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裂ける境界、砕ける誇り※閲覧注意・同性同士の描写あり/暴力・羞恥描写あり



 ライオネルは、滞在している部屋にいた。


 誰かが(たず)ねてきたので、扉を開けたのだが、(おとず)れたのはジャリールの護衛を筆頭(ひっとう)に昨夜、刺客(しかく)としてやって来た者たちだ。


 相変わらず、男たちは上裸(じょうら)に、女性たちも露出度(ろしゅつど)が高い。


 何故、今夜もライオネルが滞在している部屋を訪れてくるのか。


 しかも、今夜は堂々と訪ねてきた。

「手合わせをしましょう」らしい。


(おう)じよう」と、外に向かおうと、廊下に出るライオネルの腕を掴んで引き止めてきた。


 相変わらず、動作に隙がない。


「なにを」

する、と言う前にサライアの者たちから「何故部屋から出ていこうとなさるのですか!?」と、言われた。


「手合わせなら広くても、身体を動かすのなら障害物が邪魔だろう」

と、言ったが、「そこが良いのではないですか」と、返された。


(⋯いいのか?サライア人たちの感性はノルデリア人とは少々違うようだ)


と、思っていたところでライオネルは、はっと気づく。


(なるほど)


「あくまで実戦向けということか、面白い」


 ライオネルは、広間の中央まで歩くと肉弾戦用(にくだんせんよう)(かま)えを取る。


 ライオネルの構えを見てサライア人男女たちがヒソヒソと、サライア語で話し始めた。


『ねぇ、この人、“手合わせ”の意味、絶対勘違いしているわよ』

調度品(ちょうどひん)ぶっ壊しそうなぐらい暴れるんじゃない?』

『私、この人が両手広げて、回転してきたら余裕で吹っ飛ぶ自信あるわ』

『皆吹っ飛ぶだろ。でもなぁ〜、ジャリール王子に足止め頼まれてるし』

『頼まれた、ってより暗黙(あんもく)の了解というか利害一致(りがいいっち)というか』

『とりあえず、床にさえ引き倒したら、こっちのもんだ』


 サライア人達は、話し終えるとそれぞれ柔軟を始めた。


 隙を作って相手から先に襲わせる気なのか、サライア人たちの動きは読めない。


 ライオネルは、構えの状態でその様子を観察していた。


 護衛の男が前に出る。


「お待たせ致しまして、申し訳ございません。では、参ります」

と、言うやいなやライオネルの懐に飛び込むと、殴りかかってきた。

 初手の攻撃は、想定内なので軽く受け止める。


 受け止めた相手の拳をそのまま(つか)もうとしたが、素早く外されてしまった。


 その後も繰り出すサライア人の拳も蹴りも一つ一つは軽いのだが、繰り出すスピードは速い。

 応酬(おうしゅう)しようとライオネルも護衛の顔面に拳を突き出す。


 護衛が拳を(かわ)したところに、二発目を身体に叩き込もうとしたが、寸前で()けられてしまったので、素早く体勢を整え、下段から蹴りをかます。


 これもヒラリと跳んで避けられてしまった。


(うーむ、柔軟で見せていたが、関節が柔らかい)


 ノルデリアに戻ったら、辺境伯領の部下たちの関節の柔らかさを、一人ひとり確認しようとライオネルは、心に決める。


 その後も攻撃の応酬を繰り返し、先程と同じように護衛の顔面に拳を突き出す。護衛が拳を躱したところに二発目を身体に叩き込むが、案の定、寸前で避けられてしまう。先程と同じように素早く体勢を整え、今度は二段蹴りを(こころ)みた。


 下段の蹴りを躱したところに、上段の蹴りーー。

が、護衛の影に隠れるように後ろから別の男が跳躍(ちょうやく)した。思わずライオネルは、蹴る足を止める。


(高いーー。)


 無駄に高い天井を、ギリギリまで男は跳ぶ。


 ライオネルは、跳んだ男を見るため頭を上げた瞬間、首に腕が巻き付いてきた。

 護衛の男かと思ったライオネルは、素早く視線を(めぐ)らす。


 護衛は、いた。首に巻き付いている者ではなかった。


 護衛は、ライオネルを見ると「戦場なら、今貴方(あなた)死にましたよ」と言い、笑った。


 首に腕を回した者が、ライオネルに全体重をかける。ライオネルは踏ん張るが、跳躍していた男がライオネルの両肩鎖骨(りょうかたさこつ)にズンっと着地する。

 

 そのままライオネルの身体を土台に、後ろに飛び退いた。

 ライオネルは、その勢いに後ろによろける。


『ほら、見てないで、貴女(あなた)達も加勢しなさい』


 護衛の言葉に離れて様子を見ていた女性たちは、『加勢ってどこを加勢するのよ』と、反論する。


『空いている両脚があるでしょう、踏ん張っているから蹴りなんて出せませんよ。ほら早く』


 護衛に言われて渋々、両足に一人ずつ抱き着くサライア人の女性たち。


『そういえば、ここ気になってたのよね』

と、いうと脚に抱きついていたサライア人女性は、ライオネルの弱点でもある急所を(ゆる)く掴んできた。


「な⋯っ」

 痛みよりもあまりの不意打ちに力が抜けた。

 その隙をついてライオネルのみぞおちを護衛が蹴りつける。


「ぐ⋯っ」

 ライオネルの呼吸が止まる。


『貴女たち、そこばかり熱心に触ってないで、抱きついている脚ぐらい持ち上げてください』

 護衛の言葉に、


『『持ち上げれるわけないじゃない〜』』

と、女性たちは反論しながらも『よいしょ〜、重~い』と、抱えあげる動作をする。


 そこへ、

『いい加減倒れてくんないかなぁ〜』と、先程の跳躍男(ちょうやくおとこ)が再度跳躍して、ライオネルの鎖骨に足を置くよう着地した。


 そのまま飛び上がると、またライオネルの鎖骨に着地する。瞬間、ライオネルの肩が軋む。


 跳躍男の足首を掴もうとするが、その都度跳躍し、ライオネルに体重をかける。


『こいつの首太すぎ~。体重かけてるのに全然しまらないんだけど』

と、ライオネルの首に腕を回した者が、声を出す。


『まったくしぶといですね。貴女たち、先ほどしたように掴んであげなさい』


 護衛の指示に両足に抱きつくサライア人女性は『いちいちうるさいわねぇ~』と、言いつつライオネルな足の間に手を伸ばす。


「やめ⋯っ」サライア人女性の手つきに、ライオネルの脚の力が抜ける。爪先(つまさき)が踏ん張れない。


 ライオネルの呼吸が乱れた。

 視界が揺れる。


 のしかかるサライア人たちの体重に負け、ライオネルは、後ろへと倒される。


 首に体重を掛けていたサライアの者は男性だった。


 その者が、下敷きになるのを避けて倒れていくライオネルを眺めながらヘラヘラ笑い、


「ノルデリアの兵士もこの程度か~」と、言った。


 倒れたライオネルの両腕をそれぞれサライア人男性が座り、動けないように体重で固定する。


 女性たちは、それぞれ(ひざ)の内側に腰を下ろし、脚を外側へ押さえ込むように座る。


「やっと倒れた~」

『疲れた~』


 倒れたライオネルの脚の間に、護衛が(かが)みこむ。


「昨夜は、起きてしまわれましたからね」

と、言いつつ、ライオネルの襯衣(シャツ)に手をかけると、ビッと、(ぼたん)を弾かせて乱暴に前を開いた。


 衣摺(きぬず)れの音とともに、ライオネルの白い肌があらわになる。

 蹴られた部分が所々赤く変色している。


『やっぱりすごい筋肉!』

『さっきから動いてたから、昨日よりスゴい!』


 ライオネルの筋肉を、歓声を上げながら手で触って確かめるサライア人男性たちに女性たちが

『あんた達ばっか楽しんでるんじゃないわよ!』

『そうよ!筋肉は平等よ!』

と、口々に文句を言う。


 ライオネルは、サライア語が分からずともその異様な光景に違和感を覚え、ライオネルの肌を凝視(ぎょうし)している、ジャリールの護衛に声を掛けた。


「⋯私を、殺すのではないのか?」


 ライオネルの問いに、鼻で笑うと盛り上がるライオネルの胸の筋肉に手をやり、「あぁ、ここもすごい」と言うと、ライオネルに見せつけるように頂きを(ねぶ)りだした。


 その光景にライオネルの肌が粟立(あわだ)つ。


 信じられないものを見るライオネルを、

「オッサンのキョトン顔いただき〜」

「かわい〜」

と、サライアの者たちが護衛とライオネルの様子を眺めながら、口々に(はや)し立てる。


「お前たち、まさか⋯」

ライオネルの問いに、護衛がムクリと起き上がる。

「そのまさか、ですよ」

聞きたくなかった答えを護衛は口にした。


 女性たちから声がかかる。


「ねぇ、あんたたちばかり楽しんでないでさぁ」

「せっかくのモノが、恐怖で縮こまってんだけど」

 男性たちに文句を言いながら、女性同士目配せし合う。


『ねぇ、どれが恥辱的(ちじょくてき)だと思う?』

『やっぱここじゃない?』

と、言いながら、ライオネルの下衣(かい)の縫い合わせを指でなぞる。


『そうよねぇ、じゃあやっちゃう?』

そう言うと、示し合わすかのように、それぞれ布を掴むと『『よーいしょ』』一気に引っ張った。



 部屋中に布の裂ける音が響いた。




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