セアという少年
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結局、救急箱や食べ物、ライターやマッチなど一切見当たらず、北澤も汚れた水をどうにかするにもスコップなど、掘るものもなければバケツのような物もなく手でやろうにも穴の底が深すぎるのと中が濁りきって先に何があるか分からないため、不用意に触ることは止めたらしい。
これからどうすれば良いのだと悩んでいたとき、子供の声がどこかから聞こえ、3人でその方向へと向かうと、玄関らしき所に見知らぬ少年が立っていた。
少年は私たちを見るなり、くりくりとした目を見開き驚いた声を上げた。
「え?! もう皆さん目が覚めていたんですか?」
「どういうこと?っていうか君、誰?」
奏音が尋ねると、少年はそうでした、と言いながら私たちを順に見たあとに首を傾けた。
「可笑しいですね、あともう一人足りません。その人が揃った時点で自己紹介とここが何処なのかなど説明しますね」
もう一人とは、千智のことだろうが私たちは彼がどこにいるのか知らない。
この建物内にいるとは思うが。
「すみません、私たちも彼が何処にいるのか分からないんです」
「はぁ……そうですよね」
北澤の言葉に少年は額を押さえ、私たちに玄関近くの部屋に居るように伝え何処かに行き、千智を引き連れ部屋へ来た。
連れられてきた千智の機嫌が非常に悪いのによくここまで連れてこれたな、と感心しながら少年を見ていると、部屋の中央部に正座し、背筋を伸ばしてこちらを見た。
「では、初めまして、僕の名前はセアと申します。よろしくお願い致します。皆さん何が何だか分からないままこちらの世界に飛ばされたと思うので、まずはここの説明をさせていただきます。
ここは『恋よ、咲き誇れ』と呼ばれるゲームにおいて『バグ』と呼ばれるものを集め、問題を解決させゲームの世界へ戻すための場所です」
「え?バグって?」
奏音が尋ねると、セアは奏音に視線を向け奏音を指差した。
「まずゲームの主人公の貴女。
本来おしとやかで側にいるだけで癒しになる子のはずなのに、何ですかその格好は!」
「え?」
「『え?』じゃありません!何処に乙女ゲームの主人公が胡座かきながら話を聞く主人公が居ますか!それと貴女の言動からおしとやかさは全くありませんし、癒しの欠片も感じられません!貴女のような主人公になりきれていないような存在をバグというのです」
「えぇ…きっと探せば居るでしょ、あたしみたいな主人公」
「居るかもしれませんが、このゲームの主人公としては必要ありません!」
それと次、とセアは壁に寄りかかったまま目を閉じている千智を指差した。
「貴方もです。何ですかツンデレのツンが95%、デレが5%って。誰もそんなツンばかり求めてませんよ!皆ツンからのデレを期待してるのに、いつまで経ってもデレにならなくてプレイヤーが困ってるじゃないですか!どうしたら同じキャラクターなのにこんな個人差が現れるんですか?!あれですか、貴方だけ特別な何かでもあるんですか?!」
ツンデレ?とは何か分からないけれど、とにかく千智の何かが普通ではないということだけは何となく分かったのだが、その認識で良いものかどうか。




