2 桃太郎、大きな音にビビる
月日は流れ、いよいよ桃太郎が鬼ヶ島へ出発する日がやってきました。
おじいさんが用意してくれた武具を身に着け、おばあさんが作ってくれたきび団子を持てば、準備は万端です。
「行ってきます。」
桃太郎はおじいさんとおばあさんに挨拶して、鬼ヶ島へと向かっていきました。
桃太郎が川沿いの道をしばらく下っていくと、人々が行き交う宿場町へとたどり着きました。町は小さな子供から老人まで、たくさんの人が道を歩いています。
そんな中で、人混みが苦手な桃太郎は、窮屈そうな表情をしながら辺りを眺めています。
ところで、桃太郎本人は気づいていませんが、このあたりに桃太郎のように戦装束を身に着け、「日本一」と書かれた旗を掲げている人はほかにいません。したがって、皆と異なる服装をしている桃太郎は、知らず知らずのうちに人々の視線を集めてしまっていました。
皆が騒ぎを起こさないようにあえて黙っていたうちはよかったのですが、
「お母ちゃん、あそこに変な格好をした人がいるよ。」
と、小さな子供が桃太郎の背後から指さして叫んだ途端、桃太郎は驚いて後ろを振り向きますが、そこで体勢を崩して尻もちをついてしまいました。桃太郎は、大きな音が苦手だったのです。
さらに、その様子を見た子供が、
「あっ、変な格好の人が転んだ。」
と、再び声を上げると、不測の事態への対処が苦手な桃太郎は慌てた様子で立ち上がり、一目散に宿場町を後にしていきました。