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ホッとしたのも束の間、議題は別の話題に移る。
《議題二、仮称・RAVENについて。報告者、シン・イヌガミ》
そう、議題はRAVENについての報告に移ろうとしていた。
脳裏に浮かぶのは、昨夜の黒衣の外套をまとった姿。
Y.O.K.A.I化した式神と対等に渡り合い、それを破壊した謎の多い人物。
イヌガミが再び資料を手に立ち上がる。
「はい、今回の件で確認されたRAVENについてですが、容姿、能力の類似性から同一人物とされていましたが、今回の戦闘の解析データから別個体だと判明しました」
ユエインから『負けイヌガミが逃がした奴ネ!』と一瞬声が入ったが通話の向こうからガンッと音がしてすぐに制裁が入ったことがわかる。
イヌガミは咳払いをして続ける。
「これに伴い管理A.Iは対象の名称を“鵺”とし、危険指定対象にすることを決定しました」
危険指定対象…?人助けをしてる彼がどうして?
「あの...鵺さんってなにか悪いことをしたんですか?」
思わず口から漏れた問いに、会議室の視線が一斉にこちらに集まる
『悪いこと、ね』
カラン、コロンと口の中で飴玉を転がすような音を立てながらリク・ネズハラは答える
『悪いことはしてないよ、その鵺さんは、本来ブラックボックス化されてるはずのY.O.K.A.Iの術式に干渉してるんだ、その干渉の仕方を公開すればY.O.K.A.I化の未然の対処ができたりするかもしれない、逆に式神をY.O.K.A.Iに変える方法も知り得てるって可能性もあるかもね』
彼の声色は少し怒気を孕んでいるようでだんだんと暗くなっていくのが分かる。
『つまり、国家の転覆だって狙えるかもしれない能力さ、一般人が持ってていい力じゃないってことは確かだね』
最期にひと際明るい声で彼が放つ言葉はその抑揚とは裏腹に重い意味を持っていた。
「ハルちゃんは彼に恩義を感じているんだろうけど、それ以上に危険な人物ってワケさ」
デイヴィッドが隣で椅子に深く身体をもたれかからせながら呟く。
「.....」
胸の奥がちくりと痛む。
自分を助けてくれた人が目の敵にされているようで嫌な気持ちがこみあげてくる。
彼はそんな人じゃない!と声を大にして言いたいが昨夜あったばかりの人物の内面を私がどうして知り得ようか、悔しい想いを喉の奥にしまい込み、出ていかないように唇を噛む。
「少々、話が逸れましたが、報告は以上となります。」
イヌガミは場の空気を汲んでか報告を淡々と終了し、資料をまとめ、席に着く。
《これにて本議会は閉会といたします。》
重苦しい沈黙が会議室に漂う中、管理A.Iの声が再び響く。
《なお、新任の陰陽師へのR.Aの支給を行います。対象者ハル・ミカド。補助にエンリ・サルカワ、ブリギッテ・ヴァーグナー。三名は残り、地下トレーニングルームへ向かってください》




