16.秘密はある
そんな毒にも薬にもならないやり取りを終えて、空いている教室を見つけて陽悟と入る。
「おぉ。なんか新鮮だなぁ………!」
「俺はもう慣れた。ここは二番目に多く行く場所だな」
陽悟はへぇ………!と言って周りを見渡している。
いつも通ってる教室とそんな変わんないだろ………。
キョロキョロしている陽悟をほっといて先に窓側の席に座る。
窓から見える校庭では元気な生徒たちが遊んでいる。
こっから見ると高校生に見えないな………。
購買で買ったメロンパンを開ける。
うん。このほんのり甘い匂い、最高。
購買であとはレモンティーを買った。
俺の昼は大体毎日こんな感じ。
「………さっさと座れよ」
未だに座らない陽悟に声をかける。
「………!なんか笠真と昼ご飯食べられるなんて夢みたいで」
こいつの夢しょぼくね?
というか若干悪夢だろ。
椅子を引いて弁当を開ける。
俺の向かいの席に座った。
陽悟の弁当は見た感じ三色丼という感じでいかにも高校生のやつって感じ。
最近の高校生がどんなもの食べてるが知らんが。
100偏見で今言いました。
「それで、なんでいつもそう、俺が関わると嬉しいんだ?あとなんで仲良さそうに接するんだ?」
最後の方はほんとに柊木の依頼を忘れて素で聞いてしまった。
「仲良さそう………か。俺は本当に仲良いと思ってたんだけど。ショックだなぁ」
陽悟は悲しそう、だけどそんなもんは知らん。
「はいはい。そういうのはいいから、早く教えろよ」
「……誰かに頼まれたのか?」
「それは言わない。頼まれたとしても教えない」
そう言うと陽悟は考える仕草をする。
「まぁ、いつか言おうと思ってたことだし、今でもいいか……」
何かを決心したようだ。
「笠真は俺の、目標なんだ」
一瞬全く分からなかった
……というか考え直してもよく分からない。
「………?俺がお前に誇れるところなんて一つも無いと思うが?」
「誇るもの、か、たしかにちょっと違うかもな」
陽悟の言葉は意味ありげだ。
「はぁ………ありがとう?」
とりあえずお礼を言っておいた。
目標にしてくれてるらしいから。
「そうだなぁ、俺は自分らしく生きてる人が好きだよ」
好きって……。
「お前、どこまで分かってる」
「さあ、なんの話かな」
陽悟はとぼけてみせた。
……はぁ。
「あ、話変わるんだけどさ!夏休みに手伝って欲しいことがあるんだよね!」
「断る」
「大丈夫!扶助部として頼むから!」
えぇ………。
この部活はどうやら夏休みも活動期間らしい。
「そこでまた詳しく教えるからさ!」
小売にして出すとか。
お前、店舗販売上手そうだな。
「お前、ずるい奴だな。」
ま、俺には負けるが。
もしかして俺が卑怯だから陽悟は惹かれたのかもしれない。
ないか。ないな。
その場合惹かれるじゃなくて引かれるだな。
それに俺は高校ではかなりうまく振る舞ってるつもりだからな。
これでバレてたら自信が喪失しそうだ。
放課後、部室に来た柊木には、
「自分らしく生きてる人が好きらしいぞ」
と伝えといた。
本来の依頼と結構違う気がするが、それしかわからなかったから勘弁して欲しい。
あと何故か久米はすごくニコニコしてた。
櫛芭は自分の中で何かを納得したらしく、何度も頷いていた。
柊木はそれでも満足気に帰って行って……。
女心っていうのはいつまで経っても分からない……ってとりあえずそんな感じで締めとくか。