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雨上がりを待つ君とひとつ屋根の下で  作者: 秋日和
第六章 小学校舞台編
37/106

35.そこにいるだけで

 劇の準備が始まってだいぶ時間が経った。


 本番を意識した練習が増え、舞台上でも小道具や背景を取っ替え引っ替えして忙しなく動いている。

 ここまで来ると、高校生にできることは限りなく無いに等しいので時間を持て余すことが多くなる。


 さすがに先生方も高校生をぼーっとさせるのは申し訳ないのか、自由にしてていいよと指示が出た。

 皆さんの目には指示された自由はどのように映りますか?

 僕?僕子供だからわかんないや!

 壁に寄りかかって、ふわーっと欠伸をしていると隣に陽悟(ひご)がやって来た。


「サッカーやろうぜ!」

「………は?」

 悪魔の呪文やめろ。


「先生と話したら校庭使っていいよって言ってくれて。さっき見に行った時使ってる人いなかったし、自由にできるよ!」

「いや、やらないから」

 ……なんか嫌な予感がしてきたぞ。

 陽悟の自信に溢れる顔を見てそんなことを思う。


笠真(りゅうま)って中学の時サッカー部だったんでしょ!」

「……違うよ?な、なんでそう思ったの……?」

 これ多分確信を持って聞いてるな……。

「この前のペットボトル捨てる時やっぱりそうなのかなぁ?って思って」

「あぁ、あれか」

 咄嗟に言っちゃったやつ……。

 でもあれだけじゃ確信は

「他にも色々思った時あるよ?」

「え、まじ?」


「校庭で遊んでる人を見る時、あまりボール見てなかったから」

 前一緒に昼休みにご飯食べた時か。

 やべぇな無意識でそうしてたのかな……。

「いや、お前と昼ご飯一緒に食べたのは一回だけだろ」

「だから偶然かなぁ、とも思ったけどね」

 陽悟は一つ一つ思い出すように手を顎に当て、続きを話す。

「普段の会話の時もサッカーの話は反応いいんだもん!やっぱりそうなのかなって」

「え?そうだったっけ?」

 ……あ……確かにそうだったかもしれない。


 言われたらそうだった気がしなくもない。

 一年生の後半の方はサッカーの話を結構してたっけ。

 聞き流してる時もあったから言われないと気づけないな。


『サッカー好き?』


 将吾(しょうご)くんの言葉が脳をよぎる。

 ……たしかに、兄が俺と仲良くする理由を考えたら、

 この質問をするかもしれない…………。


「最近になってからは、笠真が扶助部を始めて、そのおかげで何も考えずに話せることが増えたけどね」

 ……そうやって話題を陽悟は選んでいたのか。

 ほんとに……なんで俺なんだろう。


「でもそれだけじゃサッカー部だったなんて思えないだろ?」

 実際気分で考えは結構変わる。

 偶然そうだった可能性も捨てられないはずだ。

 よしこれで行こう。

 確証なんてどこにもないからこれで乗り切る。

 陽悟もこれ以上は踏み込めないはず……。

「そういう仮説を立てて、宇佐美(うさみ)さんに聞いてきた!」

 陽悟はあっけらかんと言う。


 ………迂闊だった…………!

 こいつそういえば宇佐美となんだかんだ話すんだよな…。


「というわけで校庭行こう!サッカーしようぜ!」

「俺もう中学で辞めたんだぞ?楽しくないと思うぞ多分」

 こうなったら陽悟の目線になって話を進めるしかない。

「楽しい楽しくないは俺が決めるの!」

 えぇ……それ楽しくない時どんな顔すりゃいいの。

「それに大丈夫!笠真と一緒ならなんだって楽しいよ!」

 ぐぁあ……俺贔屓がすごい!

 こんなの言われたら断れないじゃん……。


 思わずため息が出てしまう。

 それさえも笑顔で見てる陽悟は聖人かなんかなの?

 こいつで宗教作れそうだな。

 その笑顔で世界獲れるぞ多分。


 昼ごはんの時も、打ち上げの時も、

 こういう時の陽悟の押しって強いからなぁ……。


「はぁ……じゃあ行くか」

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