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End  作者: 平光翠
第六階層 ロックンロールミュージアム
96/200

第96話 魔王攻略

〈???【魔王の私室】〉


「本当か!」

藍色のベットに腰掛ける少女は叫んだ。

時刻は深夜でありさすがの魔王たちも寝ている時間だったが、アバドンの情報収集用のバッタが緊急性を有する報告ということで彼女の寝室へ押し入ったのだ。


実に愉快そうに魔王が笑うと隣で眠るシャドモルスが身じろぎをする。


「おいおい、起きろ。起きろよシャドモルス!おーい」

唐突な声に不満そうな顔をする傍らの影は彼女の命令を聞くと態度が豹変し嬉しそうに笑いだす。


「ああ、楽しみだ。()()()()


はたして、英雄と魔王。

先に六階層を攻略するのはどちらだろうか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

〈六階層・ロックンロールミュージアム〉


「いやー、お前がそんなに攻略に熱心になってくれるとはな」

「ふん、私だってEndプレイヤーのはしくれだ。魔王なんてものをやっていても、この塔の行く末には興味がある。それに新階層ともなればなおさらだ。」


五階層を軽々しく超えていき、クエイフ達とは違う廊下をたどって六階層を突き進む。

その姿はまさしく魔王の行進というべきものだった。


「クエイフ達はハープドラゴンと戦ったんだよな?ほかにどんなモンスターが出ると思う?」

「さあな。Endに詳しいのはお前だけだろ。」


魔王の振りを容赦なく跳ね飛ばし強引に会話を終わらせる。


「ねえねえ、魔王なんか楽しそうじゃない?」

「そうか?いつもこんな顔だろ」


注意深く魔王の顔つきを眺めてみるが、やはりいつも通りで変化がないように思える。

そんな風に鍵盤を踏みつけながら歩いていると、アバドンが突然足を止めた。


「どした?敵か?」

「……。人。似てる。来る。」

「人によく似てるが魔力の感じは()()()()のナニカが来る?つまりなんだ?」


アバドンの特殊な話し方を翻訳し、それを魔王に告げて答えを求めるも、彼女でさえ疑問符を浮かべる。


「ねえねえ、足音、聞こえるわよね?それも二人。」


アスモデウスの言う通り、足音は二人分。男女のペア。

そしてどちらも、異形の魔力。人間ではないことは確かだ。


「階層イベント?ここで?ボスもクリアしていないぞ。クエイフ達は出会っているのか?ヒヒッ!!面白くなってきたな。」


「足音は止まったわ。おそらく向こうも気づいてる。その扉の先。行くの?ねえねえ」


怪しくわざとらしく誘導するかのように佇む木製の扉は、その向こう側の違和感をひしひしと伝えてくる。言うまでもなく罠だ。


「だが、ここで引き返すようではEndプレイヤーとして傷がつく。」


普段からリスクを恐れて勇者と向き合うことを避けているように見せているこの女。

本心で言えば、『その方が面白い結末(End)を迎えるから』という理由で、思わせぶりなちょっかいをかけてはすたこらと逃げている。


それに気づいているからこそ、影は魔王のやり方が気に食わない。


「珍しいな。普段のお前なら、『ヒヒッ!ここはクエイフ達を使った方が勇者らしくて格好がつくね。引き返そう』とでもいうかと思ったが。」

「私の真似か?ヒヒッ!似てないね。もちろんそれも考えたが……。たまにはこういうのも悪くないだろう?」


振り返りざまにいつもより美しい凄惨な笑み影に向ける。

それにつられるように、三人も同じくらい陰惨な笑顔で返した。


「じゃ、開けるよ」


ドアノブをひねり、勢いよく部屋の中にそれぞれの武器を向ける。

中にいたのは、アザピースと、見たこともない女。


年齢は30を少し超えた程度だろうか、どこか母親じみたどこにでもいるような顔立ちではあるが、悪魔二体に邪神と魔王の目は誤魔化せない。


「なんだ、お前!!その顔、造りものか?」

「あら、初めまして、なのかしら。」

「ほう私の研究室を荒らして回った不届き者どもか。なぜここに?」


影の問いかけを無視して二人は魔王たちを見つめる。

価値を見定めるような冷たい視線。その眼の動きから察するに女の方も科学者らしかった。


「はじめまして、私はショフィーク。そういえばわかるかしら、奈落の王様?」


魔王の背後に立つアバドンに対してウィンクをする。

驚いて影が振り返るよりも先に、アバドンはショフィークと名乗る女のもとへ駆け出していた。


そのまま頭をつかむと地面に向けて叩きつける。


「ゴホッ!!お前!なぜ!!」

なぜか攻撃を加えた側であるアバドンが血を吐き出しながら、女の頭を押さえつけながら叫ぶ。


「本物かどうかなんてどうでもいい!!なぜその名を知っている。その名前を騙れる!!なぜ!なぜ!」

叫びながらぐりぐりと地面に押し付ける。


彼の手の下で、その顔は笑っていた。


「大丈夫なの?君はそんな風に話すと現世の空気を吸ってしまって死に近づいてしまうでしょう?奈落の王にとって、現世にいる状態は体に負荷がかかる。それを和らげるために少しでも空気の吸入量を減らして、おかしなしゃべり方を続けてきたにもかかわらず。それをこんな形で壊してしまっていいのかしら?」


挑発するようにショフィークは呟いた。あまりにもあっけなく奈落の王の秘密を暴き、ここまでされながらも動じることなく笑っている。


「遊ぶのもたいがいにしておけショフィーク。すぐにでも完成させるのだろう?六階層のボスを。」

「ええ、そうね。でも、もう少しだけ遊びたいわ。数百年ぶりの現世だもの。あの子にも会いたいわ。私たちの子供にも。」

「やめておけ。妄言もたいがいにした方がいい。なによりこいつらは魔王だ。遊びで済むものじゃ……。聞いてないな。ショフィークも、お前たちも。」


「【影剣シャドモルス】質問に答えてもらうぞ。アザピース!!」

「威勢がいいねぇ魔王様。」


首筋に刃を向けられながらも臆さずに科学者は笑う。

「答えろ、あの女はなんだ?アバドンとなんの因縁がある?」

「因縁というほどでもないさ。」


「魔王様。俺が自分で答えます。」


女の体を投げ飛ばし壁際に叩きつけると魔王の腕を下ろさせる。


「ショフィークは、世界最初の不老不死を実現した女です。それだけに飽き足らず、世界中のほぼすべてのモンスターはコイツのために生まれてきている。魔石そのもの。生物の枠組みから完全に外れた異常者。魔女の遠因。あのイカれた教祖が信じる神こそが、この女だ。神を含めて全生物の中で最も早く不老不死を達成し、人類種の中で唯一神へと登った最悪の女。数十代前の奈落の王がその命と引き換えにやっと地獄へと落とし幽閉していた。そのはずだったのに。」


「あらあら、そんなこともあったわね。神になった時点で他の神からのやっかみを受けて世界から名前を消されてしまったけれども、おかげさまで自由に動き回れる時もあったわ。」


まるで人ごとのように、大したことがないといわんばかりの表情の女に対して、影と魔王は聞く耳を持たぬまま

「なるほどな。つまりはアバドン、お前の敵ってわけか?」

「ヒヒッ!なら殺さない理由はないな。」

とだけ言うと、首元にあてた黒い剣を通り抜けさせる。

そして、何のためらいもなく、何の抵抗もなく、ショフィークの首が飛んでいった。

首が取れるおもちゃのように。軽く。あっけなく。あっさりと。不老不死は。


死んだ。


「こわいわ。死なないだけでいたいのよ。でも、首をはねられるのも久しぶりで気持ちいいわ。」

「ふん、相変わらずのいかれた体だ。気色悪い」


そんなわけがなかった。


……To be continued


少し短いですが、どうしても最後のような書き方をしたかったので……。

それと、新シリーズを書きたいなと思いまして構想を練っている最中です。

ラブコメ強めの方とギャグ&アドベンチャー強めの方の二作品を考えています。

Endの感想コーナーで構いませんのでどっちのほうが興味があるか教えてください。


次回更新日はTwitterのほうで告知していますのでそちらもよろしくお願いします。

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