THUNDER〜ペットは牛乳編〜
午前6時
朝日が差し込むと同時に私は目を覚ます。
さあ、今日も1日頑張るか。私の名前はフェル・マーリン。
31歳独身。棘のような髪型にサングラスが似合うごく普通の一般人だ。
朝食を食べに1階へ降りてくると騒がしい声が聞こえてきた。
「牛だって!?」
「今夜は鍋かもなあ」
なんだなんだ?
ロビーには複数の部下達で賑わっていた。
牛がどうかとか言っていたな。
取り敢えず彼らに話を聞いて見よう。
「おはよう、ジェニファー君。これはなんの騒ぎなんだい?」
私は1番近くにいた部下へ声を掛けた。
「あ、隊長じゃないですか。おはようございます。先程警備隊が本部付近で子牛を発見したらしいのですよ」
子牛か、珍しいな。
「ありがとう。私はそれを見に行って見るよ」
「お気をつけて。私は仕事に戻ります」
私は彼に礼を言って外に出た。
そこで警備員と彼らに捕らえられた子牛に出会った。
「隊長!見てくださいよ。こんな立派な子牛がここらで見つかったんですよ!」
彼らは自慢げに捕らえたそれを抱えあげた。
「パーソン君にオックウ君ご苦労さま。それはこれからどうするつもりなんだい?」
「そうですねぇ。育てて食べましょうか?」
向かって左側にいるパーソンが答えた。
うーん育てるのはちょっとなぁ、、、。
「いや、農家に売ろう。資金の足しにもなるしね」
「はい。そうしましょう」
2人は笑顔で承諾した。
「それでは隊長。あとはよろしくお願いします」
「え?」
2人は私の方へ子牛が入った檻を預けてきた。
「買い手の農家が決まるまで隊長が管理してください」
「う、うん。任せな」
まあ、直ぐに決まるだろうからいいよな。
思い出したが、子供の頃からペットを飼うのが夢だったな。
私は子牛をじっと見つめた。
牛乳!こいつの名前は牛乳と名付けよう。いい名前だ。
「隊長!買い手が決まりました!」
「早いよ!今名前付けたばっかなのに!」
くそう。なんか売るのが惜しくなっちゃったじゃないか。
「今から受け取りに来てくれるらしいですよ」
オックウは携帯をポケットにしまった。
「こいつ親が農家をやってて知り合いが多いんですよ」
パーソンはオックウに指を指した。
「隊長どうして子牛を背中に隠したんですか?」
「隊長、顔色が悪いですよ」
2人は首を傾げながらこちらへ迫ってくる。
売りたくねぇ!売りたくねぇよ!
「く、来るんじゃねぇ!こいつは僕のペットにするんや!」
私は1歩だけ後ろに下がった。
「何言ってるんですか隊長。もう契約しちゃったんですよ?」
「すまねぇ!」
今まで生き物の気持ちなんて考えたこともなかった。
だが、こいつのピュアな姿を見ていたら気づいてしまったのだ。命の尊さに。
「隊長が子牛持って逃げだぞ!捕まえろ!」
私の背後から2人の焦ったような声が響き渡った。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
前作の「THUNDER〜おつかい編〜」も合わせて見て頂けると幸いです。