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雨上がりを待つ君とひとつ屋根の下で  作者: 秋日和
第二章 体育祭編
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9.気づいたことは

 第一回定期テストの後は体育祭。

 もうそんな時期か、と思うほど時の流れは速い。

 ここ京両高校での学年が変わりっての初めてのイベントのため、盛り上がっている生徒もそれなりに多い。

 チーム分けは紅白ではなく、各学年五クラスあるので縦に分けて五チームできる。

 クラス内でチームが分かれないのでクラスの仲を深めるにはもってこいのイベントだと言えよう。

 かく言う俺も体育祭は嫌いではない。

 重要性の低い競技に参加して、端でのんびりしていたら一日が終わるのだ。

 こんな楽なものはない。

 体育祭はある種の休息である。


 放課後、そんな考えを脳内に巡らせながら部室で暇を潰していると、

雨芽(うめ)!邪魔するぞ!」

 ………菊瀬(きくせ)先生が入ってきた。

 ……はぁ、なんでまたこの人は………はぁ……。


「ノックくらいして下さいよ」

「すまんすまん!次からは気をつけるよ!」

 久米(くめ)櫛芭(くしは)も俺の言葉に合わせて菊瀬先生に目を向ける。

 今日も距離が近いですね二人とも。

 まぁ主に久米が距離を詰めているんだけどね。


「体育祭を手伝ってもらうのも良いなと思ってな!」

 だろうな!そんなことだろうと思ったよ!

「……久米に、それに櫛芭も。どうしてここに?依頼かい?」

 そういえば二人がこの部活に入ったこと、菊瀬先生は知らないんだったな。

 いつも一方的に仕事投げつけてくるだけだからな!

 自分の無知を呪うがいい!

 ……そんな大事な情報じゃないけどね。

「私たち!この部活に入ったんです!」

「えぇ。まぁそうね」

私たち!なんて言うから 結婚したのかと思っちゃったよ。

 え?そんなこと思うの俺だけかな?

「ほう、そうか。とても部員を募集するような奴には見えないがな」

 俺だってこいつらを部活に入れたくなかったですよ。

 はぁあ、この学校の唯一の居場所になり得る場所だったのに………。

「まぁ、色々あったんですよ!」

 そう、色々あった………。

 いや大変だった。

 もうこいつらときたら本当に手がかかる。

 俺より後に入ったのに優秀とかもう泣いちゃう。

 ………じゃあこの場合手がかかるの俺じゃん。

 なんだこいつ無能か?


「それでな、体育祭なんだがな!実はもう君たちの役割は決めてあるんだ!」

 えぇ……それは流石に横暴すぎませんか。

「君たちには材料の買い出しと、当日の得点係をやってもらいたい!」

 俺の不満そうな顔もどこ吹く風、菊瀬先生は言葉を続ける。

「すでに準備は始まっているからな。なんなら今日買ってきてもらってもいいぞ!全然今日で良いんだ!」

 ………ん?

「今日の方がいいって言うか……まぁ今日が良いかなぁって………」

 あっ………これあれだな。

「菊瀬先生、正直に言って下さい」

 気づいてしまった。

「………直前まで、この部の仕事、無かったでしょ」

「くっ」

「え?どういうこと?」

 久米は気付いてないのか………。

 久米の疑問に櫛芭が答える。

「何回も何回も今日が良いって言うのはきっと時間がないから早く行かせたいということでしょう」

 菊瀬先生の顔色がだんだん悪くなっていく。

「準備が予想よりも遅れているから、きっと色々な人に声をかけているんじゃないかしら。手伝ってくれそうな人に」

「それに、入ってくる時すごく焦っていたみたいでしたし」

 ノックもしないで入ってきたことから予想されるのは、何か切羽詰まる状況だったということだ。

 菊瀬先生がマナーを忘れる人だとは思えないし。

「君たちには隠し事はできんな」

 ハハハと笑う。

 こんなこと隠されても困るんですけど………。

 と、心の中で思っとく。


「分かりました。買ってきますよ。どうせ得点係も説得力を持たせるための嘘なんですよね」

「いや………違う」

「え?」

「シフトに不備があってな……流石に今から当日手伝える人を探すのは難しいし………そこも君たちにやってもらいたい」

 えぇ………。

 当日をのんびり過ごすという夢は、今………潰えた………。

 去年の体育祭が懐かしいなぁ!


 ………はぁ。

 まぁこの部活はそういうものだと思ってたけどね。

 まさかここまでだるいとは思いもしなかった……。

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