十二
キャラがいっぱい出る回です。非常に読みづらいかもしれないですご容赦ください。
たくさんキャラを動かすのが難しくて時間がかかってしまいました。
『』で喋ってるキャラは通話越しのキャラです
廊下の突き当りには、重厚な扉が鎮座していた。
表面は木目調に見えるが、近づくにつれてそれが木を模した別の素材であることに気づく。
黒く硬質な光沢がただの扉ではないと告げている。
扉の前に立つと緊張が再度戻ってくる。
喉がからからに渇いているのに、唾を飲み込む音だけがやけに大きく響いた。手のひらにじっとりと汗がにじみ、扉に触れる指先がわずかに震える。
「深呼吸」
と横から肩をたたきながら小声でデイヴィッドが言う。
私は言われるままに、息を吸って吐き、心を落ち着ける。
私の横で彼も同じように深呼吸をしている。
「あなたがする必要はあったんですか...?」
「ここに来ると緊張するもんなのよ」
彼は両手を扉に付き左右に開く。
その先に広がっていたのは、長いテーブルが中央に伸びる広大な会議室だった。
テーブルの両脇には椅子が計12個、対になる様に置かれており、すでに何人かの陰陽師たちが座っている。
姿の見えない者もおり、壁面に埋め込まれたモニターにはVOICE ONLYと書かれた文字が映し出されていた。
どうやら任務で不在の者たちが通話のみで参加しているらしい。
先ほど別れたエンリ達三人もすで椅子に座っていた。
全員の視線が扉から入ってきた私たちに向く。
その圧力で足がすくみそうになる。
デイヴィッドがいつもの調子で軽く片手をあげていった。
「皆さんお待たせしました。新人のお披露目と、ちょっとした審判をもってきましたよ」
「...壮健そうだな、シェパード・ドッグ」
低く落ち着いた声が響く。
長机の最奥に腰かけている一人の老人が話しかける。
雪のように白い髪を後ろで束ね、無駄な肉のない体は年齢を感じさせないほど精悍だ。
鋭くも穏やかな眼差しが部屋全体を包み込むようにめぐる。
彼はソウゲン・シシザキ。
陰陽師の中でも実質的なリーダーに当たる人物だ。
「おお、シシザキ翁。ご無沙汰してますなぁ」
「翁などと呼ぶな、まだ老い先は長いつもりだ」
デイヴィッドの言葉に苦笑を含んだ声で言い返すが、その目はすぐにこちらへ向けられる。
全身が強張る。
その眼差しには圧迫感よりも、不思議と逃げ場のない誠実さが宿っている。
まるで体の内側まで見透かされているような感覚に、私は思わず背筋を正す。
「君がハル・ミカドだな」
シシザキの問いに私は小さく頷くことしかできない。
彼は私を一瞥するとすぐに向き直る。
「では、皆揃ったようだ、会議を始めるとしよう、君たちは空いている席に座り給え」
私とデイヴィッドは言われたように席に腰を下ろす。
それを確認したシシザキが頷き言葉をつづける。
「管理A.Iよ、出席確認を頼む」
シシザキがそういうと壁面に設置されたスクリーンが淡く光り、無機質で冷たい女性の様な声が響き渡る。
《了解しました、出席確認を開始します》
《エンリ・サルカワ》
「はい」
《ルル・シラトリ》
「ん」
《ブルーノ・マタドール》
「愛と情熱の男、ここに在り!」
《シン・イヌガミ》
「...はい」
《ブリギッテ・ヴァーグナー》
「アタイはここだよ!」
《リュー・フェイロン》
『いるでござる』
《リュー・ユエイン》
『ワタシもいるアル』
《リク・ネズハラ》
『いるよー』
《カゲトラ・ギンジョウ》
『オウッ!いるぜッ!』
《ソウゲン・シシザキ》
「ここに...」
《デイヴィッド・シェパード・ドッグ》
「いますよ~」
最期にひと際静かな間をおいて声が響く
《ハル・ミカド》
突然、名前を呼ばれ、鼓動が早くなる
「...はい!」
《出席確認完了。これより本議題に入る。議題一、ハル・ミカドの処遇について。報告者、シン・イヌガミ》
青年はすっと立ち上がる。
細身でスタイルのいいモデルのような体型の男性。
綺麗な顔をしているが眼鏡の下の目には隈ができており。
少しやつれているような印象を覚える。
青年は手にした資料を几帳面に揃えながら口を開く。
「はい、報告書にも記載の通り、今回ハル・ミカドは民間人二名を伴い調査任務に赴き、これを危険に晒したとして―――」
「質問いいかいッ!」
ドンッ!っと長机が鳴動する。
机を思い切り叩き、大柄で筋肉質な女性、ブリギッテ・ヴァーグナーが立ち上がり、がっしりとした腕を組む。
「ヴァーグナー、まだ報告は始まったばかりじゃないか、もう少し喋らせてくれ」
イヌガミは眉をひそめ、抑えた声で返す。
「いいじゃないか、アタイは今回の件ずっと不服だったんだ。あのコまだR.Aも支給されてないんだろ?」
「ああ、だけど前例を作れば規律が崩れる」
「調査任務だったら、危険ってほどじゃないだろ。それに、お前が現場に行った時にはすでに倒されてたんだろう?それに報告書にあるRAVENとか言う――」
『そうだぜ!!RAVEN!!』
通話越しにカゲトラ・ギンジョウの声が割り込む、耳障りなほど大きな声に何人かが眉をしかめる。
『イヌガミ!お前取り逃がしたんだろッ!?』
「っ....!」
イヌガミの表情が僅かに歪む。
『負けイヌガミは自分がRAVENを捕らえられなかったからイライラしてるアル。だから新人イビリに必死ネ…痛ッ!何するアル、お兄ちゃん!』
『言葉が過ぎるでござる。…仲間に負け犬なんて言葉使うなでござるよ』
通話の向こうでは、妹のユエインに兄のフェイロンが低く諭す声がする。
「まったく!新人の処罰だなんて!花のように美しいハル嬢に似合う話題ではない!!」
ブルーノがバラを掲げ手を広げる。
「私は彼女を擁護する!!むしろ罰などではなく祝福を与えるべきだ!!」
「....はぁ」
隣のエンリが深いため息をつきこめかみに手を当てる。
「あなたは黙っててください。そのバラも胸にしまって」
「だがしかし!」
ブルーノは一歩も引かず、私に熱い視線を送る。
「運命の出会いを果たした私とハル嬢が、ここで引き裂かれるなど―――」
そんな出会いは決してした覚えがない。
「うさぎさん、悪いことしてないとおもうよ?」
ルルがウサギのぬいぐるみを抱きしめながら呟く。
無邪気な一言が騒然とした空気にぽっかり穴をあける。
ブリギッテが思わず笑い、ブルーノは胸を押さえて天を仰ぐ。
「くぅ~...天使の証言!ルル嬢!君は天使の生まれ変わりだ!」
『ほんとに騒がしいなぁ、僕もう通話切ってもいいかな?』
先ほどまで黙っていた、リク・ネズハラがめんどくさそうに発言する。
みな思い思いに自分の言いたいことだけを言い。
話が一向に進む様子を見せない。
会議は踊る、されど進まず。とはこういことなのだろうか。
「静まれいッ!!!」
轟くような一声が、雷鳴の如く会議室を揺らす。
全員がピクリと肩を震わせ、発言を途切れさせる。
シシザキの眼光が次々と席を渡り歩く。
「今はハル・ミカドの処罰を決める場だ。理を持って判断すべき時にあるのだ」
沈黙が訪れ、室内の空気がピンと張り詰める。
その静けさを破ったのは、デイヴィッドだった。
口元にタバコを咥え直し、ふっと煙を吐きながら気軽な調子で言う。
「なら、こうしましょうか。僕ら陰陽師で投票をすればいい。シンプルかつ公平だろう?」
「投票だと...?」
イヌガミが目を細める。
「そうさ。処罰するか否か。規律を重んじるなら厳罰を、成長の余地を見込むなら寛容を。それぞれが一票を投じればいい」
《提案を受理。公平性の観点より妥当》
室内のスピーカーから、機械的な女性の声が響く。
それは管理A.Iのものだった。
「管理A.Iが認めた、ということか」
シシザキが目を見開きモニターを見る。
シシザキは頷き改めて全員を見渡す。
「投票を執り行う。各々、己が理と信念に従い答えを示せ」
投票が始まると室内に沈黙が流れる。
長いテーブルを挟んだ彼らは、互いに視線を交わすこともなく黙り込む。
各端末に投票画面が表示される。
「処罰」「免除」二択を選ぶだけのもの。
だが私にはその簡単な画面が、まるで運命を左右する信託のように見えた。
室内に冷たい声がながれる。
《集計が完了しました、モニターをご覧ください》
そして、画面に数字が浮かび上がる。
処罰:5 免除:6
思わず深くため息をつき、安堵の息が漏れ出す。
心臓の鼓動も少しずつ正常に戻っていくのをかんじる。
緊張から解放され、肩の力を抜いた私に隣に座るデイヴィッドが声をかける。
「よかったじゃないの、これで少しは気が楽になるねぇ」
「ありがとうございます...」
小さく頷き、口に出すと胸の奥にあった緊張と不安が少しずつ溶けていくようだった。
デイヴィッドは満足そうに深くタバコを吸いこみ、そして煙を吐き出し、少し真剣な顔で告げる。
「じゃあ、改めて言わせてもらおう。ようこそ、マザーボードへ、十二人目の陰陽師、ハル・ミカド」
こうして、私の陰陽師としての第一歩が静かに幕を開けた。
今日もそうめんでした、喉治らないです。
―――←これの出し方やっとわかりました!!




