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先日停電で消えた分を書き直しました、誤字脱字があるかもしれません、あれば報告お願いします。
車が静かに広大な敷地内に入る。
外には大きな鳥居と巨大な構造物がそびえ立っている。
車窓から見えるのは森に囲まれた広大な敷地。
巨大なガラスと金属で構成された近未来を思わせる建物。
森と機械、過去と未来、人工と自然の完璧な調和がそこにはあった。
かつて、伊勢神宮と呼ばれる場所があったらしいここは、荘厳な雰囲気が漂っている。
車がゆっくりと停車し、ドアが自動で開く。
「降りてください」
エンリが短く告げる。
私はエンリの指示に従い車から降りる。
一歩外に踏み出した時、新鮮な空気が鼻を抜け喉を通る。
まるで透き通る水を飲んだかのような清涼感が肺に満たされる。
私が車から降りると、鳥居の下の両脇に立つ警備員らしき二人がこちらに視線を向ける。
どこか神職を思わせる装束を着た彼らはその格好には、似つかわしくない小銃の様なものを肩から下げている。
その異質さを見たときにここは神聖と軍事の境界にある場所なのだと、嫌でも理解させられる。
「じゃあ、案内しようか」
デイヴィッドが軽い口調で言い、タバコを足元に落として踏み消す。
ああ、なんて罰当たりなんだろう、と心の中で口にする。
彼の軽薄さが、逆にこの場所から感じる不気味な威圧感を和らげてくれているように思えた。
デイヴィッドとエンリが鳥居に向かって歩き出す。
鳥居の真下に差し掛かった時、エンリがこちらに向き直る。
「ここで一旦立ち止まってください。」
彼女の言葉のまま、私は鳥居の下で立ち止まる。
次の瞬間、鳥居から無数の赤い光線が迸った。
「えっ?!なに?!」
それはまるで赤外線の網のように、足元から順番に這い上がってくる。
「っう…うう…」
靴、膝、腰、腹、胸元、そして顔へ。
目に見えない指で全身をまさぐられているような感覚に、思わず顔を歪める。
やがて光は収束し、どこかに設置されてあるであろうスピーカーから無機質な声が響く。
「通行ヲ許可シマス」と電子音と共にアナウンスが聞こえる。
「どうだい、驚いた?」
横で歩くデイヴィッドがこちらを向いて言う。
「あの鳥居は身体検査をするセンサーになってるんだ、認可されていない人や危険物を持ち込めば一発でオラクルに通知がいって、人が集まってくるのさ」
デイヴィッドは顔を俯かせて頭をかきながら照れくさそうに続ける。
「僕は一度、認可されていないライターを持ち込んで通報が言って大変な目になったことがあるよ…」
ハハハ、と乾いた笑いをするデイヴィッド。
「一度じゃないでしょう、この間も野良猫を抱えて入ろうとして引っ掛かってたじゃないですか…あなたはもう少し自覚を持ってください」
エンリは頭を抱えながら言う。
デイヴィッドは笑って誤魔化しながら続ける、
「まぁ、鳥居を抜けたんだ、あとはこちら側の世界に踏み出すだけさ」
彼はどこか感慨深いような面持ちでこちらに向き直って両手を大きく広げて言う。
「さぁ、歓迎するよ。ハル・ミカドちゃん、ようこそーーマザーボードへ」
デイヴィッドは新たにタバコに火をつけ、にやりと笑う。
エンリはため息をつきながらそのまま先に歩き出す。
「...マザーボード?」
私は聞きなれない言葉に思わず復唱してしまう。
「そう、誰が呼んだか、「マザーボード」我らの母、オラクルのお膝元、A.Iと人類の境界線。君は今、そこに立つことを許されたわけだ」
なるほど、管理A.Iのことをネットスラングで母親というのを聞いたことがある。
それと、国境を意味するボーダー、キョートとトーキョーを隔てる場所にあるここにはピッタリの名前というわけだ。
私は言葉の意味を分析しながら二人に続いて歩き出す。
さまざまな建造物があり、自分がこれからどこに向かうのかわからない。
建物の外観をみると機械的でありながら不思議と神社だった面影がみえるようで妙な感覚に陥る。
きょろきょろと見渡す私に気づいたのかエンリが指をさしながら教えてくれる。
「あそこが私たち陰陽師の拠点です」
エンリが指をさすそこには、この場所で一際大きな建物が建っていた。
一見すると普通のビルのように見えるその建造物にはぐるりと一周、大きなしめ縄がされており、入り口の前には中央に先ほどより一回り小さな鳥居が設置されていて、両脇には番犬を思わせるかのように狛犬が鎮座していた。
ビルを見上げながら、ここに来た意味を再確認する。
これからここで罰を受ける、その覚悟を胸に私は一歩ずつビルに向かって踏み出していった。
エアコンがいつの間にか付いてて、朝起きたら喉がガッサガサでした…




