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魔物の実を服用してみよう※下ネタ多

※下ネタにご注意ください



 ミレイユは早速、持ち帰った“魔物の実”である赤い実を、洗って薄く切って、干してみることにした。


 包丁を使うとなったら、奥方付き侍女のセラやら、他の皆が心配したが、「全部私一人でやりたいの!お願い!」と、熱心にお願いすると、皆折れてくれた。


 少し申し訳ない気持ちだったが、切り替えて、

“さあ!やるぞ!”

と意気込み、いざ侍女が案内する調理場に行くと――なぜか、夫で辺境伯のライオネルがいた。


 はて?お腹が空いたのかしら?と珍しい人物に首をかしげると、ライオネルから「ミレイユが刃物を持つと聞いて来た」と言われた。


 まさかのミレイユが怪我をした時の回復要員だった。


「いえ、あの、そんな、大したことでは⋯」


 ミレイユは恐縮し、ライオネルには部屋にお帰りいただきたかったが⋯。


「なに、遠慮することはない」と、石のように動かない。いや、大きさからして、岩のよう。


 ハラハラする侍女やライオネルに見守られながら、ミレイユは、慣れない手つきで薄く赤い実を切っていく。


 ⋯背中や手元に視線を感じて落ち着かない。


 特にライオネルは、包丁の刃を実に入れる度に「ゆっくりだぞ、ゆっくり⋯そぉーと、だ」と言ってて正直、やりづらい。


「はて⋯⋯その実、どこかで見たような⋯」


 じっとミレイユの手元を見ていたライオネルが、ぽつり、と呟いた。

 その言葉に、ミレイユの包丁を持つ手が、止まる。


(そうだわ。ライオネル様は村によく行ってらっしゃるもの。きっと、赤い実が魔物の実って分かってしまうわ!どうしよう⋯、子供たちとないしょだって約束してるのに⋯)

 

 ミレイユは、焦った挙句⋯、


「ライオネル様、先程から少々耳障りなので、あちらのお席に座ってお待ちいただけますと、大変ありがたいのですが」


 自分の手元を見ながら、ライオネルに、とんでもないことを言ってしまった。


「う⋯、うむ、わかった⋯」


 ライオネルの声は、か細く消え入りそうだった。


 ミレイユに傍で壁のような存在のライオネルがいなくなると少々淋しさを感じたが、ミレイユは(言った言葉は取り消せない!)と心を鬼にして、赤い実を切る作業に集中した。


 すべて切り終え、侍女から拍手を貰い、振り向いた時には、ライオネルの姿は無かった。


「あ⋯」


 最後に聞いたライオネルの消え入りそうな声が、ミレイユの心に罪悪感として残った。


 侍女には他の仕事のお手伝いに行ってもらって、ミレイユは一人になると、心ここにあらずで乾燥までの工程を進めた。


 切った実がカラカラに乾くまで、まだ日はある。


(せっかく心配で来てくださったライオネル様に、ひどいことを言って傷つけてしまったわ⋯)


 夏の風が、ミレイユの結わえた髪をいたずらに揺らす。


 風が吹くと雨が降る前兆だったりする。


(どうか、雨が降りませんように⋯)ミレイユは空に祈った。


 ミレイユが私室に戻ると、セラがお茶の用意をして待ってくれていた。


 セラが声を掛ける前に、ミレイユは、ぽすり、とセラに抱きつき、肩に頭を預けた。


「ライオネル様にひどいこと言っちゃった⋯」


 それからポツリポツリと、先程あったライオネルとのやりとりを話すのだった。



 ライオネルは、ミレイユが無事に赤い実を切り終えたのを見届けると、傷心ながらも執務室での仕事を片付け、傷ついた己の心を奮い立たすため、鍛錬場へと訪れていた。


「ぜーったい、また奥様絡みだぜ」

「朝、機嫌良かったのに、今魔王だぜ」

「お前!次相手してこい!」

「いやだ!もう、さっき回復魔法かけられるぐらい、しごかれたし!」


 鍛錬場では、お前が行け、お前が行けの嵐。


「そこー!!私語をするほど余裕があるようだな。良いだろう。全員まとめてかかってこい」


「いや、かかりたくありません」

「も、じゅーぶんすぎる程、閣下の手ほどきは受けました」

「閣下、休憩しましょ」

「俺、モーリスさんに頼んでお茶菓子持ってきます」


 そう言うと、一人の部下が脱兎だっとのごとく駆け出して、鍛錬場の出入り口から出ていこうとしたが、突然、クルッと方向転換して、


「閣下!奥様が参りました!!」


 と、ライオネルに告げた。


 ミレイユは、セラを連れて差し入れを持ってきていた。


 部下たちは急いでその場を離れ、休憩の準備のため鍛錬場から出ていく。


 ミレイユは、ライオネルを壁伝いに置いてある椅子に座らせると、


「前にセラがいただいたという柑橘の入った焼き菓子が、実はライオネル様の好物と家令殿に伺いまして⋯。セラや料理長にも協力していただいて作りましたの」


 頬赤らめ、そう話したあと、ミレイユは焼き菓子をひとつ包み紙に包んで、そっと持ち上げると、


「ライオネル様のために作りましたの。お召し上がりになっていただけますか?」


と、ライオネルに差し出した。


「いただこう」


 ライオネルの優しい声音に、ミレイユはホッと胸を撫で下ろす。


「それと先程、酷いことを言ってしまい、申し訳ございませんでした。ライオネル様を不用意な言葉で傷つけてしまいました」


「いや、良いのだ。ミレイユの邪魔をした私も悪い」


「もう、傷ついてません?」


「ああ」


と、言うと焼き菓子を持ったままのミレイユを、ライオネルは己の膝に抱きかかえると、


「ミレイユが手ずからに食べさせてくれたのなら、私の機嫌はもっと良くなる」


と、言うのだった。


 部下たちが休憩用に使う家具を運び入れるため、鍛錬場に戻ってくると、すっかりライオネルの機嫌は、良くなっていた。



 ミレイユを膝に抱えてイチャイチャしているライオネルのその様子を眺めながら、部下の一人が


「誰か器用な奴、ここに奥様そっくりの人形作って置いとこうぜ〜」


と、言うともう一人が


「お前、そんなの作った日にゃ機嫌が良くなるどころか“不埒者ふらちものー!”て地獄を見る羽目になるぜ⋯」


と言うと、部下たちは溜息を吐くのだった。



 ライオネルの機嫌も良くなり、雨も降ることもなく、すっかり赤い実はカラカラに乾燥した。


「いよいよね!」


 ミレイユはそう言うと、乳鉢の中に乾燥した赤い実を割り入れ、程よい量になるとそれを乳棒ですり潰して、粉にした。


「どうしましょうかしら?とりあえず、煎じて飲んでみましょうかしら?」


 ミレイユはブツブツと独り言を言いながら、乳棒を回す。


(でも、今飲んで、もし私のお乳が噴出したら――きっと、セラや他のたちをビックリさせてしまうわ。それに胸も大きくなったら息が止まるかもしれないし⋯)


 ミレイユは、大きく膨らんだ胸と服で呼吸が出来ず、窒息死する己を想像した。


(試すなら寝る前ね!寝衣なら胸が大きくなっても苦しくないわ!お乳はライオネル様に飲んでもらいましょう!私の胸がお好きなようですし)


と、ミレイユがとんでもない事を考えていようとは、ライオネルは知る由もなかった。


 残りの実も粉にして、小瓶に移すことにした。

 実験は始まったばかりである。


 さて、夜である。


 ミレイユは、事前に赤い実を煎じて移し入れた小瓶を寝室へと持ち込んだ。


 ライオネルが寝室に入ってくる前に、それを一気にあおる。


 「味は⋯結構、美味しいかも」


 ヤギが気に入るのも分かる気がするミレイユ。


 寝台に腰掛けると、そっと、自分の胸を寝衣越しから触ってみる。

 先日見たヤギの乳のようには、パンパンに膨らむこともなさそうな?


「うーん⋯」と自分の胸を揉んでみる。

 いつもより少し張ってはいるような?


 寝衣が濡れている形跡もない。

 

 ミレイユは、己の胸をモミモミ揉みながら「うーん」と、首を傾げていると、


「⋯なにをしているんだ?」


 自分の胸の変化ばかりを気にして、ライオネルが入ってきたのに気付かなかったミレイユは、振り向くと、


「あ、ライオネル様に、お乳が出たらお飲みいただこうと思っておりましたの」


と、言うとニッコリと微笑んだ。


「は?」


 ライオネルは、ミレイユの発言が理解できず、固まった。


(まあ、今日のライオネル様は良く岩になられるわ)


「⋯⋯ミレイユ、母から出る乳は、父が飲むものではなくて、赤子が飲むものなのだが⋯」


 ライオネルも、混乱していて自分が何を言っているのか分からない。


「そうですね、でも今は赤ちゃんはいませんし」


「そ、うだな⋯、乳も赤子がいないと出るもの、でもないぞ」


「⋯それもそうですわね」


 ミレイユは、(ならば、赤い実はどこに作用するのかしら?)と思うのだった。


「まだ、赤子が出来たのかも分からぬ内から、乳は出ないもの、というのを君は、もしかして、知らなかったのか⋯?」


 閨事も知らなかったミレイユ。

 もしかしたら、と思い、恐る恐るライオネルは、ミレイユに確認した。


「いえ、知ってはいましたが、なんとなく⋯」


 子供たちと内緒にしている手前、本当のことが言えないミレイユは、歯切れの悪い答え方をした。


(それにしても、赤ちゃんて作るものって教わったけど、出来るか分からないものなのね)


 ミレイユはまたひとつ、新しいことを覚えた。


 いつの間にか、ライオネルが近くに来ており、そのまま寝台の上へと導かれた。


「君は、王命をたずさえて来た。もうすぐ一年が経つ。夫婦ひとつとなった今、君の焦る気持ちも分からなくはないが、もう少し気負わずに過ごしてほしいと、私は願っている」


 ライオネルに両手を包まれ、そう言われる。


「しかし、私は君の夫だ。ならば、君の気が済むまで、私も励むよう努力しよう」


と、言うと、そのまま押し倒された。


「あの⋯ライオネルさま⋯っ」


 ミレイユは、その夜を境に、ライオネルの愛の深さとしつこさを知ることとなる。



 それから程なくしてミレイユに月のものが来てしまった。


 家令が目に見えて、落ち込んでいたが、ライオネルも心配げだったが、どこか嬉しそうだったことに、ミレイユは不思議に思った。


 月のものが来ると赤子は出来ないらしい。


 そう、セラから教えられた。


(赤ちゃんを作るのって難しいのね)


 ミレイユは、頭の中で赤子をコネコネと形成する様子を思い浮かべた。


 いつもより月のものの量は多かった。


 セラから病気かなにかか⋯と、心配されたが女医に診てもらったが、大事無かった。


「王太子様が立太子された際、女性でもお医者様になれるようになったのですよ」と教えてくれた。


 聖女との輿入れを画策していた王太子が、未来の王太子妃となる聖女を診るであろう男の医者を強権で排除した、ということを国民は知らない。


(もしかして、血が増えたのって赤い実のせい⋯?)


 ミレイユはうーん、と首をひねるのだった。



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