第90話 魔王幹部 アスモデウス
すみません。今回短めです。
やっぱり毎日投稿は厳しいものがありますね。
クエイフ達の邪魔立てをしに来た二人組は、言うまでもなくアバドンとアスモデウスであった。
不満そうな顔の二人を、魔法や武器で弾き飛ばしてクエイフの道を強引に作り出す。
「ねぇねぇ、アレ、本物のレイちゃんじゃない?カワイー!」
「イ…ヴ…」
欠片ほどの遠慮もない攻撃にも余裕をもって受け止め、さらに、自分たちの相手を感激した様子で眺めている。
「アバドン…と、だれ?」
突如、奈落の王アバドンとともに現れた妖艶な女は、イヴよりも豊満な胸を惜しげも無く晒しながら軽く微笑みを浮かべて、レイに向けて手を振っている。
「初めまして~。魔王直属兵士アスモデウスです」
レイに向けての投げキッス。
それを見て目の色を変えたイヴが、見えないハートを苛立ちを隠さずに杖で叩き落す。
アスモデウスの端正な顔が一瞬ゆがみ、短く舌打ちをするがすぐにニコニコとした笑みを作り直す。
その笑みをふさぐように小さな体の前に立って杖を構える。
「あなたは危険です。妹に近づかないでください。」
「ねぇねぇ、じゃあ貴女のことはお義姉ちゃんってよべばいい?」
彼女の宣戦布告を嘲笑うかのような雑な挑発。
お互いに睨みつけて、魔力をぶつけ合い、それぞれが凝縮されて『魔法』へと変換されていく。
周囲にいるすべてを焼き焦がすかのように生み出された火炎が差し向けられるも、アスモデウスの綺麗な鼻先の前で炎が凍る。
「ん~。とっても情熱的な魔法をありがと。でもごめんね、タイプじゃないの。」
赤く淫靡な舌をチラリと覗かせながら、細い指先で凍てつく炎の先端をいやらしくなでる。
氷の中で音だけが反響しながら魔法が突き進んでいくが、対するイヴは涼しい顔をしたまま動かない。
「私も、あなたのようなオバサンは願い下げです。」
「クソガキッ…!」
ふっくらとした胸を貫くように飛び出した氷は、内側から溶けていく。
先ほどよりも大きな舌打ち。
「情欲よ、どこまでも飛んでいけ【欲望の翼】」
魔力を制限することで、身体能力を人間レベルまで落としている彼女は、あえてその一部を解放することで、悪魔のような翼をはためかせて空へと向かう。
それを追いかけるようにイヴの背中からも、半透明の翼が浮かび上がり空中を舞うと、両足が呪いの痣にむしばまれた。
「若いのに重力魔法なんて使えるの?ねぇねぇ」
「いいえ、風です!!」
一気に距離を縮めると、焦ったような口調で「どんな魔力量してるのよ」と呟く。
本来飛行魔法は重力制御の延長上にある。
しかし、イヴはまだ重力を扱うだけの魔法知識がない。そのため、高高度の飛行は風の魔法を強引に操作することで、維持しているのだ。
当然、足が真っ黒になるほどの呪いを受けながらではあるが。
しかし、そうまでして追い詰めてはみたものの、ここからは全く手詰まりであった。
もとより、魔法の変換は同時には行えない、呪いと祝福に頼ってやっと完成させる代物であるが、こうして飛行能力に使っている以上、その先は望むに望めない。
最も、当初の予定が狂ったアスモデウスの方もピンチに変わりはなかった。
この場において空を制することができるのは自分一人だと高を括っていた彼女は、必要最低限の魔力の解放しかしていない。
しばし、空中でのにらみ合い。かと思えば、アスモデウスが急降下し始める。
「ねぇねぇアバドン、代わって!!」
レイ目掛けて一直線に突進するが、それをこの姉は許さない。
「言ったはずだアバズレ、私の妹に手を出すな……。」
恐ろしく低いうなり声。
普段の彼女からは想像もつかない重苦しい声は、悪魔でさえおびえさせる。
「魔力を隠してたの?ねぇねぇ、ひどい人ね。」
「あなたこそ、せっかく見つめ合ってたのに、他の人を襲うなんてひどいと思いませんか?」
イヴの体内が熱く燃え上がるように過剰生成された魔力が、かすかに空気を揺らす。
殆どの悪魔が怯えて声も出せなくなるような膨大な圧力でさえ、まるで通じないかのように蹴散らしていく。
完全に地に足つけた二人は、複数の魔法をぶつけ合ってはお互いのすべてをつぶし合う。
自身に速度上昇の魔法をかけて、杖から魔力を伸ばすと、アスモデウスの目に向けて突き出した。
「魔力の塊…?なるほど、そんな使い方もあるのね~」
甘い声の中に微かに感心と殺意を籠めながら、対するように魔力を固める。
そうして作り出したのは、先端が鋭く尖った片刃の戦闘斧だった。
武器の中でも軽く取り回しがいい反面、一撃の重さに難がある細剣。
それに対して、その重量のために決定的な一撃を叩き込める分、扱いが難しく、少なくとも女が扱う武器ではない戦闘斧。
だが、彼女たちは魔法使い。
どちらが優れているか、どちらの武器の扱いがうまいかではなく、より純度の高い魔力を、長く維持できた方の勝ちなのだ。
風を切るように剣を突き出せば、それらを薙ぎ払うように斧が振るわれる。
隙をとらえて斧を構えれば、逆に利用されて剣が切迫する。
「軽い!ねぇねぇ貴女のその武器、軽いわね!」
「貴女のそれはずいぶんと遅いですね、あくびが出そうです。」
魔力同士がぶつかり合い、二人の間に若干の隙間ができる。
瞬間に両者の手から魔法がほぼ同時に放たれ、爆煙。
一手早かったのはイヴだった。
「ッッ!!!」
渾身の無詠唱魔法。
しかし、当たらない。
「まだまだ甘いわね~。こういう時に決められない。」
悪魔のようでありながら蠱惑的な笑み。
そして、彼女のスラっとした手のひらが、イヴの腹へと押し付けられる。
「【―――――――】」
ゆっくりと耳元で魔法を囁いた。
……To be continued
本来は、レイVSアバドンも一緒に書くつもりだったんですけど、それは明日になりますね。
どうぞお楽しみに。
それと、少しアンケートなのですが最初のころにやってた次回予告、あった方がいいですかね?
もし、やってほしいなという方がいれば、感想やTwitterの方で教えてください。




