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5 桃太郎、鬼を説得する

「だから常に空気を読んで行動しろと言っているだろう!? 何度言わせれば気が済むんだ!」


 桃太郎が開けたふすまの向こう側では、門の前で桃太郎たちを出迎えた鬼が、我が子を大声で叱りつけていました。鬼の怒鳴り声があまりにも大きかったので、桃太郎は思わず両手で耳をふさぎます。


「それに雷の音が怖いと言っているが、お前はそれで鬼として恥ずかしくないのか!?」


 父親の説教はまだ続きます。その様子をふすまの影から見守っていた桃太郎は、


(わかる、俺も雷の音は今でも苦手だから。)


と、心の中でつぶやきながら、一人でうなずきます。

そんな中、


「桃太郎さん、そこの鬼さんの話を聞く限り、あの子供の鬼は桃太郎さんと同じ特性を持っていると思うんだ。僕たちで何か力になってあげられないかな?」


と、お供の犬が桃太郎に話しかけてきます。


「もしかしたら、僕らと桃太郎さんで普段から気を付けていることが、あの子の役に立つかもしれませんよ。ここはひとつ、あそこにいる頭の固い鬼さんに教えてやりましょうよ。」

「そうは言っても、俺なんかで大丈夫かなあ?」

「だからこそ僕たちみたいなお供がいるんじゃないですか。ほら、一緒に行きましょう。」


 桃太郎はキジの提案に少し不安を覚えましたが、サルの励ましを受けて、鬼の親子がいる部屋へと足を踏み入れていきました。




 桃太郎とお供たちは、鬼の子供にはアスペルガー症候群の特性が見られるので、医者のもとへ行って詳しい話を聞いてくるよう父親に勧めました。

そのほか、「空気を読む」などの抽象的な表現が苦手なので具体的な指示を出す、予定をあらかじめ知らせておく、大きな音が苦手なので気を付けるなど、桃太郎たちがアスペルガー症候群の当事者として日頃から配慮している事柄もあわせて鬼の家族に教えました。


「息子がそんな風に困っていたとは知らなかった。見苦しいところを見せてしまって本当に申し訳ない。」

「だけど、色々教えてもらえて感謝しているよ。これで息子ともよりよく関われそうだからね。」

「お兄ちゃん、パパの心を入れかえてくれてありがとう。」


 鬼の家族は桃太郎たちにお礼を言いました。さらに、鬼たちは迷惑をかけたお詫びをしたいと申し出てきました。お詫びの内容は桃太郎や他の鬼とも相談して、鬼たちが昔人里から奪った宝を元の持ち主に返すこととしました。


 こうして、鬼たちに奪われた宝を取り戻した桃太郎は、おじいさんとおばあさん、お供の犬・サル・キジ、そして村の人たちに囲まれて末永く幸せに暮らしましたとさ。


 めでたし、めでたし。


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