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雨上がりを待つ君とひとつ屋根の下で  作者: 秋日和
日常編3
105/106

102.何気ない電話も

 久米(くめ)と別れて電車に乗った後、スマホが着信で揺れ始めた。

 マナーモードにしていた事に安心しつつ、乗り換えの駅までやり過ごそうと通話ボタンに指が触れないよう細心の注意を払う。

 画面に表示されている名前は(ゆかり)さんで、一体どうしたと。


「ごめん遅くなって。電車の中だったんだ」

「あ、いえいえ雨芽(うめ)先輩。すみません突然」

 確かに突然の電話だ。

 LINEを見ても縁さんからのメッセージは無く、初手に電話を選んだということになる。

 ホームに降り立って改札口への階段の通り道に邪魔にならないように人の流れを避けてから話を聞く。

「で、突然なんですけど明日か明後日空いてますか?」

 うーん確かに突然。

 誘い方が男子小学生。

 いやでも男子小学生って当日に予定決めたりするか。

 じゃあこれは男子中学生だな。

 何のじゃあだ何の話をしているんだ俺は。

「それ……テストの後だとダメそう?」

 文化祭も終わり三回目の定期テストが控えている。

 徹夜してクタクタなんだとかなんとか、徹夜した事情は勉強ではないんですけど。

 正直かなり疲れた。

 文化祭の日ももちろんショックだったし考えないようにしてたってこともあったけど、自分がこれまで久米が必死に出していたサインを見逃していたってことを再確認したらほんと自分の無能さに泣けてくる。

 精神統一を図りたい。

「テストの前です!これは絶対です!」

 …そうなのか。

 来週に回すとそれこそテストに響きそうだし、じゃあ明日か明後日に解決するしかないか。


 こういう相談事は合唱祭の日を思い出すなぁ。

『それでまたご相談なんですけど』

 まず何をすればいいのか聞いてないけど。

 思えばあの日もなんだかんだで要件は後で伝えられた気が……。

「じゃあまぁ土日どっちかは後で決めるとして、何すればいいんだ?」

「お姉ちゃんに会って欲しいんです!」

 お姉ちゃんお姉ちゃん。

 はいはい櫛芭(くしは)ね。

 ………何で?

「何かあったのか?」

 前兆は、考えてみればそのように受け取れるような行動があった気もするけれど、考え過ぎな気もするし……。

「雨芽先輩ならお姉ちゃんを元気づけたい時、どうしますか?」

 それって縁さんのお姉ちゃんの事であってるか、ここで突然俺の姉の話にならないよな。

 いや、一般論として人の事情も知りたい説も…どっちだ。

「あ、あー私のお姉ちゃんです。雨芽先輩と同じ扶助部にいるお姉ちゃんです」

 あぁそういう。

 元気づけたい、か。

 逆に言うと現在元気がないって事に。

「……そうだなぁ」

 はぁ、分かりました。

 依頼は絶対ですね。

 はいはい………はぁ。

 櫛芭を元気付ける……かー………。


 なかなか難しいお題だ。

 久米相手なら美味しい物でも渡せばホクホク笑顔になりそうな気がするが、相手が櫛芭だとそう上手くいかなさそう。

 会ってくださいとなると尚更、俺と櫛芭にはそう重なってる箇所があるわけじゃないし。

 贈り物だと誕生日とネタ被ってるし、付けている腕時計からして生半可な物じゃ喜んでくれないだろうし、櫛芭父本気出しすぎなんよ〜。

 ていうか、誕生日でもないのに贈り物とかそれってパパ活……この路線はやめよう。


 じゃあ……あ。

「お今、あって聞こえましたよ?何か思いついたんですよね!?」

 縁さんの食いつきがすごい。

「…今から聞くから、明後日までに実現できるか、この言い方で正しいか分からないけれど。まぁ思いついた事ならある」

「じゃあ善は急げですね!すぐに実行しましょう!はい通話切ります!」

「あ、えとそれって」

 ……切られた。


 元気づけるのは俺がやらなくても大丈夫だよな?

 櫛芭が元気じゃない理由も聞いてないんだけど……。

 そんな風に半ばグレーゾーン手を出したかのような悪気も感じながら成華(せいか)に連絡を取るのだった。

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