を遂げているそれをみて、思わず声を上げる。
先ほどまでと違い、式神が意思を持って喋り始める。
「何故ゴミガ無クナラナイッ!」
口のような部位からでた舌を使い、瓦礫やごみをなめとっていくその様はまさしく妖怪といえる。
「キレイニッ...キレイニッ...!!」
そして式神は赤く光る目でこちらを見据える。
「人間ヲ排除スルゥッ!!」
そう叫ぶと廃墟全体の空気が震え、こちらの心臓を鷲掴みにするかのような圧力が押し寄せる。
私はそれを見て恐怖する、命の危機を本能的に感じる。
すぐにまた走り出すことを決意する。
ーー逃げなければ。
とにかくまずは外へ、出なければならない。
そう考え、真横にある割れた窓から私は飛び出す。
割れたガラスで足首を切ってしまったが今は気にしている暇はない。
しかし、私の予想と違って飛び出したその場所は、
この廃病院から抜け出せるような場所ではなく周りを病棟に囲まれた中庭だった。
手入れがされずに大きくなった低木が雑多にあり、身を隠すことくらいはできそうだった。
上を見上げると真上に満月が見え、囲まれた病棟がまるで私を囲む檻のように思えてくる。
あの月のように自由に空の上に揺蕩うことができたら、なんて感傷に浸る。
「ふぅ…」
一息つく間もなく、足首が熱く刺すように痛んだ。血が靴下を染め始めている。
治さなきゃ…
取り出したのは、市販の低級術式の紙.。
「術式起動…回復式」
紙がほのかに緑色に光る。温かい光が傷を包み込み、じんわり痛みが和らいだ。
これで怪我はなんとか大丈夫だろう。
だが、安堵は長くは続かなかった。
「術式ヲ検知、右後方25メートル」
「嘘っ!!バレた!?」
心臓が跳ねる。式神は、私の術式も動きも、すべて感知できるのだ。
迫る気配に、私は再び走り出す。
息が切れ、鼓動が耳をつんざく。
だが相手は生体をもたない機械。こちらがどんなに疲れていようとお構いないのだ。
不意に視界が反転する。
瓦礫の間に足を取られ、転んでしまったのだ。
「私、がんばったなぁ」
式神を相手によくここまで逃げたものだ。
もしこの状況から逃げおおせてたらアスリートを目指してもいいんじゃないかと、
何度か頭によぎったものだ。
そんなことを考えてる間にも式神があと数歩のところまで迫っている。
しかし、もう私は動けない。
動けたとしても攻撃をかわすこともできないだろう。
式神の巨駆が大きな腕を振り上げる。
私は次の瞬間を悟り目を閉じる。
「・・・・・・・?」
覚悟を決めてから数秒経ったと思う。
一向に腕が振り下ろされる様子がない。
私はもう死んでいるが、目を開けたら天国で痛みもなく死ねたのでは?
という最悪の楽観視とともに恐る恐る目を開ける。
最初に目に留まったのは夜を飲み込むような「黒」
真っ黒な外套を着た男が私の前に立っていた、彼の前で式神は腕を振り上げたまま
硬直していた。
「術式介入成功」
ルビの使い方がやっとわかったので、ほかのところも修正しております。




