長かった一日
それから北澤の協力も得て、左側の部屋を探して歩いてみたのだが何もなかった。
私たち以外の人物は誰もいなかったし、特定できるものもなかった。
そうこうしているうちにあっという間に夜を迎えてしまったのだが、明かりもなくただただ暗い空間でしかない。
そういえば、マッチやチャッカマンも見当たらなかった。
明日は別棟を探索する予定なので、そこで見つかると良いのだが。
「何も見当たらなかったね…それに誰もいなかったし。あぁ、お腹空いた……」
ぐぅと奏音のお腹から聞こえてきた。
そういえばここについてからご飯を一度も食べていないことに今更気が付いた。
気が付いたのは良いものの冷蔵庫に何もなかったし、どこの部屋にも食べられるようなものは何一つなかった。
水も水道水はあるといえばあるが、濁りきっていて飲んで良いのか戸惑うレベルだ。
「もしよろしければこちらをどうぞ。私の服に入っていたものですが」
そう言って北澤が取り出したのはどこかの和菓子だった。
「わぁあ……良いの?あたしが食べても」
「良いですよ、私は緊張しているからなのかお腹減りませんし」
「ありがとう!あゆかも半分食べる?」
「私も大丈夫ですわ。奏音が食べなさい」
「ありがとう、ではいただきまーす!」
奏音が嬉しそうに食べている姿を見ながら、今後のことを考えることにした。
今日はこれで良いが、もし明日も明後日もこれが続くようであればこんな訳の分からない場所で飢えて死んでしまう。
せめてあの水が飲めるようにまで復旧させるか、食べ物をどこかから調達してこなければ。
「……彼、どこに行ってしまったんでしょうか。あれから全く会っていませんが」
「そうだね……まさか、一人建物の外に出たとか?!」
「そういえばこの家の玄関はどこなのかしら……」
「確かに見てない!」
探すものが多すぎるし、考えていかなければいけないことが多すぎる。
このまま過ごすのであればお風呂もどうにかしなければならないし、トイレもどうにかしなきゃいけない。
部屋も掃除したいし、見ていない所の探索もしたい。
やりたいことがたくさんあるにも関わらず、体は疲れ切っていてその日は座ったまま寝てしまった。




