離せ
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皆が千智をどうしたものかと見ていたら、セアが千智に近付き、頬を思いっきり叩いた。
何事かと思っていると、叩かれた本人も驚いた表情でセアを見ていた。
「貴方、ここのゲートから出ようとしてそのようになりましたね。ダメですよ、ここから出ることは何をどうしようと無理です。今回は説明前に起こしたことなので処置はこちらで行いますが次はありませんからね」
「は?」
次の瞬間、ボロボロだった千智の姿が嘘だったかのように一瞬で最初に出会ったときの傷1つない千智に戻った。
まるで魔法を使ったかのような現象に驚きを隠せずにいると、ついでにと言わんばかりにセアは手を二回叩いた。
「1ヶ月分の必需品を各部屋に置かせていただきました。本日からそちらをご利用ください」
セアは魔法使いか何かなのかとまじまじと見ていると、隣にいた奏音が目を輝かせてセアに接近した。
「スッゴいね、セア!今の何?!」
「近いです。離れてください。 はぁ、それは秘密です。さ、他にも質問したいことなどあるかもしれませんが、ここまでとして次に進みますがよろしいですね?」
問答無用に話を進め、部屋の外へ出ていくセアを皆で追いかけようとして、早速1人取り残されそうとなっている千智へ奏音が近付き、右腕を勢いよく掴んだ。
「さぁ、千智君、あたしたちのためにも協力して貰おうではありませんか!いくらツンが95%でもあたしはその5%をこの1カ月で味わいたいね!超難関だとしてもあたしは諦めないから!乙女ゲーム○○年のゲーマーを甘く見ないでいただきたい!」
何だか張り切っている奏音に千智は鬼の形相で掴まれた腕を見ている。
「離せ、邪魔くさい」
「嫌だね。1ヶ月後にゲームの本来の主人公になるということはあたしという人格はここにいる間しか保てないってことでしょ?それなら、この1ヶ月の間、課題をこなしながら超難関の恋愛を味わってから消えたい!」
「お前の都合なんて知るか。俺は何が何でもこんな世界から出て行く。お前らのことなんて知ったことか」
腕を振り払って部屋の外へ出て、セアが出ていった方向とは反対方向に進もうとするので奏音はその背中に抱きついた。
「ダメ!絶対に行かせないから」
「離せ、俺に触るな」
嫌だ、離せと言い合っていると、ついてこない私たちに気が付いたのかセアが戻ってきて、二人の姿を見て察したのか頭を抱えた。
「はぁ…そう簡単に行かないとは思っていますが、これは難しそうですね。こんな手使いたくありませんが、これも正常に戻すためです。仕方ありません」
セアはそう言うと奏音と千智の手首に手錠のようなものを出現させた。
奏音は右手首、千智は左手首に嵌められ千智の方には外れないように厳重に金属部が奏音の部分に比べ頑丈になっている。
「うはぁ!手錠だ!」
「今すぐ外せ」
喜ぶ奏音に怒りが頂点に達しているであろう千智にセアは眉間の皺に手をおいた。
「外すわけないでしょう。何のために嵌めたと思ってるんですか。こうでもしないといつまで経ってもスタート出来そうにありませんからね。さ、つべこべ言わずに早く来てください。今日中には一通り説明を終えたいのですから」




