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雨上がりを待つ君とひとつ屋根の下で  作者: 秋日和
第三章 日常編1
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15.家族とはいえ

 陽悟(ひご)と一緒に廊下を歩く。

 購買に行きたいから先に教室を見つけて陽悟にそこで待っていてもらおうと思ったが、

「俺も行きたい!」

 と言われて、今に至る。


 強く言われたら拒めないの。

 俺って情けねぇ………。


 歩いている時陽悟は東堂(とうどう)の話をしていた。

寿樹(かずき)も悪いやつじゃないんだ。人の変化にすぐに気づけて、心配してくれる、優しいやつなんだ」

 ……へぇ。

「この高校で、俺に初めてできた友達なんだ!」

 いかに、東堂寿樹が良い奴なのかレクチャーされていたら、

 俺がいつも使っている教室に着いた。


 扉に手をかけようとしたとき、中から人の声がした。

 それもかなりの人数がいるようだ。

 30人くらいいる、隣の教室も同じ。

 ここはもう使ってたか。

 結構お気に入りだったのに………。


 教室を見るのを止めて廊下に視線を戻すと、昨日はなかったポスターのようなものが貼ってあることに気付いた。

 放課後に貼ったのだろうか。

「あぁ、そういえばこの高校、毎年夏休みに課外活動があるんだよ。結構有名らしいぞ?」

 陽悟がポスターを見ながら話す。

 廊下に並んでいるポスターは事後学習のまとめとか、そんな感じか。

 全部で五枚ある。

 今年度も作るとしたら今年で六枚になるのか。


「去年の年度の終わりくらいに研究発表もあったよな。なかなか面白かった」

 陽悟が立ち止まっているので、俺もポスターを見る。

 枚数を重ねていくにつれて書き込んでいる量も増えて内容も立派になっている。

 右上に書かれている課外活動に行った生徒の名前もそれに合わせて増えている。

 順にポスターを見ていって、一枚目に戻る。

「俺らの知らないところで、頑張って、それが結果になってるんだな」

 そう言う陽悟の顔は、どこか誇らしげだ。


 知らないところ、か。

 陽悟は、この高校に入るまでどんな生活をしていたんだろう。

 陰キャだったことは知っている。

 陽悟はそのことを隠していない。

 今の姿を見たら信じられないが、きっと信じられないような努力を重ねたんだろう。

 自分を変えるために色々なことを勉強し、自分を変えるためにここに来たんだろうか。


 陽悟と目があった。

「ん?どうした?」

「いや、なんでもな、ん?」

 目を逸らしたとき、あることに気づいた。

 一枚目のポスターに雨芽成華(うめせいか)の名前があった。

 課外活動に行っていたのか、知らなかった。

 まぁ家族だからって全てを知っているわけじゃないけど。

 というか俺が興味なさすぎて、いないことに気づかなかったのかもしれない。


 小学生の頃か………。

 三日、いや四日かもしれない。

 家を空けていたことがあったな。

 ………あれか。


「なんだよ。何かあったんだろ?教えてくれよ」

 陽悟は食い下がる。

 どっちを話すか迷ったが、

「俺の姉の名前があった」

「お姉さんがいたのか」

「あぁ。姉が一人な」

「へぇ、なんか意外だな」

 意外って………。

「なんなら想定内だったんだよ」

「妹とかいそうだなって思ってた。しっかりしてるし」

「………しっかりしてる?しっかりしてるか?」

「うん!そう見えるよ!」

 こいつのレンズには何が写ってるんだろう。

 どっちみちさっき頭で考えていたことは陽悟に内緒にできたのでしっかりしているというよりちゃっかりしている、みたいな感じがする。

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