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声と覚悟で彩られた殺戮



「⋯冗談じゃ。砂にされては堪らぬからのう。ふふ、お主のその顔を見れただけでも良しとするかのう。ほれ皆のもの、ライオネルの奥方に負けぬよう、どんどん倒すのじゃ」


と、周りの者たちに発破をかけると、王太子は、相変わらず、消火のための王立の魔道士と紅蓮の竜で暖をとる大猫を引き連れ討伐に戻っていってしまった。


 ライオネルは、自分の頬を触りながら、ずいぶん前に精神的疲労から『顔がおじじ』になってしまい王太子に笑われたことを思い出していた。 



 離れたところでそのやりとりを見ていたミレイユは、自分の能力なのに上手く扱えないことに、落ち込んでいた。


(お父様は、魔法の扱い方についてなにか仰っていたかしら⋯)


 ミレイユは、父の姿を記憶の中から手繰る。


(⋯ダメだわ。素晴らしい素晴らしい、て魔法自体を褒めていたお父様ばかりが出てくるわ)



 父が言っていたことは、感謝することだけだった。


 自分が生まれたこと、産んでくれた両親へ、自分を育んでくれた環境を。自分の周りに起きるどんな事でも。


 辛いことでも悲しいことでも、それは運命として自分を形づくるものだから、誕生自体が何かを成すために生まれてきたのだと。


 だから、感謝の気持ちを忘れないようにと。



(辛いことや悲しいことが起こっても感謝しろ、だなんて無理なことだわ⋯)


 第一それを言っていた父は、罪を犯して投獄された。

 母が亡くなり、程なくして父も死んだ。


(父は感謝したの――?自分の妻が亡くなったことを⋯)


 それはないと思いたい。母が亡くなった後、すぐに儚くなったのだ。


(でも、ある意味、お父様の仰っていたとおりだったかも⋯。だって、そうじゃないと私は、ライオネル様に出会えなかったわ⋯)


(ならば、私はライオネル様のためになにかを成したいわ。せっかく魔法が使えるようになったのなら、ライオネル様のために使いたい⋯。ライオネル様が守っているものを、少しでもお支えしたいわ)



『――君の想いは受け取ったよ』


 どこからか声がした。


 振り向くが誰もいない。


『君の能力は、他者のためのものだ。君は何度も自分を殺したからね。自分のためには使えないよ。僕たちは君を何度も助けたけど、君はその都度、自分を殺した。それが君の望みだったから⋯』


 そう、声はミレイユに教えた――。


『君の望みを叶えたい。そのために僕たちは呼ばれたのだから――。でも、君は僕たちを放棄した。だから、覚えておいて。自分のために使うことは決して出来ないことを』



「⋯わかったわ」


 瞬間、ミレイユの身体から溢れるように魔力が放出される。


“ただ、ライオネル様のためだけに――”


 まるで、絵空事のようにミレイユの身体から放出されるのは、ほぼ全ての属性による攻撃魔法の炸裂だった。



 ライオネルと対峙する魔物は、炎で塵と化し、兵士らが対峙する魔物は一瞬で風の刃で斬り裂かれ、騎士ら王立の魔道士らが対峙する魔物は、氷漬けとなり破壊された。

王太子が対峙している魔物は、砂と化し――


 全て、またたく間に殲滅された。



 誰もが目の前で一瞬の内に、殺戮された魔物に声を失った。


 ⋯⋯王太子を除いては。


「⋯よもやこれほどまでとはのう。ライオネルは、魔物の子と言われておったが、その奥方は魔物そのものじゃな」


 そう独りごちると、上を見上げ、声高々とライオネルを呼ぶ。


「見てみよ!ライオネル、我でも目にしたことない大物のお出ましよ!」


 楽しそうに森を指し示す王太子。


 その指す指先の方向に、高々とそびえる木々よりもまだ高い化物が姿を現した。



「まてまてまて⋯」

「もうなにがなんだか、わかんねぇよ」


 部下たちが口々に森に目線をやり、そう口にする。


出てきたからには倒すしかない。


 聖女がいなくては、結界も張れない。


「皆のもの!殲滅あるのみじゃ!心してかかれよ!」


 王太子の嬉々とした号令が森に木霊こだました。


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