剣と指導と愛の妙薬
森に沿って馬を走らせ二、三往復。
ライオネルがバッサバッサと魔物を斬りまくってるせいで、ほとんどの部下たちは、魔物の処分に回っていた。
「閣下も馬もすげ〜なぁ〜」と兵士は呑気にその様子を眺めていた。
ライオネルは、森沿いの中でも特によく魔物が出没するポイントを選んで馬からおりると「よく頑張ったな」と馬を褒めて解放してあげた。
森から這い出てきた魔物を二、三体切ってその場に捨て置く。
(ふーむ、やたらと出てくるな。やはり隣国は条約なんぞ無視して、森の中まで攻撃しているのかもしれん)
さっきから出てくるのは逃げ足の早い、弱小の魔物ばかり。
汚れた剣の血を拭いながら、遠くで戦う他の兵士の様子を眺める。
(よしよし、ちゃんと三人一組で連携しているな)
斬り捨て焼却した数が集中している所に、事前に部下達に待機を命じていたからか、迎え撃つように、連撃をし、難なく倒していた。
決める際には、
「獣道でもあるんすかね?魔物道?」
と、部下の一人が言っていたが、単純に人間でも動物でも魔物でも、進みやすい道を選ぶのだろう。
そんなことを思い出していたライオネルの耳に、ザッザッザッ!と草をかき分ける音ともに現れた魔物は、先ほどよりは体格が大きい。
体格の割には跳躍が高い。
飛びかかってくるところを、ライオネルは後ろに退き、着地する脚を狙い、柄を持ちかえて切先を水平にずらす。
切断。
脚を失い、倒れる魔物の勢いを借りて、そのまま柄を持ちかえ、下から切り裂く。
両断された魔物から血が吹き出、臭いが漂う。
(風魔法が使えたら、森に向かって吹かせるのだがな)
効率的に討伐をしたい、ライオネル。
臭いでおびき寄せたいが、どうしても臭いが散らばる。
(まあ、数さえ積めば臭いも強くなるだろう)
その後も、森から出てくる魔物を斬り伏せる。
一体―。二体―。三体―。
その頃になると屋敷にいた部下たちが合流してきたので、先に戦っていた部下たちと順に交代させるように命ずる。
「閣下のとこだけ、死骸がてんこ盛りですが、もう焼却処分して良いっすかね?」
と聞かれたので、焼却処分の間、その臭いにまた釣られたのか魔物がやってきたので、斬り伏せた。
「閣下の傍だとキリがないっすねぇ〜」
「まぁ、そうなるようにと、こちらから仕向けたのもあるがな」
と言うと、処分する時は、風魔法で素早く細断してから、塵も残さぬよう焼却することを新たに命ずる。
ライオネルも部下数人に後は任せて、監視塔へと上がった。
部下たちの働きを眺めつつ、ふと思い出して、懐を探るとミレイユから渡された煎じ薬の小瓶に指が触れる。
取り出して、小瓶に貼られた文字を読むと『疲労回復の薬』と書かれていた。
書かれた文字の癖がミレイユらしさを思わせて、戦いの最中だと言うのに、愛しさと恋しさが募った。
「早く終わらせて、王都に迎えに行かねば、だな」
無事に、妻が王都屋敷に着くことを願った。
少しの休憩の後、部下が持って来てくれた、甲冑を身に着け、馬を呼び寄せ、一通り見て回り、一番苦戦しているところへと降り立った。
「「「閣下!」」」
「帰ったら、今日を課題にして、鍛錬を増やそうな」と声を掛けると
「「「はい!」」」
と、元気よく返事をされた。
(いつもはこう言うと嫌がるものだが、戦場で己の反省点が見えたのだろうか?良い傾向だ)と、ライオネルも嬉しくなる。
部下が屋敷から持参して甲冑と共に渡された大剣握り、素早く一刀両断。
一瞬にして、三体斬り伏せた。
「こんな感じで、即断、即決、即退治だ」
と、教えると「「「それは、閣下だけです!」」」
と、返された。
部下たちに交代で休憩を取らせつつ、魔物を倒していく。
途中、監視塔に戻ると怪我人が運ばれていたので素早く治癒した。
馬を呼び寄せ、見て回る。
「お前にも苦労かけるな」と馬に声をかけたが、馬は平然とした様子だった。
これぐらい、なんともないらしい。
怪我をした部下たちを、見つけると治癒して回った。
ついでに苦戦している所に降り立ち、剣を振るう。
その繰り返しで、さすがにライオネルからも疲労の溜息が出た。
先程のミレイユからの薬を思い出し、小瓶の蓋を開けて、恐る恐る、一口、口に含んだ。
瞬間、疲労が消し飛んだ。
「なんだ、これは⋯すごいな」
思わず声が出て、まじまじと小瓶の中にある液体を見つめた。
ついでに己の下腹も確認したが異常はなかった。安堵する。
はて?部下が持ってきた荷物の中にミレイユの薬はあっただろうか?もしあれば、休憩の際、皆に飲んでもらわねば、とライオネルの心に決めた。




