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6 幼馴染とのLINE

 その日、俺はなんとも言えない気持ちで、駅の地下ホームに降りて、帰りの電車に乗った。

 この海ノ塚での新居は急行で三駅行ったところだ。乗車時間は10分ほどだが、ちょっとした考え事をするにはちょうどよかった。


 俺は観鈴をサポートするという役回りをもらったというか。強制されてしまった。


 だが、当たり前だが、どんなふうに立ち回ればいいかわからないし、だいたい、スクールカーストの最上層に位置する女子の動向なんて知らない。そんな友人はこれまでにもいなかった。


 やっぱり、引っ越しって余計な問題が発生するんだな……。



 ま、まあ……俺が明日からいきなり観鈴の横に立っていればいいって問題じゃないだろうし、むしろ俺が身の程知らずの転入生という扱いになってしまうし、観鈴から反応があるまでは待っていればいいか。




 その日の夜、自分の部屋のベッドで仰向けになって転がっていたら、早くも観鈴からLINEが来た。

 小学校の時のあいつは、そんな積極性はなかったと思うので、行動も少し陽キャ寄りになったらしい。この範囲のことなら成長と言っていいだろう。



 ところで何の話だろう。

 いきなりグループ間でのもめ事の仲裁に入ってくれとかだったら、頭を抱えるぞ……。俺にできることには限りがあるからな……。




『こっちの街のことなら、私が先輩だから何でも聞いてね♪』



 悩み相談ではなくて、ほっとしたが……これはこれで何を聞けばいいんだ?


『今のところ、聞きたいことはない』


 俺は正直に回答した。相手がスクールカーストのトップの女という情報しかなかったら、こんなそっけない返事は怖くてできなかっただろうが、中身はあの観鈴だ。怯える必要もない。



『え~、聞きたいこと、いろいろあるでしょ? この塚南の生徒がどこの店をよく使ってるとか、駅前のこの店は買い食いにちょうどいいとか』


『鹿石高校の場合、駅前に店がなかったから、その発想がなかった』

 なお、観鈴の書いた塚南というのは、ツカナンと読む。海ノ塚南高校の略称で、地元ではみんな塚南と呼んでいる。


 マジで駅から高校までの間にあるのは、昭和中期から何も雰囲気が変わってないと思われる田中酒店しかなかった。なお、お酒だけじゃなく、お菓子もパンも売っていたので、鹿石高校の生徒は適宜利用していた。


『あっ、そうか。ホシバとかソソールとか、そういうの、鹿石にはなかったよね~♪ お店より田んぼのほうが多かったもんね~』



『お前、さりげなくマウンティングとるつもりじゃないか……?』



 どうも悪意があるように感じる。

 観鈴も鹿石高校の近くに住んでいたわけではないが、チェーン店がいくつも並んでるようなところじゃないってわかるだろ。



『ごめんごめん。田舎から来た生徒ってレアだから。しかも、りゅー君だし』

 お前もその田舎出身だろと思ったが、三年以上、こっちに住んでいれば都会人ぶることも許されるだろう。

 というか、観鈴の場合、出身が田舎だったせいで、余計に都会人ぶろうとしているところがあるように思う。



『じゃあ、教えてあげるね。塚南の誰でも使うのが駅前のマック。ミックドーナツは友達三人以上で盛り上がる時に使う感じ。ソソールは二人でゆっくり静かに語らう時に使うかな。中島珈琲はカップルが使う場所って認識ね』



 立て続けに情報が送られてきた!

『おい! そんなのいきなり言われても覚えられるわけないだろ!』



『あ~、鹿石にはそんなにお店なかったよね~』

 俺はベッドから起き上がって隅に腰かけて、返答を送った。



『お前、煽るのが目的なら既読無視するからな! だいたいお前だって同じ出身だろうが!』



『ごめんごめ~ん』

 本当にごめんと思っているのか、はなはだ怪しい返信だ。



『でも、さっき送った情報はマジで覚えてるほうがいいよ。高校を楽しく過ごすには把握してるほうがいい。たとえば、一人でミックドーナツにいたりすると、どっかでネタにされたりするから。寂しくドーナツ食べてるって』



 冗談かガチかわからなかったので、俺は観鈴に質問を送る。

『いくらなんでも神経質すぎないか? 一人でミックドーナツに入ることが犯罪なわけじゃあるまいし、そんなのをチェックしてる奴だっていないだろ』


 この店は高価格帯だから結果的にカップル率が高いだとか、そういう傾向はあってもおかしくないが、この店は一人で使ってはいけないなんて不文律があるとは思えなかった。



『もちろん、犯罪じゃないよ。でも、こっちの高校生はそういうのに敏感だから。おそらく、鹿石高校より、そういうのはずっと強いと思う。ワイルドカードみたいに一切気にしない人もいるけど、りゅー君も気にはしたほうがいいよ』



 長文で返事が来た。なんだか、真面目な顔で観鈴がその文章を入力している姿が思い浮かんだ。



『私でさえ、たまに息苦しいって感じるぐらいだから。これはやりすぎだよなっていうか』

 スクールカーストのトップ層のお前がそれを言うかと思ったが、カーストってそういうものなんだよな。



『ま~、でもりゅー君は慣れてないと思うし、じゃあ、明日、一箇所案内したげるね』


「えっ?」

 俺は思わず、部屋で本当に声を出した。

 想定外のことを書かれたからだ。


『おいおい、そういうの気を付けろって観鈴が書いてきたばかりだろ』



『大丈夫。じゃあ、詳細は明日ね!』


 一方的にLINEは終わりになってしまった……。

 まだ、観鈴のキャラがつかみきれない。厳密に言うと、今の観鈴のキャラだ。

 当たり前だが、中学だとか高校だとかいった時期に離れていたのだから、俺の知っている観鈴と激変している。観鈴じゃなくたって、大きく変わっているだろう。



「とにかく明日を待つしかないか……」

 転入して早々、かなり大きな問題事に巻き込まれそうだ。


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